第2話 進化

 腹が苦しい……。


 完全に食べすぎた。

 

 巨大芋虫を一匹分まるまる食べる質量が、俺の胃袋には存在しないはずなのに、胃袋が異次元のように食べられた。


 美味すぎだろ‼︎ 異世界巨大芋虫‼︎


「ピーーーーー!!!」


 遠くの方で鳥が鳴く声が聞こえて、重い腹を抱えながら身を起こす。


「ピヨ?」


 気づけば巣に誰もいなくなっていて、空に3羽のカーチャンに似た鳥たちが飛び立っていく姿が見えた。


 満腹で眠っていたら、ヒヨコ兄弟たちがいなくなっていた。


「えっ? もしかしてヒヨコ兄貴たちか?」


 先ほど《レベルアップしました》と神の声が聞こえていたけど、完全に無視していた。


《ビッグなヒヨコはレベルがMAXになりました》

《進化条件を満たしました》


 種族:ビッグなヒヨコ

 称号:まだ何者でもない、人の心を持つヒヨコ

 状態:生後1日

 レベル:5/5


 おや、どうやら巨大芋虫を食べたことでレベルが上がって、レベルMAXになったようだ。



《進化先を表示しますか?》



《神の声》さんも進化して、話せることが増えたんだな。

 

 よし! 《神の声》さん、お願いします。

 進化先を教えてください! 


 ♢♢♢♢♢


《進化》


 ・スーパーなヒヨコ

 ・火の鳥もどき


 ♢♢♢♢♢


《現在》


 ・ビッグなヒヨコ


 ♢♢♢♢♢


 ほうほう、スーパーなヒヨコと火の鳥もどきか、どっちか好きな方を選べるということかな? だけど、どんな風に進化するのかわからないから選びようがないぞ。

 

《進化の詳細を見ますか?》


 おっ! 《神の声》さんがレベルアップしているぞ。

 はい! お願いします。


・スーパーなヒヨコ


 スーパーなヒヨコは多種族からレア食材として取引されている。

 ビッグなヒヨコよりも大きく。

 1メートルほどの身長だった体が、1.5メートルの身長に成長して肉としての品質が高くなる。


 レア食材って、食用なのかよ! てか、魔物だよな俺って、食べられるのかよ! 結構ヤバい進化なんじゃないのか? そんな進化選ばないだろう普通。


 通常スキル:《風魔法》

 特殊スキル:《大器晩成》


 これって結局ヒヨコがデカくなったバージョンってことだよな?! 

 ただ、魔法が使えるのは興味をそそられるぞ。

 ここが異世界で魔法が使えることは理解できた。


 火の鳥のカーチャンから風魔法を使う俺が生まれたのか?

 

 ただ、《大器晩成》は気になるな。


 こういう転生系なら《大器晩成》は、すごい進化を後々からもたらしてくれる恩恵が大きい。


 ステータスを見た時に《空王の眷属》ってあったからな。


 ポテンシャルはあると思うんだ。


 とりあえず、もう片方も見せてください。


 《神の声》さんにお願いすると、もう一つの進化先を出してくれる。


 ・火の鳥もどき


 火の鳥に似せた姿をしているが、所詮はもどき。飛行はできるが弱い、戦闘力も低い。最終進化はファイアーバード。空王の眷属候補を破棄します。


 通常スキル:《飛行》、《嘴で突く》、《翼で羽ばたく》

 耐性スキル:《火耐性》

 特殊スキル:《早熟》


 あ〜そうか。


 色々微妙だな。


 鳥だからな、飛ぶためのスキルを得るために力を使っちまうのかな? ヒヨコ兄弟たちは、火の鳥もどきになって空を飛ぶことを選んだんだな。


 うん、ないな。


 火の鳥もどきに進化しても、最終的に火の鳥カーチャンみたいにはなれるかもしれない。だけど、それ以上は強くなれそうにない。


 絶対すぐに殺される。

 これは、スーパーなヒヨコ一択かな。


《スーパなヒヨコ》が選択されました。


 おえ? 今ので選択したことになるのか? 《神の声》さん気が早くないですか?


《進化を開始します。進化速度はいかがなさいますか?》


 え? え? 進化速度? 何があるの?


 能力を高める一番いい方法は何?


《フルバージョンの1:1進化を推奨します》


 うん。わかったよ。

 ここは火の鳥が守る巣だからね。

 安全な場所で進化させてもらうとしよう。


《それでは進化を開始します》


 ・フルバージョンの進化をお伝えします。


 目指す頂きは四大聖獣の一つ。

 空王の眷属として、強者の道を選ぶことを選択されました。

 これより、《汝には、空王の頂きを目指していただきます》もしも、途中で死ぬことがあれば、変わり映えしない路傍の石として魂は消え失せることでしょう。


 全ての頂点にならんとすることを期待します。


 あれ、《神の声》さん? いったいなにを言っているんだ?


 《神の声はレベルが2に上がりました》


 俺はまたも意識を手放すことになる。

 子守唄のような《神の声》さんの声が耳に残りながら、眠りに誘われるはずだった……。


「ピッ! ピギー!!!」


 寝ようと思っているのに物凄い痛みで目が覚める。

 いや、目は覚めているけど痛くて起き上がれない。


 イテェー!!! めっちゃイテェー!!!


 身体中ばバキバキに砕け散るような痛みが全身を駆け巡っていく。

 こんなの寝てられるわけがない。


《フルバージョンの変化をしております。全身が最強へ至る処置です。どうぞ耐えてください》


 いつまで? いつまで続くんだ! こんなの嫌だ!


《三日三晩。それで全ての進化を終えます》


 なっ! 三日! まだ始まったばかりだというのに、これが三日三晩!


 もういっそ殺してくれ。


 血を吐き、骨が捻じ切れるような痛みを発しながら、何度もバキバキと骨が砕ける音が響いて、のたうち回る。


 称号スキル:《空王の眷属:レベル000》、《大器晩成》、《愛嬌》を得ました。

 耐性スキル:《恐怖耐性》、《火属性耐性》を得ました。


 ハァハァハァハァハァハァ、どんどん体が変わっていくのがわかる。


 通常スキル:《風魔法:レベル1》を得ました。

 通常スキル:《モフモフボディーガード:レベル1》を得ました。


 イティーイティーよ。

 もう涙も枯れて何も出ない。


 特殊スキル:《王者の風格レベル1》を得ました。


 ♢♢♢♢♢


 種族:スーパーなヒヨコ

 称号:空王を目指すヒヨコ

 状態:空腹

 レベル:1/10

 H P:100/100

 M P:100/100

 攻撃力:100

 防御力:100

 魔法力:100

 魔法防御力:100

 素早さ:100

 魅 力:30


 特殊スキル:《神の声:レベル2》、《ステータス閲覧:レベル1》、《大器晩成》、《愛嬌》

 通常スキル:《鳴く:レベル1》、《突く:レベル1》、《風魔法:レベル1》、《モフモフボディーガード:レベル1》

 耐性スキル:《恐怖耐性》、《火属性耐性》

 称号スキル:《空王の眷属:レベル000》、《モフモフボディー:レベルMAX》


 ♢♢♢♢♢


 ハァハァハァハァハァハァ


 やっと終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る