第26話 ヌードデバラット 終

 巣の入り口を破壊して侵入してきた黒く細いヌードデバラットは嫌らしい笑みを作ってこちらを見る。


「チュー」


 見つけたと言わんばりの声を出して笑うヌードデバラットに先制攻撃を放ったのは俺だった。


「ピー!!!」


 こちらが弱者のように魔法を放って攻撃する。

 無数の矢を魔法で作り出して、ヌードデバラットへ飛ばす。

 奴は大したことない魔法だと軽く避けただけで、数本はかすり傷程度で気にしていない。


「チュー」

 

 嘲笑うように、こちらへ一歩踏み出した。


「ニャオーン!」


 シルが《光》を放って目眩しをする。


 ヌードデバラットは、巣の中という暗闇に慣れていなかったこともあり、目を閉じて自らの視界を塞ぐ。

 そこに俺の《闇》がヌードデバラットの視界を完全に真っ黒に染めて視界を奪った。


 こちらが弱いと油断しているから新しい力に対して対処が遅れる。


「ピー!」


 俺が声を出すことで、ヌードデバラットがこちらを向くが見えていないはずだ。


「ギューーーーー!!!」


 視界を奪われたことで、ヌードデバラットな鳴き声に引き寄せられて、大量のヌードデバラットが巣へと這い上がってくる。


「チュッチュッチュ!!!」


 笑うヌードデバラットに対して、俺は風を爆発させて全てのヌードデバラットを吹き飛ばす。


「チュッ?!」


 あまりにも巨大な質量に、巣から押し出されたヌードデバラットは地面に溢れるほど多い。


「ピヨ!」


 どこに何を打っても当たる気しかしない。


「ニャオーン!!!」


 先に飛び出したシルが重力魔法を発動する。

 進化したことで、空中で飛ぶように放たれた重力魔法が地面を埋め尽くすヌードデバラットたちを押しつぶす。


「ピヨ!」


 そのまま重力の圧をかけてもらっている間に、俺が大量の水の矢を放って重力に乗せて大量に水が押し寄せてヌードデバラットを圧死させる。


「ギュアーーー!!!」


 重力に反抗するように巨大なヌードデバラットが飛び出してきた。


 落下する俺たちと飛び上がってきた巨大なヌードデバラットと交差する。


「ジュッ!」


 引っ掻くように腕を振るえば、飛ぶ斬撃が飛んでくる。

 身動きが取れない空中でまともに受ける前に体が重くなって、急激に落下する。


 地面に激突する寸前で体が軽くなって着地する。


 シルが重力を操作して、俺の体を着地してくれた。

 魔法の技術に繊細さを足して、シルは強くなっている。


「ニャオーン!」


 空を散歩するように、空中で何度も跳ねるシル。

 それはムーンウォークするように楽しそうだ。


「ヂュウ!!!」


 こちらが上手く避けるので、怒るように斬撃だけでなく、風が巻き起こる。

 どうやら風の魔法と斬撃を駆使して速度を重視したヌードデバラットに対して、こっちは二人で交互に魔法を使って翻弄できる。

 

 進化の度合いは、向こうの方が上だと思えるが、搦め手を使うことで十分に戦える。


「ガハッ!」


 突然ヌードデバラットが血反吐を吐いて、動きを停止する。


「ピヨ」


 最初に放った毒の矢がやっと効果を表してきたようだ。

 カスっただけでどれくらいの効果があるのかと思っていたが、時間をかけて十分に効果を発揮してくれたようだ。


「ニャオ?」

「ヂュ、ヂュウー」


 何が起きたのか説明して欲しそうな顔をするヌードデバラットだが、ここで油断はしない。風魔法でさらに追い討ちをかけて致命的なダメージを与える。


「グフっ!」

「ピヨピヨ」


 お前と話すことはない。


「ニャオ!」


 シルが爪を使って、首を刈り取った。


「ピヨ」


 やられたな。


「ニャオ」


 早い者勝ちって顔をしている。


 仕方ないな。今回はシルにくれてやるよ。

 ダメージを与えたことで、俺にも経験値が入ったようだ。

 レベルが1だけ上がった。


「ピッヨ」


 深々と息を吐いて、なんとかヌードデバラットを退治してしまった。

 

「ニャオ」


 安心して一息ついていると、シルに声をかけられる。

 視線の先には魔法陣が現れていた。

 しかも二つとも現れているので、どうやら同時に召喚されるようだ。


「ピヨ」


 行くか。


「ニャオ」


 ええ。


 疲れてはいるが、アシェにそんな姿を見せられないからな。


 俺たちはそれぞれの魔法陣へと入っていった。



「ピリカー!!! えっ? なんで毛が真っ黒なの!!!」

「ピヨ?」


 そう言えば全身の毛が入れ替わったんだったな。


「シルちゃんが立っています!」

「ニャオ」

「なんで? 二人とも進化した?」

「そうみたいですね?」


 アシェが驚いた顔をしているが、俺たちも強くなったんだ。


「色が変わってもピリカだよね?」


 不安そうに顔を向けてくるアシェに俺は頷く。


「ピヨ」

「やっぱりピリカだ! うん! よろしくね! これからサモナー学園の入学式なんだ。召喚獣と一緒に出ることになっているからよろしくね」

「ピヨ!」


 確かに俺たち以外にもたくさんの魔物がいた。

 ドラゴンや魚?のような魔物も存在する。


 ヒヨコはいないようだが、多種多様な魔物がいることが珍しく面白い。


「さぁ行こう! こっちだよ。ピリカ」

「ピヨ!」


 俺たちは入学式の式典に入っていくと、それはそれは巨大なドラゴンを従えた老人が、こちらを見下ろしている。


「よくぞ参った新たなサモナーたちよ! ワシが学園長である!!! ワシからは、よく学び、よく食べて、よく育つのじゃ!!! 以上!」


 学園長の言葉に、歓声が上がる。


 これがサモナーの入学式か? 面白いな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る