第107話 サモナービギナーズ大会ルール

 俺は目が覚めてから森に戻ることなく、アシェと共に連携を高めるための訓練に明け暮れることにした。


 進化した体に馴染みたいという思いもあったからだ。


「凄いよ! ピリカ! 凄く強い」


 大はしゃぎのアシェの前で、俺は学園が用意しているダンジョンの中でも上位である。ドラゴンのダンジョンに挑戦をしていた。


 ドラゴンは種族としても強い。


 他の種族とは一線を画す存在だと言われている。


 そんなドラゴンは、俺にとっては師匠の仇に思えて、必要以上に倒す際に力が入ってしまっていた。


「ピリカ、本当に凄いよ。ドラゴンって、力も強いし、体も頑丈だから他の種族よりも圧倒的なアドバンテージを持つんだよ」


 そう、ドラゴンはバランスが良い。


 体は頑丈で、爪や牙は鋭く、ブレスなどの遠距離攻撃も可能。


 全身が凶器だと言える。


 だが、その頑丈な体にダメージを与えられるだけの攻撃力を持っていれば、ただの飛んでいるトカゲだと言える。


「ピヨ!」


 ヒヨコの最終形態は、何かと凄かったです。


 攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、俊敏性。


 全てにおいて、ドラゴンを圧倒している。


「ピヨピヨ!」

「ふふ、ドラゴンを倒している姿は凄いって思うんだけど、このモフモフなボディーと、鳴き声が全然、カッコ良いくないね」


 アシェが俺の行動と声に笑っている。


 自分でも思うが締まりはない。


「だけど、それがピリカの良いところだよね。モフモフが凄く気持ちいいしね」


 アシェは俺に乗ったまま、モフモフなボディーを堪能している。

 風魔法の熟練度も上がったおかげで、アシェの周りに風のバリアを作ることで、風除け温度の調整もできるようになった。


 暑い場所では、水魔法で温度を下げる。

 寒い場所では、風魔法でアシェの周りに寒さを弾き飛ばす空間を作り出すことができるようになった。


 魔法ってなんでもできるんだなって実感してしまう。


 そのためアシェを守りながら、アシェを乗せて戦うことも問題ない。


「ねぇ、ピリカ。今日はこの辺にしておく?」


 そろそろ進化を遂げて、一ヶ月が経とうとしていた。

 つまりは、サモナービギナーズ大会が開かれる予選が開始するということだ。


「ピヨ!」

「ふふ、自信満々だね。だけど、いくら強くなっても油断をしたらダメなんだからね」

「ピヨ!」


 アシェも十歳になって、すっかりお姉さんになったものだ。


 最初にあった時は、本当に子供で守るだけの存在だったけど、今のアシェは賢くお姉さんとして成長を遂げている。


 ♢


 ビギナーズ大会は、ルーキー大会とは随分とルールが変更される。

 

  サモナー大会ルール


 1、サモナーと召喚獣を二体一対として、一対一のマッチ形式で戦います。

 2、大会参加者は、学園側が指定したフィールドで、審判をつけてサモナーバトルを開始します。審判がいないサモナーバトルは公式としては認められません。

 3、開始時間が定められたら速やかにフィールドに移動してください。5分以上の遅刻、欠席した場合は敗北とする。

 4、勝敗はどちらかが敗北を宣言するか、召喚獣が動けなくなったところで敗北です。

 5、サモナーへの攻撃が認められる。

 6、外部の者が乱入したとしても、対処を行うこととする。

 7、外部の者が横からサモナー、もしくは召喚獣に対して攻撃した場合は、厳正なる審判の裁量で反則行為か判断をして勝敗を決する。

 8、それでもサモナーに危険が及ぶ可能性がある戦いである以上、全ての怪我や死傷した場合は、自己責任となり学園は全ての責任を負いかねる場合がある。


 5、サモナーへの攻撃が認められる。

 6、外部の者への対処が追加されて。


 アシェに対して危険度が増して、状況判断が求められる。


 もちろん、外部の者が味方をして、反則をしたと判断された場合は、反則負けが適用されるが、突発的に乱入してしまった際に再試合を行うのではなく、サモナーの判断に委ねるということになっている。


「うん。色々と改訂がされて、サモナーとしての成長を試されている気がするね」

「アシェちゃんも危険になるので、心配です」

「オリヴィアちゃん、ありがとう。だけど、昨年は気を使うことで色々と問題があったからね。今年は思う存分やらせてもらうよ」

「ふふ、そういう勇敢なアシェちゃんが大好きですよ」


 今年もシルとオリヴィアちゃんのペアは参加することなく、アシェと俺のペアをサポートしてくれることになった。


「それにしてもピリカちゃんは見るたびに、モフモフが強くなって最高に可愛いのです」

「そうだよね」


 寒さが強くなる季節になってきて、二人が俺を暖房器具のように抱きしめてくる。

 可愛い女の子たちに抱きしめられるのは悪い気はしないが、何故かシルまで一緒になって近くにいるのはなぜだ?


『寒いのは嫌いにゃ!』

『そうピ?』

『ピリカは暖かくてモフモフにゃ』


 うん。女子三人から好かれる冬場が、俺は大好きだと思ってしまう。


 夏になると暑いから近づくなと言われそうなので、ずっと冬が続いてくれないだろうか? 必要とされていたい。

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