第82話
《side KFC団》
臨時集会が開かれたのは、我々の商売が軌道に乗り出して、三店舗目の打ち合わせをしている際の呼び出しだった。
最近はチキンを確保するために、地方コック集団を雇ってチキン確保を最優先している。もうすぐチキンを養殖する牧場も出来上がる予定だ。
二メートル近くある鶏たちを、管理するためには巨大な牧場が必要になるのだ。
「今回はなんの呼び出しなんだ?」
「秘密のコックK、お前にしては珍しいな。知らないのか?」
「うん? 秘密コックCは知っているのか?」
「もちろんだ。どうやら未確認の魔黒鳥が発見されたそうだ」
「なっ! そんなことがあり得るのか? あれは1000年に一度、舞い降りるかどうかの幻の逸品だぞ! ダークなヒヨコなど目じゃない!」
「ああ、だが、それが舞い降りたんだよ。しかもダークなヒヨコの進化系じゃないかって噂があるくらいだ」
「はっ?」
秘密コックCの言葉に我が耳を疑ってしまう。
ダークなヒヨコも至高の一品だった。
だが、我々は度重なる失敗を続けたことで、ダークなヒヨコを諦める決意をした。
しかし、魔黒鳥に進化をしたと言うなら、話は別だ。
別格な存在として、誰もが喉から手が出るほどに欲するだろう。
「皆の者よ、よく集まってくれた。各地で発見されるレア食材や幻の逸品など。数多くの食材を入手して、調理してきてた我々だ。此度は、その一つである幻の召喚獣が発見されたことは、皆の知るところであろう」
やはり、魔黒鳥の存在がこの集会の意味ということか。
「だが、これは始まりに過ぎない」
「えっ?」
「皆には伝えていなかったが、幻の食材は一つ現れる時、八つの食材が同時期に現れると言われている」
「八つ?」
伝承にも聞いたことがない話に怪訝な顔をしてしまう。
「これは、我々秘密コック集団KFCの幹部しか知らされていない事実である。四聖獣に近しい存在として、八つの獣たちが次々と現れるというのだ。どのような魔物なのかは不明である。だが、此度現れた魔黒鳥は、そんな八つの幻の食材として最も相応しい存在ではないかと我々は考えている」
幹部たちしか知らない食材。
興奮を覚えたのは、俺だけではないだろう。
秘密コックFも、秘密コックCも体を震わせて興奮しているのが伝わってくる。
それは俺たちだけじゃない。
この場に集まっているコックならば、皆が同じ考え持つだろう。
そんな幻の食材を調理してみたい!
「すでにわかっていると思うが、幹部の席は八つ。そして、幻の食材も八つ。貴殿らに問う。貴殿らは何者ぞ? 秘密コック集団ならば幻の食材を調理しないでなんとするものぞ?」
誰かが足踏みをした。
それは次第に大勢の足踏みになって、会場中を震動させる。
「良き良き、行くがいい。貴殿らの未来に幸あれ。そして、新たな幹部の誕生を心待ちにしておるぞ」
集会を終えた我々は店に戻ってある計画を練り始めることになる。
「おい、わかっているだろ?」
「ああ、もちろんだ」
「すでに下準備は終えたということだろう」
「ああ」
我々は自らの身を軽くする必要がある。
すでにレシピは作り上げた。
秘伝のタレも大量に発注ができる秘密工場も作った。
あとは、各店舗で下働きのバイトや店長を雇い入れるだけで、全てが完成する。
「我々はすべての店舗をフランチャイズ展開させる。その上で、フランチャイズ加盟店からの収入と、秘伝のタレとチキンの提供量で収益を出して、ダークなヒヨコならぬ。魔黒鳥奪取の手筈を整える」
「くくく、燃えてきたぞ! やっぱり俺たちは秘密コックとして新たなことに挑戦しているときが一番楽しいんだ」
「そうだな。今までは確かに成功を勝ち取る道標だった。店は軌道にのり、コックランキンがも上位に食い込むレベルになった。だが、俺たちの心はまだまだ満たされていないんだ」
俺たちは互いの前で手を出し合って重ね合わせる。
「決行は、二年次に行われるという野外学習だ。一年次は学園の厳重な警備のせいで阻まれてしまった。だが、今度は野外に出て警備も手薄になる。我々の召喚獣強化は必要になるが、チャンスだと俺は思っているんだ」
「ああ、わかっている期間は三ヶ月。フランチャイズ契約をマネージメントしてくれる人材の確保もできているからな。それぞれが修行に入るとしよう」
「今度会うときは、進化させた魔物で、魔黒鳥確保だな」
互いの意気込みを語り合って、我々は天に向かって腕を突き上げる。
「我らKFC団! 幻の食材をゲットして、最高の調理をするものなり」
「「ものなり!!!」」
互いに背中を向けって、我々は修行モードに入ることにした。
今度こそはゲットしてやるぞダークなヒヨコ。
いや、魔黒鳥待っていろよ。
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