第80話 挑戦者

 一年生からの挑戦状が絶えない日々は、意外に楽しい。

 アシェも最初は面倒にしていたのに、面倒見が良いので、一年生の指導を始めてしまった。


 どうやったら俺を倒せるのか、相手の立場になって話をするようになって。

 いつの間にかその子を操作して、戦うまでになってしまった。

 

 もちろん、その子の戦い方に合わせて教えてあげているので、その子の勉強にもなっていいだろう。


 レベル的には負けることはないので、俺は手加減をしながら相手をする。

 魔物は様々などいるので実は面白い。


 最初に戦ってくれたロックロックなどは岩の魔物だった。


 かつて動物のような生きている動物系の魔物ばかりではなく、虫や植物、ドラゴンや、精霊、岩や鉄など。


 生き物ではない者まで魔物として生きているんだ。


 それがとても面白い。


 森でも色々な魔物はいたが、召喚獣としてサモナーが命令して戦うことで、複雑な戦い方も可能になるので、面白い。


 さらにアシェが奇抜な発想や、俺の苦手そうなことを探るように挑戦してくるので、それもまた試し甲斐がある。


 アシェは一年間学園に通いながら戦いや、魔物たちのことをしっかりと勉強をしているのだろう。

 その魔物がどんなことが得意で、どんなことができるのか試しているようだ。


 その知識の豊富さに驚かれる。

 魔物の生態を理解して、得意なことや苦手なことを勉強しているからこそ、その魔物にとってできることできないことをわかっているんだ。


「ピリカ。そろそろ時間だからいくよ」

「ピヨ!」


 そんな生活が一ヶ月ほど過ぎると、アシェは一年生でも人気者のお姉さん。

 俺はボスヒヨコと呼ばれるようになった。


 ダンジョンに挑戦する際に、攻略するためにボスが出現するから、そのボス並みに強いと言うことらしい。


 意外に人はなれるもので、最初は自分の召喚獣が倒されて泣いていた子も、次第に倒されるのは仕方ないから、どうやったら一撃を当てれるのかや、俺を見るとモフモフヒヨコとやじってくるようになった。


 まぁ、俺は生後2年の大人なので、問題なくあしらってやるわけだ。


「やっ、やめれと。モフモフするなぁ〜」


 俺様のモフモフな毛並みで包み込んであげるのだ。

 子供というのは小さくて可愛い。

 

 傷つけるわけにはいかないので、モフモフで包み込むのが一番早い。


「ピリカも随分と手加減が上手くなったね」

「ピヨ」


 毎日毎日倒さないように気を遣いながら、戦っているからな。

 それに魔物たちが自由に行動できるようになる午前中の間は、ダンジョンなどで見かけると護衛をしてやることもあるので、どの魔物とも少しずつ交流を持つようにしている。


「おいおい、お前か?」


 授業も終えて、放課後の一年生指導も終わった時間に、声をかけてきたのはボウズ頭の強面の少年だった。

 身長は170センチは超えていそうな子で、体も鍛えているのかムキムキな体をしている。


 体の大きさから、上級生だと思うが柄が悪そうだな。


「なんですか?」


 俺はアシェの前に出て彼女を庇うように睨みを聞かせる。


「俺の名前はコウタだ! 最近、お前が下級生を仕切っていると聞いてな。いいか、俺はこの学園を支配するために決闘を挑んでいるんだ。俺と一手戦ってもらうぞ! 出でよタラテクト」


 巨大な蜘蛛が召喚に応じてやってくる。


 ああ、そうか。


 ここからはこういうやつを相手にするんだな。


 一年生たちのやっていた訓練は終わりを告げる。

 

 強者たちばかりの世界で、召喚獣はサモナーと共に成長を遂げているんだ。


 いい。


 本当はブルードラゴンと戦いたい。

 

 だけど、どんなことでも段階を踏まなくちゃいけないんだ。


「ピヨピヨ」

「もう、ピリカはどんどん男らしくなっていくよね。仕方ないなぁ〜。コウタ先輩、やろうか? 私も最近は後輩の指導で試したいことが増えたんだ。ピリカ、頑張ろうね」


 アシェがやる気になったなら、楽しみだ。


 召喚されてから、まだ一度もアシェの指示で戦っていない。

 だから、アシェの指示で戦ってみたい。


「いいねぇ〜どこからでもかかって来いよ」

「ピヨ!」


 進化して戦うこともできるぞ。

 アシェ? 俺に指示をくれ。


「うん。ピリカにも何かあるんだよね。だけど、まずは今のままで戦える?」

「ピッ!」


 ふっ、いいだろう。

 アシェが望むなら、それでやろう。


 これからどんどん強い奴と戦う。


「タラテクト!」

「ピリカ!」


 巨大な蜘蛛が強靭な足で俺を踏み潰そうとしてくる。


 だが、甘いな。


 そんな鈍い動きで俺を捉えられると思うなよ。


 師匠は言った。

 たった一回の技を成功させることは誰でもできる。

 それが何度やっても同じように発動できなければ意味がない。


「ピーーーーー!!!!(王者の咆哮)」


 お前が俺に視線を向けた時には遅い。


 俺はお前よりも大きな魔物と何度も戦ってきたんだ。


「ピリカ!」


 ああ、わかっているよアシェ。


 ナイスアシストだ。


 タラテクトが、振り返る瞬間にアシェが闇魔法で落とし穴を作り出せる。


「ピヨ!」


 全力で鉤爪を放つ。

 巨大なタラテクトの体が揺らぐ。


「ピヨピヨ!!!」


 どんどんいくぞ!!! 


 アシェ! 指示をくれ!


「いけっ! ピリカ!」


 任せろ!

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