第44話 進化4

《ヤミなヒヨコが選択されました》


 いや、まだ選択中!!!


《神の声》さん、相変わらず選択権が無さすぎる!!!


《進化を開始します。進化速度はいかがなさいますか?》


 しかも全然話を聞いてくれないだと! キャンセル不可ですか、そうですか、わかりました。

 今回は時間も、安全もあるからね。短縮なしでフルでやりたいな。


《フルバージョンの1:1進化を承認しました》


 うん。わかってた。選択権がないってわかってましたよ。


《では、推奨通り1:1進化を開始します。期間は七日です》


 前より一日だけ長いんだな。


《ヤミなヒヨコは特殊個体になるため、進化は体の変貌を伴います。キャンセルは不可能です》


 はいはい。わかっていますよ。

 あの痛みは嫌なんだけどな。

 でも、アシェのためだやってくれ!! 


 進化しないと決勝大会では勝てないだろうからな。


《それでは進化を開始します。魔王への道を突き進む空の王よ。あなたに闇の神からご加護が在らんことを》


 前と文言が変わっているけど、やっぱり確実に魔王と空の王って両立できているのかわからないよね。


《全ての頂点にならんとすることを期待します》


 くっ! 始まったな。


「ピッ! ピギー!!! ピピピ」


 グハッ!! ツレーーーー!!!


 毎回痛みを更新するのやめてもらえませんかね!!!


 血が搾り取られる!!! 骨が砕ける! 羽が毟り取られる!!


 全てが作り変わる!!


 イテェー!!! めっちゃイテェー!!! 死ぬ!!! これは死ねるぞ!


「ピギギギ!!! ピュー!!! ピューー!!!」

「ピリカ? ピリカどうしたの? 痛いの?」

「ピ〜」


 大丈夫だ。だけど、ごめんな。

 今は答えてやることができないんだ。

 

 なんとか息をしよとするが、息もできない。

 意識を保つことすら無理だ。

 だけどイテェーーーーーー!!!!


「ニャッ! ニャア!!!」

「シルちゃん?」

「アシェちゃん。多分ですが、ピリカちゃんは進化に入ったようなのです」

「進化?」

「はい。魔物たちは、ある一定のレベルに達すると進化を行うようなのです。そして、ピリカちゃんは、アシェちゃんと決勝大会に挑むために進化をするだろうってシルちゃんが教えてくれたんです」


 はは、シルのやつ。


 声は聞こえている。

 だけど、返事ができるような状態じゃない。


 「ピ〜ピ〜ピ〜」


 ごめんなアシェ。

 心配をかけないようにちょっとでも声を抑えるから、我慢してくれ。

 もう自分がどんな声を出しているのかもわからねぇ〜。


 寒い。


 猛吹雪の中にいるような寒さを感じる。

 ここに俺は本当に存在しているのか? 一人で死ぬんじゃないか?


《七日まで残六日》


今までよりも絶望的な痛みと、長い時間に俺は耐えられるのか不安しかない。


《七日七晩にて、全ての進化を終えます》



《side KFC団》


 始まったようだ。


「秘密コックF。貴様の情報通りだったようだ。今日まで観察していたからわかった」

「だろ」


 俺たちは紳士であるから、少女の部屋を見ないためにヒヨコの部屋だけを望遠鏡で見る日々を続けていた。


 観察を始めて一週間。


 とうとう、ヒヨコの進化が始まった。


「誘拐するのに一刻の猶予もない。進化がどれくらいで終わってしまうのかわからないからな。抵抗されれば、厄介なことになる」

「ああ、わかっている」


 俺たちはこれまでにないほど綿密な計画を練った。

 サモナーたちが授業を受ける午前中。

 それも、教師たちも全て授業や食事、準備などで一番忙しい時間を調べ上げて、学園に侵入する方法を入手した。


 学園には、物資の搬入口があり、いつも食堂に搬入が行われるタイミングを狙う。

 俺たちは仮にもコックとして仕事をしている者たちなのだ。

 食材の搬入に立ち会うことなどこれまでも何度もあった。

 

 だから、その伝手を使って秘密裏に侵入を試みる。


 だが、三人で行動すれば、どうしても目立ってしまう。

 そのため秘密コックFと秘密コックCには搬入の仕事をそのまま行ってもらい、俺だけでヒヨコの誘拐を実行する。


「失敗は許されない。これ迄、二度も失敗してきたんだ。三度目の失敗はいらない」

「もちろんだ。そのために今日まで準備をしてきたんだからな」

「任せろ!」


 俺たちは今日までの準備のために仕事もそこそこにセーブしてきた。

 ランキングを落とさないためだけに努力して、ここからの一発逆転を成し遂げるのだ。


「それでは行くぞ!」

「おう!」

「任せろ」


 時間を見計らって、搬入者として学園に侵入した。

 

「あら? いつもの人たちじゃないんですね」

「すみません。今日は体調が悪いとかで、我々が変わりました」

「そうですか。あら、いつもよりも品物がいいのね」

「はは、一つ一つ吟味して持ってきたんです」


 当たり前だ。

 我々が仕入れて持ってきた者だからな。

 秘密コックに恥じるような食材を持ち込むはずがない。


 我は二人にこの場を任せて目的の寮へ向かった。

 2階にあるヒヨコの部屋へとロープサーペントを使って窓を開いて中へと侵入する。


「クク、やっとだ。ダークなヒヨコよ。貴様を調理するために我々がどれだけの犠牲を払ったことか、これで念願が叶うのだ」


 俺は首輪に鈴をつけて、消滅しないようにしてからヒヨコをローブサーペントに拘束させて部屋から飛び出した。


 成功だ!


 あとは搬入用の荷馬車に乗せて脱出するだけだ。

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