第109話
バギバギは強かった。
植物系の魔物と戦ったことはあるが、ここまで強い相手だとは思わなかった。
だが、俺はバキバキに対応できた。
「アシェちゃん、凄いです!」
「オリヴィアちゃん、ありがとう」
二人が喜んでいる姿を見ていると微笑ましいな。
「それにしてもピリカちゃんはすごく強くてビックリしました!」
「うん。私もだよ。今日は自由に戦っていいって言ってたんだけど、ピリカが自由に戦うとあんなに激しく動くんだね」
二人が褒めてくれて、モフモフボディーを堪能するために抱きしめてくれる。
「ピヨピヨ」
今回の俺たちはビギナークラスでも上位の大会に参加することにした。
それは師匠であるタオ・ヤオ師匠からの指示でもあった。
すでに俺の実力はビギナークラスの上位でも通用すると、タオ師匠のお墨付きをいただいたので参加をしたのだが、一回戦で負けても良いということで、アシェが自由に戦わせてくれた。
そのおかげでバキバキにヒヨコの状態で好きに戦わせてもらえた。
「それにしてもやっぱりビギナークラスは化け物のような凄い魔物が多いですね」
「そうだね。調査をしている段階でも、ピリカが勝てるのか心配だったけど、ピリカが頑張ってくれたからね」
「ピヨ!」
実際、俺もどうなるのか不安だった。
だけど、やってみればカンガルー師匠や、親亀に比べれば恐怖も感じなかった。
「ピヨピヨ」
「うん? お腹が空いたの? そうだね。戦いが終わったらご飯だね。今日はビギナークラスの初勝利だからパァーといこう」
「そうですね。食堂ではなく街の方に行ってみましょう」
「うん! いいね」
アシェたちも相当に嬉しかったのだろうな。
それほどまでに喜んでくれるのは嬉しいぞ。
『なんだかますます化け物になったにゃ』
『シル! 酷くないピ?』
『事実にゃ。それにいいことにゃ。この世界は化け物ばかりにゃ。アシェちゃんもオリヴィアも守るにゃ』
『おう! そうだっピ!』
俺たちは街に出て夕食を楽しむことにした。
第二回戦が勝てるのかわからないが、次も勝ために精力をつけないとな。
♢
《side KFC団》
俺たちは血の滲むような努力を重ねてきた。
死の森に入って、ムカデに全身を食われかけ、溶岩獣に体を溶かされそうになり、千羽ハエに身体中の皮膚を食い破られようとも生還を果たした。
「おう、いい面構えになったじゃねぇか」
三人の召喚獣が進化を果たし、目の前に大鯨に乗ったシルバー教官。
もしもここが死の森と呼ばれる場所でなければ、我々は何度死んでいたのかわからない。
「ここに生きる食事たちに感謝を」
「くくく、さすがな秘密コックどもだ。死の森に生きる者たちを食らって、貴様ら自身も回復と進化を遂げたようだな」
「はっ!?」
秘密コックF、秘密コックCの顔も晴々としている。
「だが、貴様らの目的だった魔黒鳥は消失した」
「なっ!? なんですと!!!!!!」
「どうやら向こうも進化を遂げたようで、ブラックヒヨコから、ゴールデンヒヨコに進化を遂げたようだ」
「なっ!?」
驚きを禁じ得ない。
魔黒鳥というだけでも、かなりのレア進化も良いところだ。
それを上回る進化を遂げたということは、食材としてレア度が上昇して、物凄いことになっているんじゃないか!!?
「はてさて、貴様らに最終試験だ。私に一撃を入れてみろ!」
「なっ!?」
「えっ?
「嘘だろ?!」
「なんだ? 三人もいるのに無理なのか?」
やってやる。今日までの恨みを全部つけてやるんだ。
「ジュバクスネーク!」
「ハガネカラス!」
「ジシン!」
俺たちは進化した魔物たちを呼び出して、大鯨に相対する。
「殺してやるよ! シルバー教官!」
「おう、威勢がいいな!」
俺たちは戦った! あの伝説の大鯨を相手に、蛇が、鴉が、土竜が大鯨に挑んだ。
それは汗と、涙と、血潮と、ヨダレまみれの死闘であった。
「ゼェゼェゼェ! どんなもんじゃい!」
「三人がかりでやっとカスる程度の一撃で何をいうとるんじゃ。大鯨と言われるほどに巨大な体をしておるのに当てることもできんのか」
「ぐっ!」
「まぁええじゃろ。合格じゃ」
俺たちはやったんだ! やり遂げたんだ!
あの死の森から生還したんだ。
「あっ、もうそれだけ強くなったのだ。帰りは自分たちでなんとかせい」
「はぁ?!」
本当に俺たちを置いて飛び立っていくシルバー教官。
その巨大な大鯨の腹を見ながら俺たちは呆然と見送ることしかできなかった。
「絶対に生きて帰ってやるからな!!! 覚えていろよ!! シルバーのクソやろーーー!!!」
それから俺たちは必死に死の森で協力して生き残って王都へ帰還した。
王都へ帰還した俺たちは黄金のヒヨコを見つけて飛びかかった。
「ピヨ? ピーーーーー!!!」
それは一瞬の出来事だった。気づいた時には俺たち三人は見知らぬ土地に、それはヒヨコによって再び訳のわからない場所に飛ばされたからであった。
「なんでだーーーーーーー!!!! てか、ヒヨコが強すぎるだろ?!!!」
俺たちはどこともわからない場所から、王都を目指して生き残る戦いが始まった。
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