第43話 コボルト中ボスと進化の兆し

 咆哮を上げる黒いコボルトに対して、アシェやオリヴィアちゃんが怯んだ様子を見せるが、俺とシルが同時に声を上げる。


「ピーーーーーーーーヨ!!!!!」

「ニャオーーーーーーン!!!!!」


 黒いコボルトの進化ランクを教えて神の声さん


《ブラックコボルト危険度☆☆☆☆☆》


 俺とシルの危険度を表示すると☆4。


 つまりは、進化が俺たちよりも上ということになる。


《ブラックコボルトは統率のスキルを持っているため、周りにコボルトが多ければ多いほど危険度が増していきます》


 なるほど。周りから倒したのは正解だったわけだ。


「ごめんね。ピリカ。もう大丈夫だよ」

「ピヨ!」


 俺が《神の声》さんと話していると、アシェの気持ちも落ち着いたようだ。


 もしかしたら、黒いコボルトの咆哮には恐怖を付与する効果が含まれたいたのかもしれないな。


「シルちゃん。私も大丈夫です」


 シルが気遣ってオリヴィアちゃんを見ているが、元々戦闘向けではないオリヴィアちゃんには強い魔物の威圧に対して耐性が弱いのかもしれない。


「ピヨピヨ」

「ニャオ」


 シルに下がっていて良いと伝えて、二人を下がらせる。

 残されたコボルトは五名ほど、それに黒いコボルトが加わっただけなら、俺とアシェで対応できるはずだ。


「ピヨ!」

「うん、行こう。ピリカ」


 俺たちは覚悟を持って一歩を踏み出す。

 アシェは絶対に俺が守る。


「ピーーーー!!!(王者の咆哮)」


 最近は弱い魔物と遭遇することはなかったから使うことはなかったが、黒いコボルト以外なら効果があるはずだ。


「ピリカの鳴き声で、コボルトが下がった。今だ!」


 アシェもよくわかっているじゃないか。

 下がったコボルトに向かって風の魔法で先制攻撃を仕掛ける。


 一体のコボルトがアシェの魔法で倒れて、続けて水の魔法で二体目を俺が倒す。


「残り四体」


 アシェの声に俺の足は勢いを増していく。


 高速で動きながら嘴で三体を目を倒して、後を取ろうとするコボルトにアシェが風の刃を飛ばして背後を守ってくれる。


「二体!」


 黒いコボルトが怒りに任せて四足歩行でこちらに向かってくる。


「ピヨ!」

「うん。任せるね。まだ私じゃ倒せない」

「ピヨピヨ」


 ああ、任せてくれ。


 アシェは残ったもう一体を魔法で倒してくれる。

 

 黒いコボルトと一対一。


 仲間がいないお前はただのコボルトと対して変わらないぞ。


「アウウウウウウウウ!!!」

「ピーーーーーーヨ!!!」


 奴の爪と牙が俺を襲う。

 距離をとりながら、カウンターで嘴を放つ。


「グルル」


 掌で止められたけど、コボルトの右腕はもう使えない。


「ピヨ」


 闇よ。お前は魔法を使えないようだな。

 身体能力と統率にスキルを使ったんだろうな。


 だから、お前に闇を防ぐことはできないはずだ。


「グルル?」


 いきなり視線を奪われて戸惑う黒いコボルトに俺は至近距離で巨大な水の槍を作り出す。


「ピヨ!」


 黒いコボルトを貫いた。


「グルっ!」


 トドメを指して決着をつける。


「やった! ピリカ! やったよ」

「ピヨ」

「やりましたね! アシェちゃん」

「オリヴィアちゃんありがとう。なんとか、突破できたよ。これで決勝大会も頑張れるよ」

「ふふふ、よかったですわ」


 俺たちは最後の調整を終えて、レベルも完全に進化ができるまでに到達する。


 アシェと共に寮の部屋に戻り寝室に入る。


「ピヨピヨ」

「ピリカ、決勝大会までは二週間後だからね。もう少しだけ連携を強めれば頑張れるよね?」

「ピヨ」


 俺は首を横に振るう。


「えっ? どうしたの」

「ピヨピヨピヨ」


 寝室を指して眠ることを示す。


「休憩をしたいってこと?」

「ピヨ」


 大きく頷く。今から決勝大会まで休息を取ることを告げる。

 その間に俺は進化をする。


「……わかったよ。ピリカもずっと戦い続けて疲れたよね」


 アシェの許可をもらって、俺は寝室へと移動する。


《ダークなヒヨコはレベルがMAXになりました》

《進化条件を満たしました》


 種族:ダークなヒヨコ

 称号:召喚獣、人の心を持つヒヨコ

 状態:良好(生後一歳)

 レベル:50/50


《進化先を表示しますか?》

 

 《神の声》さん、よろしくお願いします。進化先を教えてください! 


 ♢♢♢♢♢


《進化》


 ・キングなヒヨコ

 ・ヤミなヒヨコ

 ・ダークバード


 ♢♢♢♢♢


《現在》


 ・ダークなヒヨコ


 ♢♢♢♢♢


 今回はダークバードで、ヒヨコから脱却できそうだな。

 詳細を見てみないとわからないが、とにかく進化をして、アシェの役に立つんだ。

 

《進化の詳細を見ますか?》


 お願いします。


 キングなヒヨコ


 ・ヒヨコの頂点。これより先はなく。これ以上もない。ヒヨコとして一生を過ごすことを決定づける代わりに全ての能力が飛躍的に向上させる。


 通常スキル:《全属性魔法レベル1》、《全ひよこに対する命令レベル1》

 耐性スキル:《全異常攻撃耐性レベル1》

 特殊スキル:《ヒヨコの魔物たちの王となり、命令権をえられるレベル1》


 これは前回と全く同じってことか? ヒヨコとしては頂点になるんだろうな。


 ヤミなヒヨコ


 ・空の王を目指すヒヨコの亜種の進化系。羽は真っ黒に染まり、邪道を突き進む。

 ダークなヒヨコを超える激レア食材。

 羽の色によって見分けやすく捕まる確率は上がる。

 身長は二メートルを超える巨大なヒヨコで、肉厚が天元突破して美味。


 通常スキル:《闇魔法レベル3》、《毒魔法レベル3》、《毒の鉤爪レベル2》、《毒の嘴レベル1》

 耐性スキル:《恐怖耐性レベル3》、《精神耐性レベル3》、《毒耐性レベル3》、《闇耐性レベル3》、《氷耐性レベル1》、《風耐性レベル1》

 特殊スキル:《恐怖付与レベル2》、《残虐性レベル1》


 完全にダークなヒヨコの上位互換だな。

 空の王としても、目指すことはできるけど……。


 ダークバード


 ・空の王を諦めて、ダークなヒヨコが鳥として進化する。

 漆黒の鳥で夜のカラスとも呼ばれる。

 食材としての味は激マズになり、食材としては使えない。

 代わりに空を飛ぶことができるようになり、雑食としてなんでも食べられるようになる。


 通常スキル:《全属性魔法レベル1》、《翼の斬撃を飛ばすことができるレベル1》

 耐性スキル:《全異常攻撃耐性レベル1》

 特殊スキル:《飛翔》、《全能力上昇》


 空の王への道は閉ざされるけど、強さは今まで一番高くなるというわけか。


 さて、どうれにするかな?


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る