第41話 進化の兆しと不穏な気配

《side KFC団》


 二度の失敗で我々の信用はガタ落ちになった。

 それもこれもあのヒヨコを手に入れられなかったことが原因だ。


 絶対にいつかヒヨコは調理してやる。


「秘密コックK、どうしたんだ? そんな真剣な顔で」

「ああ、俺たちのコックランキングを知っているか?

「それはもちろんだろ。5000人の構成人中4778位の秘密コックKだろ。4884位の秘密コックF。そして、4533位の秘密コックCの俺だな」

「ハァー」


 そう、かつては5000人の構成員をもつKFC団最高幹部に手が届きそうだった501位にまで上り詰めた秘密コックKともあろう私が4778位とは嘆かわしい。


 KFC団の5000位番から転落すれば、下層組織へ転落してしまう。


 この状況を打破しなければならない。


「まずは、ヒヨコのことは今は何もしない。その上でコックとしてイニシャルS様に料理を認めてもらうことが先決だ」

「そうだな。このままKJGになんて落ちたらお笑い種だ」

「いっちょやりますか?」


 我々は、取り寄せられる材料で料理人としての腕をフルに使って、イニシャルS様に料理を献上しまくった。


 神の舌を持つと言われるイニシャルS様は、最も好きな料理を鳥料理と公言されておられるが、我々はありとあらゆる食事を使って美味い物を作っては献上するという日々を送った。


 その甲斐あってか、正月の失敗を取り戻すように我々のランキングは上昇していった。


「うむ。ここまでくれば一先ず安心であろうな」

「三人で力を合わせれば、ここまでのしあがれるのだな」

「俺が4533位で一番上だったのに……」


 秘密コックK 983位。

 秘密コックF1211位。

 秘密コックC1528位。


 本来の実力を発揮しながら、互いにサポートすることで、我々のコックランキングは急上昇を果たした。


「うむ。これならば問題なくヒヨコに取り掛かれるな」

「まだやるのか? 今のまま使える食材で勝負していれば、いずれ幹部になれるのではないか?」

「自分ばっかり、自分ばっかり」


 ダメだ。ダメなんだ。


 幹部になるためには他のコックを圧倒するメイン料理を提供する必要がある。


 それは己の技術と相手のことを思いやる料理でなければならない。

 そうすることで他のコックたちを圧倒できる究極の料理を作れるというものだ。


「おい! 新しい情報を手に入れたぞ!」


 私が作戦を考えていると、秘密コックCが情報を仕入れてきた。


「なんだ? もう大抵の情報では動けないぞ」


 秘密コックFは呆れた様子で秘密コックCを見るが、私はどんな情報なのか期待を膨らませていた。


「それがなんと進化の兆しが見えたそうだ」

「何っ!」

「それは本当か?」


 魔物にはどうしても動けなくなる瞬間が訪れる。

 それは瀕死に弱らせた時と、進化を行う時だ。


 進化を行うためには大量のエネルギーを消費するため、体の免疫力は著しく衰え、変化に伴って冬眠するように魔物たちは眠りにつくのだ。


「これは本当にチャンスだ。進化が始まり、サモナーが部屋を離れた時。鈴を首輪につけて連れ去れば、こっちの物だ。殺してしまえばサモナーとの契約は解除されて、肉は定着する」

「おいおい、俺たちにもチャンスが巡ってきたんじゃないのか?」

「待て!」


 秘密コックCと秘密コックFが盛り上がっているところで、私はストップをかける。


「なんだよ。盛り上がっているところに?」

「そうだ。進化のタイミングを見極め、進化を始めたところで寮に侵入してヒヨコを奪取すれば目的は達成だ」


 二人の盛り上がりは私にも理解できる。


 だが、そんなに簡単にことが運ぶだろうか? これまでも事前準備をしたが、失敗に終わっている。

 だからこそ、念には念を入れて準備をしなければならない。


「だからこそ、ヒヨコとサモナー。それに学園の状況をもっと細かく調べるんだ。学園長の動きや教師。さらに寮を管理している者など。ヒヨコ以外のところにも目を向けるんだ」

「おお! 秘密コックKがまともなことを言っているぞ」

「だな。今回はそれだけ本気だということだろう」


 二人が俺の熱量に圧倒されているようだが、これまでの失敗を思い出さなければならない。


 今度失敗すれば3度目だ。


 せっかく上げた今の順位を急上昇させるためにも絶対に成功させなければならない。


「二人とも今回は失敗できない。協力してくれ」

「くくく、偉く真面目じゃないか。だが、面白いな」

「自分ばかり活躍するのは、もうやめてくれよ。俺も順位上げたいんだからな」


 私たちは三人で手を差し出しあって結束を強める。


 作戦を成功させるために動き始める。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 もうすぐこの話も十万文字に達成です!

 なんとかカクヨムコンテスト9には間に合いそうですねw


 皆さんのおかげで⭐︎ももうすぐ500に達成ですw

 この話は作者としても、面白さがイマイチわかっていませんが、読者の方が多く、レビューもいただけているのでなんとか続けていられます。


 本当にありがとうございます。


 なんとか切りが良いところまでは書き上げたいと思いますので、どうぞお付き合いいただければ幸いです。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る