第12話 蟻と地龍の戦い

 地龍は地面に叩き落とされてしまったが、すぐに体を丸くして蟻たちからの攻撃をその硬い甲殻で全て受け止めて体を起こした。


 十メートルほどある地龍と、二メートルぐらいの真っ赤な蟻の軍団が相対するが、地龍の方は全く相手にしていない。

 むしろ、真っ赤な蟻の一匹に食らいついて、美味しそうに食べ始めた。


 思ったよりも美味しいと判断したのか、地龍は続け様に真っ赤な蟻を襲うようになり、真っ赤な蟻の方が、警戒して距離を取るようになった。


 蟻たちの甲殻も柔らかいわけではない。

 だけど、地龍の顎に比べれば、天と地ほどの差が生まれてしまう。


「ピヨピヨ」

 

 レベルの差があるのか、種族の差なのか圧倒的すぎて勝負にすらなっていない。

 銀猫は興味を無くしたのか、見るのをやめて、俺の背中にもたれるように毛繕いを始めてしまった。


「ニャ〜」


 あくびまでして寝てしまう。


 確かに蟻塚は遠いので、安全だと思うが興味がなさすぎないだろうか? 

 俺は地龍と蟻の戦いが結構興味深い。

 それにもしも蟻に反撃の手立てがあるなら、地龍が弱ったところを狙えないだろうか? 


 進展を眺めていると、真っ赤な蟻の進化系のような蟻が現れた。

 真っ赤な鎧を着た武者のような蟻は、6本の腕が刀のように変化している。


 鎧武者蟻は地龍に近づくのではなく、斬撃を飛ばして地龍に攻撃を行った。


 その攻撃は甲殻をしっかりと傷つけて、ダメージを通している。


「ピヨ〜」


 一匹しかいないのがもったいない。

 真っ赤な蟻が援護するように地龍を囲んで、怪獣を討伐する蟻たちという構図が出来上がる。


 鎧武者蟻は相当強い。


 もしも潜入した時に出会っていたら、ヤバいレベルだ。


 斬撃を飛ばす鎧武者蟻が、中心となって地龍へ遠距離から攻撃を仕掛けていく。

 地龍も、鎧武者蟻を敵として認めたようで、他の真っ赤蟻を無視して近づこうとする。


 だが、今度はジャンイアンアントや、それよりも大きなジャンボアントが現れて体の大きな蟻たちが、体を張って地龍の邪魔を始めていく。


 総力戦で地龍討伐に蟻たちが全力で争い始める。


 地団駄を踏むように地面を揺らせる地龍に対して、鎧武者蟻が確実に一撃一撃を当てながら、他の蟻たちが盾となって鎧武者蟻を守っている。


 このままなら地龍を倒せそうな雰囲気を出しているが、地龍が動きを止めて、体が光り始める。


 岩のようだった背鰭が立ち上がって太陽の光を吸収しているように見える。

 鎧武者蟻が攻撃するが、ダメージを受けても地龍は気にしていない。

 光輝く背鰭に蟻たちが群がっていくが、相当量の熱を生み出しているのか蟻が溶けた。


「ピヨ!」


 あれはどうなってんるんだ? 次第に光が口の方に集まり出して高出力のエネルギーが地龍から放たれた。


 まるでレーザー光線のような一撃は蟻たちを全て薙ぎ払って蟻塚の半分を吹き飛ばした。


「ピーーーー!!!!」


 あまりの衝撃に叫んでしまう。


「ニャオ!!!」


 俺の叫びに驚いた銀猫も飛び起きた。


『あれはなんなのピ!』


 俺の声に銀猫が顔をあげて、半分吹き飛んだ蟻塚を見る。


『ブレスニャ』

『ブレスピ?』

『そうニャ! 強いドラゴン族は通常攻撃でブレスを打てるニャ』


 マジかよ! あれが通常攻撃とか、ヤバすぎだろ。

 鎧武者蟻以外のアントたちが全て倒されて、地龍と一対一になる。


 そこに今まで一番大きな蟻が現れた。


『女王の登場ニャ』

『あれが女王ピ!』


 あの蟻塚のどこに入っていたのかと思うぐらいデカい!

 地龍と大きさだけならタメをはれるぞ。


『ここからが本番ニャ』


 俺たちもあれぐらい大きくなるのか? 火の鳥カーチャンは確かにあいつらよりも大きかったように思うが、完全に化け物同士が戦っているようにしか見えない。


 女王蟻の方が少し大きくて、地龍を正面から抑えつけるように前足で殴りつける。

 それに対して、地龍が反撃をしようとするが、鎧武者蟻が邪魔をして攻撃を止める。


 ここにきて地龍が追い込まれていく。

 先ほどみたいにブレスを放とうとしても、女王蟻が攻撃を強める。


 どうやらブレスを打つ際に力を溜める時間が必要なようだ。


『ピヨ、今ならどっちも倒せるんじゃないピ?』

『何を言っているニャ?』


 俺は強くなる必要がある。

 アシェのためにも、そして自分自身がいつか進化して空の王になるために。


『わかったニャ。協力してやるニャ。危なくなったら逃げるニャ』

『いいのかピ?』

『絶対に倒すニャ』


 銀猫に協力してもらって、俺は地龍と女王蟻が戦う蟻塚へと向かった。

 

 近づけば近づくほどに地響きがして、地面が揺れる。

 巨大な二大怪物の対決を近くで見える距離までやってきた


『まずは、あの鎧武者蟻を倒すぞ』

『鎧武者蟻って何よ。ナイトアントのこと?』


 銀猫に指摘されて、俺は鎧武者蟻を鑑定した。


♢♢♢♢♢


種族:ナイトアント

状態:臨戦状態

HP :80/1000

MP :100/300

攻撃力:248

防御力:336

魔法力:120

素早さ:300


耐性スキル:斬撃耐性、物理耐性

通常スキル:斬撃レベルMAX、

特殊スキル:飛ぶ斬撃、一刀両断、斬撃強化


♢♢♢♢


 蟻の中でも特殊な個体に入る鎧武者蟻は、どうやら俺と同じレベルの進化魔物だと判断できる。その攻撃が通じているということは地龍にも俺たちの攻撃は通じることが判明した。



 やれる! やるぞ!

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