第100話 お使いミッション 前半

 夏休み最後の大冒険をいうわけで、俺たちはタオ師匠に出された課題である山に登って、頂上にある月見草と呼ばれる草を調達するために、タオ師匠の屋敷をでた。

 期限は三日、アシェたちの足では時間がかかりすぎてしまう。


「ピリカ、二人乗っても大丈夫?」

「ピヨ!」

「申し訳ありません。シルは背中に乗せるというよりもおんぶしてもう形になるので、戦闘ができなくなってしまうのです」


 俺の広くなった背中に、アシェとオリヴィアちゃんを乗せて、シルが警戒しながら道を進んでいく。


 俺もシルも首輪をつけられて、アシェやオリヴィアちゃんから与えられる魔力には制限がある。だからこそ、いざという時まで俺を温存しておく意味でも、この布陣が選んだ。


『本当に大丈夫にゃ?』

『大丈夫ピ。二人ぐらいなら軽いピ』

『それなら、オリヴィアをよろしくにゃ』

『魔物は頼むピ』


 本当は俺が戦いたいが、俺の方が二人を乗せるのに適した体をしているなら、効率が良い方を選んだ方がいいだろう。


 ヤオ領は、王都に比べると海辺の温暖の気候で、風は強いが二人を乗せて走っても気持ち良い。


「アシェちゃん見てください。トビトリの群れですよ」

「凄いね! 向こうにはマルジロルの親子だ!」


 二人は俺の背中の上で、魔物を見て興奮している。

 俺が威圧を発していることもあり、近づいてくる魔物はいないが、それでもたまにバカな魔物が接近すれば、シルが排除している。


 最近は一緒に冒険にいくことも無くなったが、それでも腕は鈍っていないようだな。


 随分と差ができたように思っていたが、シルもオリヴィアちゃんと成長していることが戦闘から伝わってくる。


「ピリカちゃんは、シルの戦いが気になるのですね」

「ピリカは戦闘バカだからね。見た目はこんなにもモフモフで可愛いのに」

「本当ですわ! このモフモフに何度抱きついて癒されたいと思ったことか」


 二人の美少女が背中にモフモフを揉んでくるのはやめてほしい。

 感覚が鈍い場所ではあるが、モフモフされているとこそばく感じてしまう。


「だけど、本当にシルちゃんは綺麗だよね」

「ふふ、ありがとうございます。ピリカちゃんがどんどん強くなるから、シルも負けないために必死に訓練をしているのですよ。私が体が弱くてなかなか一緒に冒険は行けませんが、一人でダンジョンに向かって修行をしているようです。自分に合った戦い方なども研究しているみたいですよ」


 オリヴィアちゃんに言われて観察をしていれば、確かにしなやかで柔らかい戦い方はそのままだが、魔法と、爪を使った攻撃の連携がスムーズになっている。


「そろそろだね」


 二人を乗せたまま二時間ほど走り続けている。

 安全面を考えてそこまでスピードを出せないが、馬車で移動するよりも早く移動できたと思う。


 山の麓が見えてきたので、俺たちは一旦休憩を取ることにした。


「水と私たちの食料だけで本当に良かったの?」

「ピヨ!」


 そう、俺とシルは現地調達するから、今回は食料の荷物はいらないと伝えてある。

 そうでなければ、場所を用意して、食料を積む作業から始めなければいけなかった。


 だが、俺たちが食料と飲み物を現地で調達できれば、荷物を積む手間も馬車を使うこともないので、時短ができるというわけだ。


「それじゃオリヴィアちゃんご飯にしようか」

「はい!」


 二人の護衛をシルに任せて、俺は狩りへと赴く。


 海辺から離れて山の方にやってきたので、魔物の生態系も変わってどんな魔物がいるのかわからない。

 虫系の魔物がいれば一番良いのだが、シルが食べることも考えると、獣の肉か、魚の肉が本当はいい。


 俺は当たりを走り回って山から海へと流れる川を見つけた。


「ピヨ!」


 ふむ。ここなら魚が居そうだな。


 川を覗き込むととても綺麗な皮にどデカい魚が泳いでいた。


「ピヨ!!!」


 泳いでいた魚が飛び上がると、美しい白と赤の模様をした鯉だった。


 どうやら川の主なのだろう。他の川魚を食らってここまで大きくなったか? 鯉はどこでも生きていけるほど生命力が強いと言われている。

 

 手強い相手だがやれる?


『アングリーカープ危険度☆☆☆☆』


 怒りの鯉? 俺から見て危険度は結構高い。


 だが、赤い荒野にいたサンドワームぐらいってことだ。

 進化が出来れば倒せない相手じゃない。


 だが、タオ師匠に禁止されているから、ここはなくても倒せる方法を考えるしかないな。


 単純に進化をすれば、飛行ができて全ての能力が高くなる。


 だが、進化する前の俺自身が底上げをすれば、魔黒鳥になった際に、さらに強い力が発揮できるということだ。


「ピーーーーーーーーー!!!!(王者の咆哮)」


 俺は川の中にいる鯉にも届くように大きな声で鳴き声をあげて威嚇した。


 鯉の瞳が怒りに満ちて、俺を睨みつけた。


 どうやら向こうもやる気はあるようだ。


「ピヨ!」


 いいぜやってやんよ。亀の時もそうだったが、久しぶりに暴れてやるよ!


 俺はアシェたちから離れたことで戦闘をしたい気持ちを解放して、戦いを挑んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


どうも作者のイコです。


祝100話。


閑話を挟まないで、100話を達成しました。

文字数も20万時を超えて、星レビューも1098になりました。


これも全て読んでいただける読者様のおかげでありがとうございます!!!


そこで、何かSSを書きたいですが、お題をいただけると幸いです。


こんなSSが読みたいなどがあればコメントにてお願いします(๑>◡<๑)。

いつも読んでいただきありがとうございます!

今後もよろしくお願いします(๑>◡<๑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る