第115話 襲撃
夜のサモン学園は静寂に包まれている。
決勝戦前夜の緊張感が漂う中、俺は宿でアシェが静かに寝息を上げている。
どうしても不穏な気配を感じて、明日を備えたアシェに負担をかけたくないと思ったからだ。
「ピヨ」
翼で、アシェの頭を一撫でして外へ出た。
♢
《side KFC団》
襲撃を行う最終準備に入ろうとして、進化を遂げた魔物も最終段階だ。
これで勝つことができなければ、我々の力だけでは可能性は無くなるだろう。
これはあのヒヨコと我々の宿命の戦いなのだ。
「準備は整ったな?」
「ああ、大丈夫だ」
「最終決戦だな」
KFC団は多くの秘密コックを抱えている。
今回は学園の者たちに邪魔されたくない。
だからこそ今回は万全を尽くして秘密コックに救いを求めた。
サモナー大会の準決勝で黄金鳥を目にすることができた。
彼らもそれを確認したことで協力を約束してくれた。
伝説の鳥を手に入れることで、彼らの名声はさらに高まるだろう。
「今夜が勝負だ。絶対に失敗は許されない」
俺の声が静かに響く。
闇に紛れて学園の敷地内に潜り込むKFC団のメンバーたちに合図を送り。
彼らの目には決意と覚悟が宿っている。
♢
《sideピリカ》
宿を出た俺は不穏な気配を無数に感じて、一番それを強く感じる場所へ向かった。
「ピヨ!」
「なっ! どうして貴様がここにいる!」
見たことがある一段。
KFC団と名乗っていた。
俺を誘拐して料理にしようとしている三人組だ。
だが、今日の夜の学園内は三人だけではないようだ。
冷たい夜風が心地よく、頭は冷静になっている。
「作戦と違うが、今だ! かかれ!」
現れた俺に対してKFC団が慌てながらも襲いかかってきた。
「ピーーー!!!(王の咆哮)」
黄金の羽を広げて相手の動きを止めるために鳴き声を上げる。
しかし、KFC団の主軸となる三人は止まらない。
「貴様の咆哮をどれだけ浴びてきたと思っているんだ! もう慣れたぞ!」
「へへ、こっちだって死にもの狂いで鍛えてきたんだ」
「いや、マジで死地だった」
なぜか三人はゲッソリとした顔を見せているが、その気迫は本物だった。
「ピーーー!!!(王の咆哮)」
俺は彼らの動きを止めながら、誰かに気づいてもらおうと鳴き声を上げる。
KFC団なんて連中が、学園に入っている状況を教師が気づいてくれれば、助っ人に来てくれるはずだ。
黄金の輝きを放ち、目立つように夜空を照らす。
KFC団のメンバーたちは目くらましになるが、これにも三人だけは動じない。
「色々やるじゃないか、だがこれで終わりだ!」
「もうお前に捕まえることしか考えられない」
「絶対に俺たちが勝つんだ」
リーダーらしき男が見たことのないスネークを解き放ってこちらを捕まえにやってくる。
「ピヨ!」
「くく! どうやら力はこちらが上のようだな」
ヒヨコのままでは、力負けする。
反撃に転じようとして、地面が揺れて地震が起きる。
「ピヨ?」
「おいおい、足元がお留守だぜ」
今度はモグラが地面から顔を出して、こちらを捕まえようとしてた。
「ピッ!」
空へと飛び上がったところで、後ろから攻撃を受ける。
そこには夜空を真っ黒に染めるような漆黒のカラスが背中に爪を立てていた。
今までの三人ではない。
明らかに、こちらの攻撃に対して耐性を持っている。
しかも、それぞれの役目に対して連携が取れている。
「もう少し…もう少しで倒せるぞ!」
「俺たちが勝つんだ」
「負けねぇよな?」
相手が強くなっている。
正直、舐めていたと思う。
だけど、面白いじゃねぇか! 俺は進化して戦うことを決めて力をいれる。
「ピーーーーー!!!!」
黄金の輝きが俺の全身を覆い尽くして、体が変化していくのを感じる。
炎を放つように羽根に一つ一つが熱を持つ。
進化の途中で攻撃をしようとしたようだが、氷のダンジョンを溶かすほどの、黄金の羽に弾き返されていく。
「くっ! わかっていたとはいえ、厄介だな」
「秘密コックK! 簡単に捕まえることは難しいぞ」
「秘密コックK! どうするんだ?」
リーダーらしき、秘密コックKに視線が集まる。
「三位一体、あれをやるぞ」
「マジかよ!」
「最終局面ということか!」
何かを決意した顔をした三人組が、自分の召喚獣を集める。
「黄金鳥よ。我々にとってこれは最後の戦いだ。お前に勝てば、貴様を調理してKFC団のトップになる。だが、貴様に負ければ我々は学園に侵入して魔物を攻撃した者として大人しく捕まろう。だから勝負だ」
秘密コックKは、それほどの覚悟を持って俺に挑むということなのだろう。
いいだろう。
正面から受けてやる。
俺も覚悟を決めて、黄金の翼を広げて空へと飛び上がった。
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