第58話 武器を探して
食事を終えて、リザードマンとして膝を折るワッシー。
「グワっ!」
さらに頭を下げる。
『改めて、兄貴。舎弟としてよろしゅうお頼の申します』
『どうしたんだピ? 改まっピ』
『まさか、四日も過ぎてるとは思いませんでした。こんな危ない森や、兄貴がおらんかったら安心して進化もできんかった。それにこれまでも兄貴はワシのためにレベル上げに付き合ってくれて、色々な知識を与えてくれた』
『それは言葉が通じる人の心を持っていたからだピ』
『わかってます! それでも兄貴にはたくさん助けられた。だから、ここに誓いを立てさせてください』
『誓いピ?』
ワッシーは立ち上がって、コップ代わりにしていた窪みのある葉っぱを持ち上げる。俺の前にもそれを置いた。
『兄弟の杯を交わしてください。ワシが弟して、兄貴を支えますよって』
『それは嬉しいピ。ただ、何をするんだピ?』
『特には何もしません。ただ、お互い兄弟として、家族になって裏切らんそんなとこです。今のワシでは兄貴の足元にも及ばん。せやけど、必ず兄貴の役に立って見せます!』
真剣な目をして、杯を持ち上げるワッシーはリザードマンになって迫力が出ている。何よりも荒かった口調が少しだけマシになって、知性を感じるようになっている。
『わかったピ。兄弟になろうピ』
『ありがとうございます! それでは互いに兄弟として』
『兄弟になるっピ』
ワッシーは杯を持ち上げて、俺は置かれた杯に嘴をつけて誓う。
俺に舎弟ではなく、弟分ができた。
あまり意味はないのかもしれないが、危険な森の中で約束をするだけで、信用できる心強い仲間ができたと思えた。
「ピーーーーーーーーーー!(王者の咆哮)」
俺は思いっきり力を込めて鳴き声を上げた。
ビリビリと大気が震えて、近くにいた魔物たちが逃げていくのを感じる。
前回出会ったハエは強かった。
だけど、あんな化け物にも勝てるだけの強さを手に入れなくちゃ、アシェを守れないってことだ。
だから、俺は絶対に強くなる。
♢
兄弟の契りを交わした俺たちは、ワッシーの強化を行うために武器を手に入れたいと考えるようになった。
せっかく、二足歩行で歩いて、武器を装備できるようになったのだから、武器と防具を手に入れて、ワッシーの能力強化は必須だ。
アシェが、召喚してくれて人の街で武器を購入できればいいが人と会話ができない俺はどうやってそれを伝えればいいのかわからない。
それに都合よくアシェが呼んでくれるわけもない。
だから、自分たちでとりあえずの武器を探す必要がある。
「ピヨピヨ」
これはどうだ? と羽で指したのは、少し太めの木の枝だった。
落ちている木は腐っていたりするかもしれないので、その辺にある木の枝を切っては試しているが、なかなかいい感じの木が見つからない。
「グワ」
首を横に振るワッシーに、俺もため息を吐いてしまう「ピー」。
だが、そんな俺たちが出会ったのは、森の植物系モンスターだった。
『あれなんてどうピ?』
なかなか見つからなかったので、俺は木の魔物であるトレントを指して問いかけてみた。
『あれですかい? 確かに枝を切れば、魔物だった分、頑丈そうではありますね』
ワッシーの同意も得たので、俺たちはトレントの生態を観察するようになった。
トレント以外にも植物系の魔物が多い場所では、虫系の魔物や獣系の魔物は食事として捕えられている。
他にも根の深さや、トレントに絡みつく花の魔物などもいるので、花の魔物が蔓を巻きつけている。
分からずに入り込んでしまうと危険な場所であることが観察していればわかってくる。
『ゲテモノ植物園だピ』
『ここは危険やなぁ〜、どないするんですか?』
俺たちが欲しいトレントは、そこそこ大きなトレントであり、その枝を切り取りたい。だが、ここに生殖している植物系の魔物を全て相手にしないで戦う方法を考えないといけない。
自分たちができることを模索して作戦を考えていく。
『なるほどな。その作戦でいきましょう』
『いいのかピ?』
『兄貴がワシのために考えてくれた作戦なんや反対する意味がわからんで』
今回の要は、ワッシーにある。
俺を囮にして、植物系魔物の意識を向けさせる。
「ピヨピヨ!!」
「グワっ!」
俺が合図を送るとワッシーはトレントに向けてひっそりと動き出す。
「ピーーーーーーーーー!!!!!(王者の咆哮)」
植物系魔物の意識が一気にこちらに向けられる。
俺は風の刃を飛ばして、魔物を一気に刈り取りっていく。
ただ、それが正解なのかわからないが、蔓とタネがこちらに襲うように迫る。
「ピヨ!」
根や蔓が俺に迫ってくる。
それを闇の魔法で交わしながら、風の魔法で遠距離攻撃を繰り広げる。
まだだ! こちらにもっと意識を向けさせるんだ。
俺がこちらに意識を向けさせれば向けさせられるほどに、ワッシーがトレントを倒しやすくなる。
「ピーーーーーーーーー!!!!(王者の咆哮)」
もっとだ! もっとかかってこいよ!
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