第3話 初戦闘

 来ない。


 火の鳥カーチャンが、あれ以来やってこない。

 進化をするために三日を費やした。

 体が痛すぎて動きたくない。


 ヒヨコ兄弟たちもどこかに飛んで行ったから姿が見えない。


 いよいよヤバい……。


「ピー」


 腹が減って死ぬ。


 巨大芋虫を食べて、レベルアップをしたことで進化した。

 俺は体のしんどさから、身動きが取れなくて、グータラしていたら一日が過ぎた。


 状態:空腹の五日目、と書かれていた。


 この巣から出て食事を探しに行かなくちゃ餓死する。


 そっと巣から地面を眺めれば、だいたい地面まで十メートルぐらいはありそうだ。

 断崖絶壁に造られた巣なので、上に行くにしても、下に行くにしても距離がある。


 《モフモフガード:レベル1》がどれくらいの衝撃吸収をしてくれるのかわからないが、今はそれに賭けて落下するしか手立てがない。


 ヒヨコは飛べないんだ。


 飛べない鳥はここにいます!


「ピー!」


 とにかくここにいれば、餓死するのは間違いない。


 行くしかない?! 行くぞ?!

 

 意を決して巣から飛び降りる。


「ピー!!!」


 通常スキル:《モフモフガード:レベル1》!


 発動すると同時に毛が二倍ぐらいに膨れ上がって、マリモのような姿で地面に着地する。あれ? 全然痛くない。


 これ、凄くね? モフモフクッションじゃん!


「ピー!」


 スキルを解除すると、普通のサイズに戻った。

 俺はガッツポーズをして羽を伸ばす。


 とにかく巣からの脱出ミッションは成功だ! だけど巣から出たまでは良かったけど、なんの計画もしてなかったな。


 やっぱり当面の目的は、食料と水の確保だな。


 火の鳥カーチャンが食べさせてくれた芋虫はべらぼうに美味かった。

 あれを食いたいけど、一気にレベルが上がったことを考えれば、高ランクの魔物なんじゃないかと推測ができる。


 だから、今の俺はレベルをあげてヒヨコから脱却する。


 最終的に四聖獣を目指すのはいいけど、その前に死んだから元も子もありませんじゃ笑えねぇ〜。


 てか、それを目指さなくてもいいから、ノンビリと昼寝しならがご飯が食べられる家の確保もしたい。


 一応ヒヨコも鳥だしな。

 いつかは、成長して空を飛びたい。


 はぁ〜諸々のことを思えば、食事の確保が最優先。

 レベルアップして進化するのが、短期的な目的だな。

 最終的にはのんびりできる家も確保しないとな。


 やること山積みじゃん。


 能力が高くなったら人化とかもできるのかな? それにこの世界のルールとか、どんな世界なのかも知らないとな。


 うわ〜結構やること多くね? 人だった頃の記録って曖昧だけど、こうやって思考ができるだけでもありがたいな。


 多分ヒヨコ兄貴たちって、それほど寿命が長くないんだろうな。

 ドラゴンみたいな、天敵に喰われて死ぬ運命とか嫌すぎる。


 進化して強くなるまでは、絶対に人に合わないようにしないとな。

 俺ってレア食材で美味しく食べられちゃうらしいから。


「とにかく食料だけど」


 食料の話をしたいけど、目の前に敵が現れたようだ。

 だけど、鳥の好物といえば? 


 そう虫だ。


 地面に落ちてから俺は虫を探した。

 

 そして、見つけた!


 木の根からデカイミミズが出てきた。

 はっきり言うがキモい。

 だけど、芋虫の味を覚えている俺としては虫は美味いという頭ができてしまった。


 《ピンクミミズ》


 うん? いきなり頭の中に《神の声》さんが聞こえてくる。


 もしかして、ステータスが見れたりする?


《レベルが2になりましたので可能です》


 おお! それを早く言ってくれよ。

 なら、ピンクミミズのステータスを閲覧したい。


♢♢♢♢♢


種族:ピンクミミズ

状態:通常

レベル:5/10

HP :8/10

MP :3/10

攻撃力:5

防御力:5

魔法力:2

素早さ:1


耐性スキル:毒耐性:レベル1

通常スキル:噛みつく:レベル1、巻きつく:レベル1

特殊スキル:毒攻撃:レベル1


♢♢♢♢♢


 う〜ん、全体的に弱くね? 毒ってのが凄く気になるけど、俺って全部ステータスの能力が100を超えてるから、ピンクミミズは雑魚じゃん。

 

 鳥とか魚の餌にミミズってやっぱりよく見るよな。

 それに本来のミミズって茶色くて気持ち悪いけど、ピンク色で美味しそうだ。


 はっ! 俺は鳥の頭になっているかもしれない。

 自分が人間だったことを忘れて、とてつもなくミミズが美味しそうに見える。


 腹が減っているし、弱そうだし……我慢は……できないな。


 やってやんよ!


「ピー!」


 俺は覚悟を決めて、木の根から飛び出しているミミズを突いた。

 ブシュッと聞きたくない音がしたが、もう目を瞑って食らいつけばどうでもいい。


 ウッマっ! ミミズ美味すぎる! 芳醇な甘味と土の中で冷えた体がちょど良い口当たりをしていて、もうこれは病みつきになる美味さだ!


「ピッ!」


 突いて一口を食べたことで、ミミズに気づかれた!

 締め付けるように俺に巻きついてくる。

 

 スーパーなヒヨコさんに反抗しようってのか? いいぜやってやんよ!

 俺の突くとお前の巻きつくが、どっちが強いか試してやんよ!


「ピーーー!!!」


 連続で突くじゃ。


 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ。


 ふっ、全部喰らいつくしてやったぜ。


 突く度に口の中に美味しい味が広がるから夢中で食べ続けちまった。


「うん? あっちにもピンクミミズが!」


 俺をとめたくば、腹を満たしやがれ!!!


 次なるミミズに向かって俺は羽ばたいた。


 飛べんけど。

 


 

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