第95話 海で荒ぶるヒヨコ
親亀が産卵を終えて、亀の子たちが浜辺を占拠した。
昔テレビで、海亀の産卵を見たことがあるが、あんな感動的な話じゃない。
大量の巨大な亀が、浜辺を占拠して、他の魔物をどんどん薙ぎ倒していく光景はシュールだ。
「ピリカ、この間はごめんね。もう怪我は大丈夫?」
「ピヨ!」
「あの亀たちは倒せそう?」
「ピヨ!」
ああ、任せてくれ。中には強そうなやつもいるが、1匹1匹はたいしたことはない。親亀にやられた恨みを返してやるよ。
「うん。なら行こう。数は多いけど、私たちならやれる!」
「ピヨピヨ!」
おう、今度はアシェに悲しい思いはさせないからな。
俺は進化するヒヨコの姿で、アシェを背中に乗せて浜辺に躍り出る。
他の魔物を薙ぎ倒して、そんな大量の亀たちに俺はヒヨコキックをお見舞いする。
子亀でも甲羅は硬いな!
「ピーーーーー!!!(王者の咆哮)」
海を向かいながら、大量に発生した子亀たちの意識をこちらに向けさせる。
確かに大量に集まっている亀たちは強いが、お前たちは怖くない!
大量の亀たちの口に魔力が溜まっていく。
親亀に傷をつけられた攻撃だ。
威力も速度もお前たちでは相手にならない。
「ピリカ!」
「ピヨ!」
アシェもわかっているじゃないか。
二人かかりで巨大なブラックホールを作り出す。
親亀にも通じた俺たちの合体魔法だ。
子亀たちの魔力砲を全て吸収して、ダメージを通さない。
親亀は俺たちのブラックホールを破壊するほど強力な一撃を一体で放つが10匹以上の子亀の一撃なら、アシェと二人で十分に止められる。
「よし! ピリカ! イケー!!!」
「ピヨ!」
アシェの許しが出たので、俺は進化して、魔黒鳥へ進化する。
「ピーーーーー!!!(王者の咆哮)」
先ほどのヒヨコの時とは違うぞ。
アシェを危険に晒してしてしまった自分が恥ずかしい。
だから、悪いがお前たちには八つ当たりだ。
その上、経験値の糧になってもらうぞ!
一体倒してわかった。
こいつらは経験値が多い。
一体一体として換算するよりも集合体として換算されているようだ。
子亀の甲羅を貫き、魔法で倒していく。
大量に海へ向かって進んでいく子亀たちの歩みを全て止めることはできないが、出来るだけ大量に倒してやる。
「それにしても凄い数だよね。聞いてはいたけど、子亀だけで数万はいるんだって。それは師匠も数を減らして来いっていうよ」
「ピーヨ」
俺もそう思う。
俺たち以外にもたくさんの子亀討伐に来ている人たちがいるが一向に減る気配がない。それに倒した後の子亀の処理ってどうするだろう? そんなことを考える前に倒せって話だけどな。
「ピリカ、体力が続く限りでいいからね」
「ピヨ」
ああ、だけど、良い経験値の狩場であり、子亀フィーバーをしている状態だから、得られるだけ得たい。
無理はしないが、経験値を稼いでレベルアップできるだけしておきたい。
次の進化まではかなりの経験値がいるからな。
♢
二時間近く進化して、空を飛んでいると流石に疲れた。
それでも浜辺には大量の子亀が今でも溢れている。
しかも、倒したと思っていた子亀は、他の子亀によって埋め尽くされて姿が見えなくなっていく。
食べられているのか、ただただ流されていっているのかわからないが、処理も何も今はできない状態だ。
「なんだか凄いね」
アシェに声をかけられて浜辺を見下ろしている俺たちは、タオ師匠の家に戻ってきている。
あれだけ大量の子亀が海に解き放たれて、海の中で生存競争に明け暮れていく。
そして、勝ち残った数頭だけが、親亀になってこの地に戻って来るのだ。
「ピヨ」
「なんだろうね。凄く大変なことが起きているってわかるんだけど、ちょっと感動しちゃうんだ。子亀を倒せばピリカはレベルアップができる。そして、海に中でまた戦うんだと思うんだけど、それでも強く生きようとする姿にね」
この世界は人間よりも獣の方が数が多い。
それも一体一体は大きく成長して、強さも異常に強くなる。
人など踏み潰されてしまうような存在がたくさん存在する。
その中で生き残る生存競争は熾烈であり、蠢くように溢れている子亀も大量にいるように見えても生き残ることが難しい世界なのだ。
「ピリカ、頑張ろうね。私たちはこの凄い世界で生き残って強くならなくちゃいけないんだ」
「ピヨ!」
ああ、俺はアシェを守りながら、必ず強くなってみせるよ。
「さぁ、休んだら夜にもう一度行くよ」
「ピヨピヨ!」
任せておけって、必ず奴らを倒してやるぞ!
夜になると海に到達した子亀が現れ始めて、砂浜から少しずつ子亀の姿が消えつつあった。残された子亀を討伐して、さらに二時間の経験値稼ぎを終わらせた。
帰ってきた頃にはすっかり真っ暗になっていて、食事をして風呂に入っている間も疲労から眠気が襲ってきて、意識が飛びそうになる。
それはアシェも同じ様子で、二人で風呂上がりはそのまま眠りに落ちた。
目が覚めるとシルとオリヴィアちゃんが到着していた様子で、俺たちを覗き込んでいた。
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