第23話 ヌードデバラット 3

 太っちょヌードデバラットのステータスは、ハングリースパイダーの親玉と同じぐらいだ。子供ハングリースパイダーじゃ相手にならない。


 だが、ハングリースパイダーの巣は張り巡らされていて身動きが取れないほどに広がっている。


 ヌードデバラットが作り出した巣穴の螺旋状になっている地面を使って丸くなった太っちょヌードデバラットが加速して一気にハングリースパイダーの巣を突き破った。


「ピヨ!」


 太っちょヌードデバラットの強さは俺たちと変わらない。

 つまりは、同じぐらいの強さを持ちながら勢いをつけて、攻撃力だけで押し切ったことになる。

 体には蜘蛛の糸を巻きつけているが、その勢いのままに親ハングリースパイダーに突撃を仕掛けた。


「キシャ!!!」


 そんな太っちょヌードデバラットの突進に、親ハングリースパイダーは何重にも張り巡らせた蜘蛛の巣を作り出して防御の姿勢をとった。


 軍配が上がったのは、親ハングリースパイダーだ。


 弾力性のある蜘蛛の糸によって、ネバネバするだけでなく、糸が切れない用に作り直していた。


「ピヨ!」


 だが、動けなくなった太っちょヌードデバラットを、親ハングリースパイダーにくれてやるには惜しい。


 経験値は俺がもらう!


 俺は風の弾丸を作り出して、身動きが取れない太っちょヌードデバラットの魔石を撃ち抜いた。


 ギラリと親ハングリースパイダーが睨んできたが、そんなこと知るか! 


 太っちょヌードデバラットの肉を食うだけでも経験値になるんだ。

 お前はそれでも食っていろ。


「ニャオ!」


 悪い顔をしているなと、シルにため息を吐かれた。

 ここは弱肉強食の世界なんだ。

 賢く生きていかなければならない。


 親ハングリースパイダーは興味を失ったように子供達に餌として太っちょヌードデバラットを与えた。


 何体かレベルアップをした様子で、進化を始めていく。

 俺やシルのように時間はかかっていない。


 体だけが大きくなって、親ハングリスパイダーの半分ぐらいになった。


 数体の進化したハングリースパイダーが巣にかかっているヌードデバラットに襲う。


 一気に形成が蜘蛛へと傾き始める。


『ネズミの次は蜘蛛を狙うピ』

『わかったニャ』


 俺はシルへ合図を送って魔法攻撃を開始する。


 もしも反撃された時のことを考えて、魔力切れにならない程度に魔法を放っては離脱する。ヒットアンドアウェイを繰り返してレベル上げを続けていた。


『大分レベルが上がったニャ! もうすぐで進化出来そうニャ』

『俺もピ! 元々地龍のおかげでレベルは一気に上がっていたピ』


 だから後一押しが欲しい。


 ヌードデバラットは、太っちょヌードデバラット以上の進化魔物を出さなければ、ハングリースパイダーの勝ちだ。


「ピヨ?」


 ふと、空気が変わる。

 

 顔に大きな傷のある大きなヌードデバラットが蜘蛛の巣を切り裂いて現れた。


「ピヨ?!」


 明らかに違う。


 異質の強さを感じて、全身の羽毛が逆立つ!!!


『逃げるピ!!!』


 ここにいちゃいけない! 全速全力で逃げる。


 あれは、地龍クラスの化け物だ。


「ニャオ!」


 体が一気に軽くなる。シルが重力魔法で俺の体を軽くしてくれた。

 シルの体を背中に乗せて、全速で走り出しながら後を振り返る。


 親ハングリースパイダーが、一瞬にして切り刻まれて倒されてしまう。


 進化してレベルが変わるだけで、あれだけ変わるのだろうか? 

 いや、あれは何か違う異質の雰囲気を持つ奴だ。


 そう、まるで俺と同じ王者の風格を感じさせる。


「チュー」


 不意に声が聞こえてきて、横に巨大なヌードデバラットが並んでいた。


「ピーーーーーーーーー!!!《王者の咆哮》」


 咄嗟に鳴き声をあげて威嚇をする。


 俺の鳴き声に驚いた様子で目を見開いた瞬間に、シルが重力魔法で地面へと縛り付けた。それでも動こうとするので、全力の水魔法で濁流のような滝を作り出す。


 動けないようにする。


 倒そうとなんて考えるな!


 今、逃げなければ殺される。


「ジューーーーーーーーーーーーーー!!!」


 奴の叫び声が聞こえてきて、大量のヌードデバラットが森を薙ぎ倒す勢いで、俺たちを追いかけ始める。


 足はネズミの方が早い。


 だけど、シルの重力魔法のお陰で無重力に駆け回れるというアドバンテージがある。


 だから逃げられる!!!


 色々な森の魔物たちを巻き込んで、俺たちは木々を飛び移り蟻塚に奴らを誘導して、蟻とネズミの戦争を始めさせる。


 こちらに気づいたヌードデバラットは全て倒して、俺たちは自分たちの巣へと戻ってきた。


 下では、ネズミが俺たちの捜索をしている姿が見える。


『進化をするピ!』

『危ないニャ! 今、見つかったらあいつに進化中に殺されるニャ!』

『今のままならどっちにしても殺されてしまうピ!』

『……わかったニャ。入り口は塞ぐニャ!』


 重力魔法を使って、俺たちの巣は二度使えないように完全に扉が閉じられる。

 次に外に出る時は、巣を壊さないと出ることができない。


 これは俺たちの覚悟だ。


《進化を開始しますか?》


 ああ、詳細を出してくれ!

 

 《神の声》さんに俺は進化を選択した。


 逃げている間に、進化できるレベルに達した。

 あとはアイツを倒せる力を手に入れるだけだ。


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あとがき


どうも作者のイコです。


《宣伝》


《あくまで怠惰な悪役貴族》の第二巻が12月20日に発売します。

作者のデビュー作ですので、もしも読んでもいいよという方は可愛らしい表紙が目印です。


TOブックス、Amazon、楽天ブックスなど各種ネット販売もしております。

年末年始のお時間ある時にお手に取っていただけると嬉しいです。


あらすじ。


エロゲーの世界に転生した主人公は、悪役貴族(♂)であるリュークに転生してしまう。断罪される未来を回避するためにあくまで怠惰にハーレム無双する。


webで読むにくいと判断された方も読むやすいようにリューク視点で話が進みますので、読みやすくなっております

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