第62話 久しぶりの召喚
ワッシーを見送った瞬間に魔法陣が出現する。
まだ、一ヶ月ほどしか経っていないから、アシェに何かあったのだろうか? 俺はワッシーに全てを託して、魔法陣の中に入った。
「ピリカ!!!!」
入った瞬間に、アシェに抱きしめられる。
「ピヨ?」
「ふふ、ごめんね。まだ一ヶ月ぐらいなんだけど、我慢ができなくなっちゃった」
「ピヨピヨ」
ヤレヤレ、どうやらアシェに何かあったわけではなさそうだ。
ただ、周りを見渡して様子がいつもと違うことに首を傾げる。
「アシェさん。準備はできましたか?」
「はい。ピリカ、ごめんね。授業で模擬戦をしないといけないの。協力してくれる?」
「ピヨ!」
もちろんだ。俺はアシェの召喚獣だからな。
そういう呼び出しもサモナーと召喚獣では当たり前のことだろ。
「ありがとう。それじゃ戦おうか」
誰と戦うのかと思えば、決勝戦で戦ったヒューイとローのコンビだった。
「あの時は互いに、一日三度の戦いを終えてあの場に立った。疲弊状態でできる最大限のパフォーマンスを発揮したとは思っているが、今回は万全の体制で全力を出せることを嬉しく思う」
ヒューイ君が何やらカッコいいことを言っている。
だけど、俺は森で戦闘をしながら、ワッシーと川を進んでいたので、疲労度合いで言えば、学園で戦った時よりも消耗している。
だけど、なぜだろうか? あれから数ヶ月経って、あの時は脅威に感じた二人が一回り小さく見える。
「ピリカ? 大丈夫。疲れてる?」
呆然としていた俺を見て、アシェが心配そうな声をかけてくれる。
「ピヨ! ピヨピヨ」
大丈夫だ。問題ない。
俺たちは前回と同じコンクリートの障害がないフィールドで向き合う。
「それでは模擬戦を行います。ヒューイ・ローコンビ対アシェ・ピリカコンビ。戦闘開始」
開始を合図をされてから、周りを見れば、アシェのクラスメイトたちが見学をしているようだ。
あの時と同じで幻影を使って、ヒューイ君たちが近づいてくる。
闇と毒は使うと危険なので、闇はアシェに任せよう。
俺は体術と風、水だけで対応する。
「行くよ」
「ピヨ」
アシェの声に頷いて、俺は走り出した。
援護はアシェに任せて思いっきりやってみる。
「ピリカ?」
突っ込んでいく俺にアシェが驚いた声を出す。
ヒューイ君とローも俺の行動を警戒しているが、そんなことは関係ない。
「ロー!」
「キューーー!!!」
幻影を使って撹乱するのがローの手法だとわかっている。
だから、先手必勝だ。
「ピーーーーー!!!(王者の咆哮)」
「なっ!」
「キュッ!」
ヒューイ君とローが一瞬だけ怯んだ。
それで十分だ。
俺はその勢いのままローに飛び蹴りで吹き飛ばした。
「キュ〜〜」
壁に激突したローがダメージを負って苦しそうな声を出す。
「くっ! ファイアーボール」
隣に立っている俺にヒューイ君がファイアーボールを放つが遅い。
ウォーターウォールで防いで、火と水によって水蒸気を発生させている間に、俺はローへ近づいて鉤爪をローの首筋に当てる。
「しょっ、勝負あり!!!」
審判をしてくれている先生の声が聞こえて、俺は鉤爪をおろした。
どうやら森に戻って格闘戦を訓練したことは良かったようだ。
ローのように魔法に特化した相手なら、こちらが魔法で戦うよりも接近戦を仕掛けたほうが倒すのが早い。
俺は倒れたローを咥えて背中に乗せる。
そのままヒューイ君の元へ連れて行ってあげた。
最初の一撃しか与えていないので、大きな怪我はない。
「あっ、ありがとう」
「キュー」
「うん。よくやったぞ」
俺の行動に観客であるクラスメイトからは拍手を受けるが、なぜかアシェの頬は膨れていた。
「ピリカ! 一人で戦うなんてダメじゃない」
「ピヨ?」
「私たちはパートナーなんだよ。一緒に戦って欲しかったな。でも、凄いね。森に帰っている間にあんな戦い方もできるようになったの?」
「ピヨ!」
ああ、そうなんだ。
それにワッシーっていう弟分もできたんだぞ。
「ふふ、モフモフな胸を張っているってことは頑張っていたんだね。ごめんね。怒って、少し置いていたからような気がしたんだ。私もピリカのことを知らないのにいきなり呼んで戦わせてごめんね。すっごくカッコよかったよ」
アシェが俺を褒めて抱きしめてくれる。
初めて会ってから2年ぐらいの時が流れて、アシェは少しずつ大きくなってきている。前にアシェが言っていた旅をするというのが後2年ぐらいあるなら、それまでに俺は絶対に強くならなくちゃならない。
「今日は一緒にいてくれるんでしょ? 一緒にご飯を食べに行こう」
「ピヨ!」
試合を終えた俺たちはオリヴィアちゃんとシル、他にもルーキー大会で戦った子供達と食事をすることになった。
最近のアシェは、みんなと仲良くなってリーダー的な役割をしているそうだ。
そして、決勝大会の試合は納得できないものだったという話になったそうだ。
そこで、非公式ではあるが模擬戦をすることになり、今回の試合が組まれた。
それならもっと事前に呼んで欲しかったな。
ジト目でアシェを見ると。
「あんまりピリカの邪魔をしたくなかったんだよ。負けてもいいって思っていたしね」
アシェはそこまで勝敗に固執はしていなかったんだろうな。
その日は、久しぶりにアシェに抱きしめられて眠ることになった。
この穏やかな時間を守るために、絶対に俺は強くなる。
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あとがき
どうも作者のイコです。
カクヨムコンテスト9の読者選考も8日までです。
いよいよ残り三日になりました。
この話も、プロ部門に参加しているので、まだ☆レビューを押されていない方は、最後の後押しに応援よろしくお願いします!
それと短編の宣伝を見て読んで頂きありがとうございます♪
《オッサンは、ギャルに飯を作ってやる》
こちらの方もよろしくお願いします!
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