第61話 仲間探し

 森の一部を吹き飛ばした闇の力を冷静になって見てみると、あまりにもとんでもない力を発揮したことに自分でも驚いてしまう。


 変な魔物がよって来ないように、ワッシーを連れて俺たちはその場を離れた。


 離れた場所では、水場があることで疲れていないのに、呆然としながら座り込んだ。あの力は、本当に自分が生み出した力なのだろうか?


「グワっ!」


 声をかけられてワッシーを見れば、葉っぱで作ったコップに水を入れて渡してくれる。羽根で受け取ってグイッと嘴から流し込む。


「ピー」


 息を吐いて気持ちを落ち着ける。


 ワッシーが側にいてくれるから、恥ずかしい姿を見せないでおこうと理性が働いている。もしも、一人なら自分のやっちまったことに悶え、苦しんだことだろう。


「ピヨピヨ」


『ありがとうピ。落ち着いたっピ』

『兄貴……。あの力は兄貴の力なんだよな?』

『そうピ。だけど、俺も初めて使ったっピ』

『とんでもねぇな』


 ワッシーが振り返るが、もう、その場を離れているので荒野になった場所を見ることはない。だけど、このまま自分が暴走した時のことを考えた時、ワッシー1人に負担をかけることはしたくない。


『ワッシー』

『なんだ? 兄貴』

『ワッシーは仲間と協力することで強くなる種族だピ』

『リザードマンと協力?』

『ああ、だからワッシーの仲間を探そうっピ』

『ワイの仲間? ワイは兄貴がいれば』

『前にも言ったっピ。俺は召喚されたこの場からいなくなってしまうっピ。その時にワッシーも一緒ならいいが、そうはならないっピ。それなら俺がいる間にワッシーの仲間を見つけようっピ』


 それだけじゃない。

 俺の力が暴走した時に、ワッシーに俺を殺してもらうかもしれない。

 仲間がいてくれれば、それも確実になるだろう。


『……わかった。それが兄貴の判断ならワイは従う』

『ありがとうっピ』


 それからの俺たちは川に沿って、歩みを進め、休息を取るたびに鋭い石を見つけては、蔦を使って石をくくりつけて、簡易の槍を作った。

 持ち手はトレントの枝から取った物を持ちやすいように削って、ワッシーが作り出したものだ。


 荒削りでお世辞にもいい武器とは言えないが、突き刺す石を替えることで上手く消耗を減らしてワッシーは敵を倒している。


『使い勝手はどうピ?』

『トレントの枝はいい感じや。せやけど、やっぱり武器としてはイマイチとしか言えんわ』


 それは仕方ないだろう。

 それでも武器を持ったワッシーは進化してすぐよりも確実に強くなっている。

 

 ちゃんとした武器を持って、防具をつけられるようになれば、もっと強くなれるかもしれないな。


『兄貴、あれ』


 数日、魔物を倒しながら川沿いを歩いた効果はあったようだ。

 一体のリザードマンを見つけることができた。


 だが、いきなりリザードマンに仲間になろうと言って仲間になれるのか? リザードマンの社会がわからないので、どうすればいいのか?


『ちょっと言ってくるわ』

『大丈夫ピ?』

『わからへん。わからへんけど、当たって砕けろや。それにあればメスや』

『そうなのかピ?』

『ガハハっハ、ワイもどうやらリザードマンなんやろな違いがわかるんわ。逆にワイもヒヨコのオスメスは判断できんわ』

『それはそうピね』


 俺も他のヒヨコと出会った時にオスなのか、メスなのかわからないと思うけどな。


 リザードマンにはそれがわかるのか?


 リザードマンのメスは、人間の女性みたいな特徴的な体の部位があるわけではない。なのによくわかるものだ。


 俺はワッシーがどうやって声をかけるのか見守ることにした。



《sideワッシー》


 水浴びをしていたしなやかな体をしたリザードマンメスに近づいていく。

 

 なんなんやろな。種族は違うが、ムラムラとするのは一緒やわ。


 ワイはこいつを可愛いと思っとる。

 兄貴に仲間を探そうと言われた時に、寂しいと思っとたった。

 せやけど、このリザードマンのメスを見た時に胸がときめいた。


『よう、姉ちゃん。ちょっとええか?』

『なっ! なんですかあなた!』

『ワイは、ワッシー。仲間を探しとる。あんたは群れで行動しとるんか?』

『はぐれリザードマンということですか? 確かに私は家族と暮らしていますが』


 どうやら兄貴の読みは当たったようやな。

 リザードマンは群れで暮らしていて、ワイがそこの長になる。

 そうすることで兄貴の力になれる。


 多分、兄貴は魔王や。


 あの力は異常やった。


 ワイ一人では力不足で、配下を欲しいと思ってはるんや。

 なら、ワイがすることは兄貴の力になるために兵隊を見つけることや。


『頼むわ。ワイをあんたの家族に会わしてはくれんか? 仲間が欲しいんや』

『……わかりました。私の父なら、あなたよりも強いので、仲間になりたいのなら受け入れると思います』


 リザードマンの進化系がおるんかもしれんな。

 兄貴なら、勝てるかもしれんけど、ワイ一人で大丈夫か? チラリとワイは兄貴に視線を向けるが、兄貴の姿は消えとった。


 もしかしてワイは見捨てられたんか?


 あっいや、兄貴は言うとった。


 召喚された時は突然姿を消すこともある。

 だけど、心配するなって。


 ワイはまだまだ青いのぅ〜兄貴を信じきれとらん。


 兄貴には兄貴の用事がある。

 なら、ワイはワイの仕事をするだけや。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 昨日は宣伝を見て読んで頂きありがとうございます♪


 カクヨムコンテスト9短編


 現代ドラマ1位

 総合ランキング3位


 になることが出来ました!

 本当にありがとうございます^ ^


《オッサンは、ギャルに飯を作ってやる》


 もし読んでないなぁ〜という方は短編なのでよければ目を通してやってください!


 短いので、暇つぶしに読んでいただければ嬉しいです。よろしくお願いします!

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