第29話 学園での過ごし方
俺たちの生活は一変した。
危険な森の中で、命のやり取りをする厳しさから。
安全な寝床を確保して、訓練ができる施設へと変化した。
「いい、ピリカ。私たちは午前中の間は、一般教養の授業を受けないといけないんだ。だから自由にしていてもいいけど、絶対に学園内の移動だけにしてね」
まだ8歳のアシェは学校で教育が必要になる。
文字を書いたり、読んだりすることも人として生きるために必要なことだ。
まだまだ難しい言葉は、アシェには理解できない。
どんな人生であろうと勉強は必要だ。
それに計算やサモナーとして授業は、歴史や魔物のことを知るために必要なことだ。
毎朝、学校へ向かう前に抱きしめてモフモフしてから授業に向かう。
昼に帰ってきて、一緒にランチを食べてる。
夜に帰ってくると今日の出来事を話してくれるので、俺はそれを聞く。
さて、では俺はアシェがいない時間に何をしているのかと言えば、自由が許されている。
寮から出ることも可能で学園内には、魔物が訓練する施設や、学園と繋がっているダンジョンと言われる場所も存在する。
ダンジョンは、何も不思議スポットという場所ではないそうだ。
魔力が集まりやすい場所に媒体となる魔石をダンジョンコアとして設置した状態で何年も管理しながら、育成させることでダンジョンへと育っていくそうだ。
ダンジョン内は、弱い魔物から危険な魔物までレベル上げを行うための施設になっていて、アシェたちは一年間の一般教養授業を終えてからしか、ダンジョン内に入ることはできない。
だが、魔物だけでの侵入は可能だったりする。
俺はシルを誘ってダンジョンの入り口に迎えば、人工魔物であるアイアンゴーレムが門番をしており、念話で意思疎通ができる。
『アシェの召喚獣ピリカ』
『オリヴィアの召喚獣シル』
『通るがいい』
学園に来て、多くの魔物と知り合うことになり、念話ができる魔物とできない魔物がいることも知った。
いくら同じ召喚獣でも話ができるわけではないようだ。
「ニャオ!」
「ピヨピヨ」
こちらに来てもシルと共に行動できるのはありがたい。
一人でダンジョンに行って苦戦した際に、誰も助けがないっていうのは不安だ。
それに話の通じない魔物たちが何を考えているのかわからないので、襲われた時の対処もどうしていいのかわからない。
だからこそ二人で行動できるのはありがたい。
互いに警戒もできれば、何かあったときに二人なら対処もできる。
学園が用意してくれているダンジョンは、初級、中級、上級あり。
俺たちは初級のゴーレムダンジョンに挑戦中だ。
《神の声》さんに相談したところ、『初級ゴーレムダンジョン危険度☆☆』と教えてもらえた。
つまりは俺たちのランクよりも下ということになる。
逆に『中級ダンジョン危険度☆☆☆☆☆』と急激に強さの上限が上がってしまう。
実際に今のまま挑めば確実に殺される。
だから確実にレベルを上げてから、せめてもう一つ進化した後には中級ダンジョンに挑みたいと思っている。
『ゴーレムは倒すのに苦労するニャ』
『ああ、普通に攻撃をしても倒せないピ』
ゴーレムダンジョンは地下十階まで階層が存在していて、地下に降りるほどに強さを増していく。
一階にいたゴーレムは魔法のゴリ押しでも倒すことができる。
だが、二階に降りてくると防御力が増して、倒すのに苦労した。
そして、現在の俺たちは三階に来ているのだが、シルが重力魔法を使っても足を止めることができなくて、ゆっくりとではあるが、その巨体を近づけてくる。
さらに、重力魔法の荷重で攻撃に強化されてしまうので、重力魔法の相性がゴーレムとは悪い。
『む〜、倒せないニャ!』
『シルは光魔法で援護を頼むピ。目眩しは効かないから、もっと凝縮して相手を貫くような光を生み出せるといいピ』
『わかったニャ。やってみるニャ』
地下三階までのゴーレムは一体ずつしか襲ってこないので、スキルの確認をしながら訓練をするのがとても便利なダンジョンになっている。
様々な材質で作られるゴーレムは、その材質に合わせた攻撃を行うことで倒すことができる。
さらに、魔石を破壊すれば簡単だが、その材質によっては破壊することが難しい場合があるので一回ごとに材質が変わるので、いい勉強になって楽しい。
一階、二階は俺の嘴でも貫くことができた。
だけど、三階に来て一撃では貫くことが難しく。
三度同じ場所を突いて倒すことができた。
「ピヨ」
これまでは魔法を使って戦うことが多かったが、嘴や翼、鉤爪など使える物はなんでも使って敵を倒す術を学んでおきたい。
ヌードデバラットは強かった。
あの爪の斬撃を再現することは難しいが、同じタイプのやつにあったときに肉薄しても倒せるようになりたい。
『そろそろお昼ニャ!』
『ああ、戻るピ』
本当はぶっ続けで戦闘をしたいが、アシェを心配させたくない。
午前中と午後の二階に分けて戦闘の訓練をしながらレベル上げを行う日々は、どこか安全でこのままでいいのか不安にさせられる。
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