第83話 チームになろう
《sideアシェ》
「皆さん、麗らかな春の日差しが差し込む暖かな陽気が訪れる季節がやってまいりました。サモナー学園では一年間の勉強に励んだ皆さんならば、グループを組めば遠足に連れ出しても問題ないと考えております」
一年生の間は外の魔物が危険だという理由で、絶対に学園の外には出してもらえなかった。それでも、魔物を狙う危ない人たちはいるので安心はできないけど。
この世界は、魔物の存在が優先されていると言ってもいい。
召喚獣となってくれる魔物に悪いことをしていると絶対に良いことは起きない。
「チーム人数は三人以上八人未満でチームを組んでください」
先生の言葉で席を立って仲の良い者同士で集まり始める。
「アシェちゃん。ワタクシと一緒のチームになってくださいますか?」
「うん、もちろんだよ。オリヴィアちゃん」
「ふふ、嬉しいですわ」
オリヴィアちゃんとは入学当初からの友達だから、気心も知れていてやっぱり一緒にいて楽しい。
「私も一緒のチームになってもいいかしら?」
「ユズちゃん! うん、もちろんだよ」
「私も私も」
「コロンちゃん。うん、いいよ」
一年次のルーキー戦で戦った四人でパーティーを組むことが出来て嬉しい気持ちになってくる。
ユズちゃんの召喚獣は、カエルの魔物でフロッピーちゃん。
コロンちゃんの召喚獣は、狼の魔物でソリー君。
二体共とっても強くて頼りになる仲間たちだ。
「みんなよろしくね」
「はい! 四人いればチームとして認めてもらえますわね」
「うん。いいんじゃないかな?」
「そうね。頑張りましょう」
オリヴィアちゃんの言葉で、私たちは四人チームで野外学習を受けることにした。
ふと、教室の端でイヤーミ君が一人でいるのが見えた。
魔物としての進化が望めない彼のサーベルサーペントを知ってしまったみんなが敬遠しているのがわかってしまう。
私が声をかけようか悩んでいると、バッシュ君がイヤーミ君に近づいていく。
「よう、お前一人か?」
「えっ? 僕?」
「ああ、俺とこいつの二人なんだ。一緒に組まないか?」
バッシュ君の後ろには、イヤーミ君とは別の意味で目立つヒューイ君の姿があった。
バッシュ君は世話好きの良い子だと思う。
声をかけるのが躊躇われる二人に声をかけて、チームを組んであげていた。
「よかったですわね」
私が見ていたことに気づいたオリヴィアちゃんがコッソリと声をかけてくれる。
「うん!」
「さぁ、心配事もなくなりましたから、ワタクシたちのリーダーを決めないといけませんわね」
「えっ? リーダー?」
「はい。チームにはそれをまとめ、誘導する存在が必要です。ワタクシはサポートが得意なので、リーダーというタイプではありません」
「私も無理ね。発言が得意じゃないの」
「ふふん! やっぱりここは強さで有名になったアシェでいいんじゃない?」
「コロンちゃん!」
「異議なしですわ」
「うん。いいと思うわ」
「ふぇええ!!」
三人からリーダーに押されてしまうと断れないよ。
「わっ、わかったよ。頑張ってリーダーを務めます!」
「ふふふ、よかったですわ」
「うん。頑張って」
「アシェ、ファイト!」
私たちは先生にチームが出来たことを報告して四人で野外学習に赴くことになった。
♢
《sideピリカ》
「っていうことがあったんだよ。ピリカはみんなと仲良くできる?」
おいおい俺は協調性のないヒヨコだと思っているのか? 俺ほど他の魔物と仲良くできるヒヨコはいないぜ。
「ピヨ!」
「できるんだね。ふふ、よかった」
アシェが抱きついてくる。
モフモフボディーで抱きしめるアシェはこの2年で随分と身長が伸びて、十歳? にして百三十センチになった。
俺の胸に顔が埋められるほどに大きくなって、彼女を守りたいと思いが強くなる。
彼女の成長を見守って、彼女を守り続ける。
それが俺の使命の一つであり、召喚獣としての役目だ。
「みんなでお出かけってなんだかワクワクするよね」
「ピヨ!」
ああ、そうだな。
俺も学園に作られている人工ダンジョンか、自分の実家とも言えるあの広大な森だけしか知らない。
世界にはどんな場所があって、どんな魔物がいるのか興味があるぞ。
「今度いく場所はね。凄く広い荒野と砂漠が広がっているんだって」
ほう、それはまた興味深いな。
森と岩場、川などは知っているが、自然の荒野や砂漠には行ったことがない。
「見晴らしが良いから、二年次の野外学習に選ばれているそうだよ。三年次にはまた違う場所に行くんだって」
みんなの成長に合わせて学園側も色々と考えているんだろうな。
「まだまだ勉強しないといけないことはたくさんあるけど、やっぱり早く冒険に出たいって思っちゃうよね。もっと広い世界を見て、色々なことを知って、色々な魔物や人と出会うんだ」
アシェは成長するにつれて、人付き合いが上手くなって、下級生の面倒見もいい。
お姉さんとしての成長が著しくて俺としても鼻が高くなるぞ。
「ピリカはどうかな? 私と冒険したい?」
「ピヨ!」
ああ、アシェと色々なところに行って、俺も強くなりたいぞ。
「ありがとう。一緒に頑張ろうね。今日ももう寝るよ」
「ピヨピヨ」
俺たちはそれぞれの寝床に入って眠りについた。
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