第25話 作戦を考えよう

 進化することに恐怖を覚えるレベルの痛みが、全身の骨を砕き、羽をむしり取り、血反吐を吐いてのたうちまわった。

 

《六日六晩にて、全ての進化を終えます》


 やっと終わったんだ。


 全ての進化が終わると、嘘のように痛みが引いていく。


 ♢♢♢♢♢


 種族:ダークなヒヨコ

 称号:召喚獣、空王を目指すヒヨコ

 状態:飢餓

 レベル:1/50

 H P:1000/10000

 M P:3000/5000

 攻撃力:8000

 防御力:4000

 魔法力:10000

 魔法防御力:5000

 素早さ:2000

 魅 力:1000


 特殊スキル:

《神の声:レベル3》、《ステータス閲覧:レベル2》、《大器晩成》、《愛嬌》、《念話》、《恐怖付与レベル1》、《威圧》


 通常スキル:

《鳴く(王者の咆哮、威圧を含む):レベル3》、《突く:レベル3》、《風魔法:レベル3》、《水魔法:レベ2》、《闇魔法レベル1》、《毒魔法レベル1》、《鉤爪レベル1》、《モフモフボディーガード:レベル2》、《硬化》


 耐性スキル:

《打撃耐性:レベル2》《斬撃耐性:レベル3》《重力耐性:レベル5》、《恐怖耐性:レベル2》、《火属性耐性:レベル5》《精神耐性:レベル1》、《毒耐性:レベル1》、《闇耐性:レベル1》


 称号スキル:

《空王の眷属:レベル010》、《魔に染まりし者:レベル1》、《モフモフボディー:レベルMAX》

 

 恩恵:瀕死の踏ん張り。


 ♢♢♢♢♢


 ただレベルが上がった時よりも飛躍的に能力が向上してスキルも増えて、圧倒的に強くなった。

 

「ピヨ」


 腹減った。


「ニャオ」

「ピヨ?」


 俺が鳴き声を出すと、シルが水を口移しで飲まさせてくれる。

 ああ、だから喉の渇きが楽だったのか、シルが苦しむ俺に水を与えてくれていたのか。


『ありがとうピ』

『もう大丈夫かニャ?』


 ふと、気づけばシルが二足歩行をしている。


『シルも進化したピ?』

『したニャ。新しい魔法も覚えたニャ』

『俺も覚えたピ』


 互いに笑顔が浮かぶ。


 相手の強さを測ることはできていないが、今の俺たちは確実に強くなっている。


『羽が真っ黒になっているニャ』

『シルは二足歩行で立っているピ』


 シルは俺から距離を取ると、手の中に《光》を生み出した。


 巣の外から漏れて入ってきていた明かりとは違って、眩しいほどに輝きを放つ光にシルの体が映し出される。


 二足歩行ながらもしなやかで、銀色の毛並みがとても美しいシルがそこにいた。


 もしも服を着ていれば、獣人として通りそうなほど身長も伸びている。

 

 優雅に敬礼をしたシルはとても美しい。


 俺は《闇》を生み出して、シルの光を飲み込んだ。

 太陽の明かりすらも遮断するほどの《闇》が二人を飲み込む。


「ニャッ!」


 何も見えない暗闇にシルが驚きの声をあげて、俺は《闇》を消滅させる。


『《重力》に続いて、《光》の魔法は特別な感じがするピ』

『《闇》も凄かったニャ! 全てが飲み込まれるような不思議な感覚があったニャ』


 互いに新しく得た力を見せ合って、ネズミへ対抗する手段を考え始める。


 あの時は、あいつの動きに対して俺たちはついていくことすらできなかった。

 だけど、今ならわかる。桁が違う動きだったんだ。


 進化をしただけで、一桁増えたということは相手の動きは俺たちの最低でも十倍以上の速度を持つていたことになる。


 俺よりも動くのが速いシルですら、あいつについていけなかった。

 

 つまりは、ネズミの動きはシルよりも速い。


 俺では今の状態でもネズミの速度に追いついていけない恐れがある。

 だが、シルの重力魔法と、俺の闇魔法はネズミに対して動きを遅くしたり、動きを止める効果がある。


 戦い方によってはいくらでも戦いようはあるってことだ。


『よピ、腹ごしらをしたら奴らを倒すピ』

『わかったニャ』


 貯蔵しておいた食料は全部食べ切る。


 その上で外に出る際は巣とはお別れになる。

 火の鳥カーチャンが作ってくれた巣を捨てるのは覚悟がいるが、それだけの相手と戦うことになるんだ。


 お腹いっぱい食べて、もう一度一緒に眠る。


 身を寄せ合うようにシルの温かみを感じて、眠るのは安心する。


 一人でいると戦いも不安になるが、シルがいてくれて本当によかった。


「ピヨ」


 目を覚ました俺たちは準備運動をして立ち上がる。


「ニャオーーン」


 体を伸ばして気持ちよさそうにするシル。


 体を伸ばすときはやっぱり四足歩行の姿勢がいいんだな。


『覚悟はいいピ?』

『もちろんニャ』


 ここを出たら戦争になる。


《神の声》さん結界を解除してもらえますか?


《承知しました。それでは今より結界を解除します。外的の侵入を許しますがよろしいですか?》


 はい! 覚悟はできました。


《ご武運をお祈りしております。魔に落ちし我が君》


 たまに《神の声》さんは俺のわからない言葉をかけてくれる。


 だけど、今は、それすらも心地よい。


 全てが充実していることがわかる。


「ピヨ」


 いくぞ。


「ニャオ」


 ええ。


《結界が解除されました。敵があなたを見つけました》


 サーチ!


 探索をかけると巣の入り口が破壊されて、ヌードデバラットが降り立つ。



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