第37話 サモナー

 俺たちはコボルトダンジョンを中心に活動していたが、一階層のコボルトは自分たちでも攻略は難しかった。


 まだ魔法を使うことに慣れていないアシェたちと挑むには初心者ダンジョンに戻った方が良いのではないかと話し合いをしたくなるほどだ。


「ニャオ」

「ピヨピヨ」


 俺たちは声を掛け合って、コボルトの動きを予想する。

 コボルトは匂いでこちらの動きを判断してくるようだ。

 数体の群れで常に行動しており、武器を持ち襲ってくる。


 最低三体。多い時には20体以上が同時に現れる。


「ピリカ!」

「シルちゃん!」


 五体のコボルトが登場して俺が囲まれたところにシルがやってきて、重力魔法で体を軽くして、一気に跳び上がる。


 俺たちを追いかけて、視線を上に向けたコボルトたちにアシェが風魔法を放ってコボルトたちにダメージを与える。


 だが、威力が足りていないために倒すに至っていない。


 それをシルが空中から斬撃で蹴散らしていく。


「うーん、魔法はまだまだ難しいよー」

「仕方ありませんわ。私たちはまだまだ始めたばかり。それに、ここは中級です。初級魔法で簡単に倒せるほど甘くはありません。ですが、ピリカちゃんやシルちゃんの経験値のためにもここで頑張ることが大切です」

「うん。わかったよ」


 俺たちのことを考えて一階層を攻略しているが、なかなかに進行具合はよろしくない。


 そんな日々を続けていると、学園側でもイベントが開催されることが決まったとアシェが言いにきた。


「ピリカ、お祭りだよ」

「ピヨ?」

「昨年は入学前だったから知らなかったけど、サモナー召喚獣大会っていうのを毎年開催しているんだって、参加資格は一年のカリキュラムを終えた子達で、一応魔物のランク分けがされているみたい」


 サモナー召喚獣大会は、召喚した魔物たちを戦わせて、サモナーバトルという名称で毎年行われているそうだ。


 新年のお休み明けから、入学式までの間で予選をして、勝ち上がった者たちで決勝大会をする。


 一応、レベルや魔物の危険度にはランク付けがされているからそれに応じた組み分けがなされているそうだ。


「ピヨピヨ」

「うん。私出てみたい! ピリカ、協力してくれる?」

「ピヨ!」

「ありがとう。ふふふ、やっぱりピリカのモフモフは最高だよ」


 俺に抱きついてモフモフを堪能しているアシェと共にサモナーバトルにエントリーをすることにした。


「アシェちゃん」

「オリヴィアちゃん! オリヴィアちゃんも参加するの?」

「いえ、今年は見送ろうと思っています。私はまだまだシルちゃんの魔法を使えていません。アシェちゃんは、風の魔法を上手く使っておられますが、重力や光といったシルちゃんの魔法は私には難しくて」


 魔法は相性がある。

 アシェも、闇と水に関してはあまり使えていない。

 代わりに風の魔法は少しずつだが上手く使えるようになってきた。


「そっか、一緒に出て欲しかったけど。私、頑張るね」

「ええ、応援しております」

「ニャオ」

「ありがとう。二人とも」


 大会では、サモナーと召喚獣が協力して戦うことが許されている。

 

 バトルフィールド内に入るのは召喚獣だけだが、サモナーも魔法を援護として使うことができるようになっていた。


 俺は、魔法以外にも色々なスキルを持っているので、それを駆使して戦えばいいところまで勝ち上がれるのではないだろうか? 予選大会は二ヶ月ほどあるので、同時にダンジョンの攻略も進めることでレベル上げて、進化ができればより勝利が近づく。


「ダンジョンでのサポートは任せてくださいませ」

「ありがとう。オリヴィアちゃん。私頑張って決勝大会に出るね」

「はは、おいおい、初級ダンジョンを攻略したぐらいでいい気になっているんじゃないだろうな?」


 そういって声をかけてきたのはサーベルサーペントを連れた少年だった。


「何? 私が決勝大会に出るのがおかしい?」

「ああ、おかしいね。君の実力は所詮、風の魔法が使える程度だ。遅いゴーレムは倒せても、サモナーが指示を出す召喚獣を相手にするには、そのヒヨコでは相手にならないだろう」

「あなただって、この間初級ダンジョンを攻略しだだけじゃない」

「チッチッチ、君と僕とでは格が違うんだよ。僕のサーベルサーペントは一体でゴブリンダンジョンを攻略してみせた。最終ボスは、ゴブリンファイターというデカいゴブリンだったけど、鋭い牙で噛みついて終わりさ」


 初級ダンジョンで、中級魔物で攻略しても自慢にならないと思うが、まぁそのおかげで奴はこれ以上進化できない。


 今が限界であることがどうして理解できないんだろう。


「凄いじゃん。だけど、それと私が決勝大会に行けないのは別じゃない?」

「僕や君以外にも、三十名ほどは初級ダンジョンを攻略して中級に入った者たちが出始めた。一番早かったからっていい気になるなよ」


 サモナーとしての実力を開花させつつある者たちが出始めているようだ。

 それは悪いことではないが、他者を傷つけなければいいが。


「いい気にはならない。だけど、あんたは私とピリカが倒すから」

「やれるものならやってみろよ。あーはっはっはっ」


 立ち去っていく少年に俺はヤレヤレとため息を吐きたくなる。


「絶対負けない」


 アシェは負けず嫌いだからな。

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