第4話 ジャイアニズム

 最高だ。


 この森には虫しかいない。


 火の鳥カーチャンがどうしてここに巣を作ったのか、やっと理解した気がするな。

 あの最初に出会ったドラゴンはイレギュラーな存在だったのかな?


 俺は水音に導かれて湖にたどり着いた。

 嘴をつけて水を飲むのが飲みにくい。

 ゴクゴク飲みたいけど、嘴って不便だな。


 後ろから何か、嫌な物音が聞こえてきた。

 

「シャァー!」

「シャァーッ!」

「シャシャシャ!」

「シャシャァー! シャシャシャ!」


《大軍アント》です


 お決まりの《神の声》さんが魔物の存在を教えてくれる。

 ピンクミミズもそうだったが、虫はだいたい俺よりも弱い。


 ここではスーパーなヒヨコ様が最強ってことだな。


 目の前にいるデカいアリの軍団を蹴散らすとしますか。

 

 湖にデカいアリが集まるとか、キモすぎる。

 これだけ数を揃えられる、腹一杯にできそうだな。

 

 ざっと見て、10体はいるな。

 

 一体一体はそれほど強くない。

 力は強いが、動きは遅くて、圧倒的にステータスは俺の方が高い。

 

 空王を目指すヒヨコを舐めんなよ。


 だけど、昔聞いたことがあるんだ。

 アリは尻に甘い蜜を貯めているってな。

 ピンクミミズを大量に食ったが、レベルは上がらなかった。

 多分弱すぎたんだ。


 まだまだ俺は戦ってレベルを上げなくちゃならない。

 

 いいねぇ〜。


 こうやって大量に来てくれる方が簡単にレベルを上げられるってもんだ。


「ピー!!!」


 俺が鳴き声を出せば、アリどもが警戒したように動きを止める。


《王者の風格》を発動しました。


 えっ? 鳴く:レベル1を使っただけなんだけど。


 まぁ、《空王の眷属》らしく堂々と戦ってやりますか。

 動きが鈍るならいいけど、そんなにビビってていいのか? 俺は止まらないぞ。


 近くにいた軍隊アントに突きをお見舞いする。

 殻は硬いが突き破ってしまえば甘い蜜が大量に溢れ出す!


「ピギー!!!」


 美味っ! いや、これもう砂糖とか蜂蜜だわ。

 ずっと舐めていたいぐらい甘くね? これはマジで絶品じゃねぇか?!


「シャシャシャ!」


 あまりにの美味しさに感動していると、アリに噛まれた。

 全然痛くない。ショボっ。

 だけど大量に襲われたらHPが減っちまうな。

 四方八方から大軍アントが襲ってくる。


 《モフモフガード:レベル1》


 身体を勢いよく膨らんでモフモフになった。


 勢いで軍隊アントが弾き飛んでいく。

 

「「ジャァアアッ!」」


 おや? 


《ジャイアントアント》


 ステータスをお願いしやっす。


♢♢♢♢♢


種族:ジャイアントアント

状態:興奮状態

レベル:5/10

HP :80/100

MP :100/100

攻撃力:50

防御力:100

魔法力:20

素早さ:100


耐性スキル:物理攻撃耐性:レベル1

通常スキル:噛みつく:レベル1、運ぶ:レベル1

特殊スキル:貯蔵:レベル1


♢♢♢♢


「キジャアッッ!」


 おうおう、ちょっと強ぇ〜じゃねぇか! それでも俺の方が強いけどな。


 それにずっと試したかった攻撃があるのよ。


「ピー!」


 風よ!


 ずっと風魔法が使ってみたかったんだ。


 俺は羽ばたかせるように風魔法を発動すると、風の刃が飛んでいった。

 そのままジャイアントアントの首を切り飛ばした。


「ピー……」


 一撃で終わったよ。

 確かに物理耐性は持っていたけど、魔法耐性弱すぎだろ。


《レベルアップしました》


 おっ? やっとレベルアップか。


 やっぱりある程度の強さがあるやつを倒さないとレベルは上がらないようだな。

 ふふん、空王の眷属である俺様にかかれば、虫など相手にならんというわけだな。


「ピヨピヨピヨ!」


 笑ってもピヨピヨだから、迫力ないなぁ〜。


 レベルも上がって、拠点になる水場は確保した。


 この辺の虫系魔物ならレベルもステータスも俺の方が上だから無双もできる。


 ただ、レベルの上がりが遅いのがネックだな。


 あとは家を確保できればいいんだけど、そうだ! 


 軍隊アントたちは、巣を作っているはずだ。

 こんなにもデカいアリが出入りできるぐらいなんだから、スーパーなヒヨコである俺でも入れるんじゃないか?


 雨風が凌げるなら最悪、軍隊アントと共同生活してもいいな。

 腹が減ったら巨大アントをおやつにすればいいし。


 軍隊アントのものは俺の物、俺の物は俺の物だ。


 早速、軍隊アントを探して歩き回れば、数匹でまとまって行動している軍隊アントを見つけた。


 後をつけていく。


「ピー!」


 つい声が出ちまった。


 だけど、スゲー! なんて表現したらいいだろう。

 蟻塚っていうんだろうなこういうの。


 一メートルほどのデカさがある軍隊アントたちが作った蟻塚は、巨大な山を作るほどの大きさがある。


 ヤバっ! あれに住めたらもう王様じゃん!


 まぁ、本来は軍隊アントの上には、さっきあったジャイアントアントとか、クイーンアントとかがいるんだろうな。


 流石に今のレベルで突撃したら死ぬと思う。


「ピー」


 息を吐いただけで、ピーピーいいやがる。


「キシャー!」


 どうやら帰ってきた軍隊アントに気づかれたようだ。


 悪いな。お前らは弱いから気づかれても怖くもなんともねぇよ。


「ピー」


 風魔法で首を刎ねる。


 経験値にはなるだろう。


 さて、あの蟻塚を手に入れる算段をつけますか……。


「ピッ?」


 振り返った俺の目の前に魔法陣が出現して飲み込まれる。

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