第75話 アホウドリ
俺は一つの仮説を立てることにした。
もしかして、あのアホウドリは、魔法に対しては自動でレジストを発動しているのではないか? そして、大きな攻撃はその強い体で戦うことで防ぐではないかと思った。
目に見えていない小さな岩程度の攻撃は防ぐ知能がないためにダメージが通りやすいかもしれないと……。
だが、一発当てただけでは倒すことはできない。
俺はそう思って鉤爪で握れるサイズの石を集めた。
師匠と最初にやってきた丘に上がって、アホウドリに向かって石を投げることにした。あいつらはアホだ。
毎日同じ場所を旋回して、飛び続けている。
何かをするわけでなく、向かってきた魔物を食べて食事をする。
それ以外はただ飛んでいるだけだ。
「ピヨ!」
この仮説が失敗したら、次の手を考えるだけだ。
俺は石を掴んでアホウドリに投げつけた。
一発目は外したが、二発目で着弾。
落下していくアホウドリが復帰する際にもう一発を当てる。
「ピヨ!」
成功だ!
二発目が当たったことで、アホウドリが地面に落下した。
頭から落ちて行ったから倒せたか?
俺が仕留められたのか確認しようと思って、丘から離れようとした瞬間にアホウドリは飛び立った。
「ピッ!」
マジかよ。全然倒せてない。
落下させることには成功したが、ダメージにはなっていないんだ。
「ピーー」
もう一度だ。考え方は間違っていない。
俺はもう一度アホウドリに石を投げる。
一匹が落下を開始する。
そこに追撃で石をぶつけて、地面に激突。
ここまでは先ほどと同じ。
そこに、石を投げつけながら、近づいていく。
飛ばせないことが大切だ。
小さな石を何度ぶつけてもダメージにはならない。
だから、ブルブルバッファローを吹き飛ばした鉤爪で片羽を切り裂く。
「アホー!!」
ブルブルバッファローの体に傷をつけた鉤爪攻撃が、効いていない? 石から攻撃に切り替えた瞬間にアホウドリが飛び立った。
「ピーー」
クソっ! 何が足りなかった威力? アホウドリの謎を解かないと師匠との対戦ができない。
俺はもう一度石を集めて、アホウドリを撃ち落とす。
三度目の正直として、俺は地面に落下させたアホウドリにありったけをぶつけることにした。
全身に毒を纏って嘴から、アホウドリに突撃をかけた。
石が当たっている腹の部位に目掛けて一直線に突っ込んだ。
「アホ!」
そうしたら、意外にもアッサリと倒すことができた。
「ピヨ?」
もしかしてあれか? こいつらの弱点はお腹で、羽や背中は効果がないってことか? だから着地も足や腹ではなく頭から突っ込んでいたのか?
信じられないぐらいアホだ。
とにかく、もう一度チャレンジして、俺はアホウドリの二羽目を今度は逃げる瞬間にブラックホールを発生させて迎えうったが、ブラックホールは突き破られた。
吸収してしまうブラックホールを突き破るって、どんな化け物だよ。
だが、やっぱり見えてきた。
アホウドリは物理攻撃の方が弱くて、腹の部分が苦手。
逆に魔法には滅法強くて、魔法攻撃を無効化してしまう。
この数日アホウドリを観察していてわかったことだ。
そして、師匠が何を伝えたかったのか、理解したような気がする。
今の俺は師匠に挑むことばかり考えていたが、師匠のことを観察していない。
これでは勝てるか勝てないか賭けでしかない。
「ピヨ」
二羽目のアホウドリを同じ方法で倒すことができたので、俺は二羽を持って師匠の元へ戻った。
『よくやったのじゃ』
『ありがとうございますっピ』
『まだ戦いたいと思うか?』
『思わないっピ。敵意のない相手に戦いを挑む意味はないっピ』
『ふむ。答え半分正解で、半分不正解じゃ』
『えっ?』
『良い。それではいくぞ』
いきなり立ち上がった師匠の後に続いて、何もない更地へとやってきた。
砂漠になりつつある一帯で、来るのは初めてだ。
『進化してみよ』
『えっ?』
『いきなり進化して戦うつもりだったのであろう? 貴様は進化をしたことがあるのか?』
『ないですっピ』
『ここまで教えてきたであろう。何事も実践で使って熟練度を上げなければ使い物にはならん。それで通用するのは弱者に対してのみ。これより貴様が王の一角を目指すのであれば、それではダメなのじゃ』
『どっどうして王を目指すって知っているピ?』
師匠の秘密が知れたような気がして、驚いてしまう。
『それはいつか話す時が来たなら、話そう。それよりも今は貴様の進化じゃ』
『わかりましたっピ』
俺は自分でも気持ちが高揚しているのを感じる。
進化するヒヨコになったはいいが、どんな姿になるのか全くわからない。
それに力が強くなって使えるのかも確かに不安だ。
初めて進化を行うために力を入れる。
下っ腹に力を入れて踏ん張るように!!!!
あれっ? 何か出てしまいそうだ。
『アホ。トイレをしとるんじゃないぞ。スキルなんじゃ。スキルを発動しろ』
あっ、確かに。
俺はスキル進化を発動した。
その瞬間に全身が変わっていくのを感じる。
そして、意識はブラックアウトした。
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