第35話 新たな旅路

 アシェは一年の集大成として、挑んだゴーレムダンジョン攻略で大成功を収めた。

 それは共に挑んだオリヴィアちゃんも同じで、学園側から褒め称えられることになった。


「改めて紹介したい。新たなる快挙を成し遂げた優秀なサモナーの二人を!」


 入学式で使われていた大講堂で、学園長に紹介されるアシェとオリヴィアちゃん。

 二人はダンジョンという魔物が出現する危険な場所に初めて入って最下層まで攻略するという快挙を成し遂げた。


 それは学園始まって以来の出来事で、賞状とバッジを授けられる。


「君たちの勇姿を讃え、バッジをプレゼントさせて欲しい」

「バッジですか?」

「そうだ。サモナーを認めるスターというシステムがあることは授業で習ったと思う。だが、昔のサモナーは様々な地域を訪れて、そこを納めるリーダーにバッジをもらうという習慣があったのじゃ」


 アシェとオリヴィアちゃんが壇上に上がってほめられている姿を見るのは嬉しいものだ。


 表彰式が終わると、アシェが戻ってきた。


「ピリカ! お待たせ!」

「ピヨ!」

「さぁ行こうか。お父さんが待っててくれるはずだから」


 表彰式を受けるまで数日がかかって、年末になった俺たちはアシェの実家へと帰ることになった。アシェの父親が迎えにきてくれて、一緒に帰る。


「父ちゃん!!!」

「アシェ! 久しぶりだな」


 一年ぶりに親子の再会は胸に来るものがあるなぁ〜。


 学園から出れば、俺はまた森に帰ることになるだろう。


 それでも親子の再会は嬉しいな。


「ピリカ!」

「ピヨ?」


 お父さんとの再会をしていると思っていたアシェが戻ってきて、俺は抱きしめられる。モフモフボディーを披露する真骨頂を発揮できるが、お父さんとの再会は良いのだろうか?


「ピリカ。あのね、お父さんが用意してくれたプレゼントがあるんだ」


 そう言ってアシェが出したのは、鈴だった。


「これはね。この召喚獣の首輪に装備することで、サモナーの魔力を半分だけで召喚を続けられるんだ。だけど、普段よりも強化できる能力アップが少なくなるんだけど、つけてもいいかな?」


 なるほど、アシェから与えられる魔力が多ければ多いほど俺も強くなれていたのか。そして、鈴をつけると今まで得られていた力を失うわけだ。


 だけど、今まで森で住んでいた時は、アシェの援助はなかったからな。 

 それが普通なんじゃないのか?


「ピヨ!」

「いいの?! ありがとう!」


 首輪に鈴が付けられる。

 なんだか今場所がバレそうでちょっとだけ恥ずかしい。


 首を振ってみるが、音はあまりならない。


「ピヨ?」

「これも魔導具だから、普段はならないんだ。ピリカが、私を呼びたい時や、私がピリカを探したい時にだけ鳴るんだよ」

「ピヨピヨ」


 なるほどな。

 アシェに負担が少なくて、一緒にいられるのはすごいことだ。

 その上で互いの居場所を伝え合うことができるのか。


「これで一緒にお正月が迎えられるね!」

「ピヨ!」


 俺たちは馬車に乗り込んでアシェの実家へと向かう。

 

 途中で変な奴らが襲ってきたけど、アシェのお父さんがぶっ飛ばしてくれた。

 お父さんの召喚獣マルマジロといったか? 強いな。


 見た目は俺と大きさが変わらないのに、能力値が桁違いだ。


「ピリカ、日の出だよ!」

「ピヨ!」


 マルマジロにばかり気を取られていてもいけないな。


 俺たちは初日の出を見て、アシェの実家を楽しんだ。

 アシェが寝てしまった夜に、アシェの部屋でお父さんが頭を撫でる。


「ピリカ」

「ピヨ?」

「よく、アシェを守ってくれた。アシェは駆け出しのサモナーだ。そんな子がゴーレムのダンジョンを攻略できたのは、お前のおかげだろう」


 アシェも頑張っていたぞ。


「お前は強い魔物になると私は思っている。マルマジロみたいにな。だから、アシェとともに強くなっていくんだぞ」


 親父さんのゴツゴツした手で撫でられるのはあまり嬉しくはないが、仕方ないな。親父さんもアシェがいない間に、寂しい思いをしていたんだろう。

 このモフモフボディーで癒してやるとするか。


「ピヨ」

「くくく、俺のことも気遣ってくれるのか? 本当に優しいやつだ。だが、世の中には自分のことしか考えない悪いやつや。ずる賢い奴がたくさんいるんだ。そんな奴らからもアシェを守ってやってくれ。年が変わり今年からアシェは本格的なダンジョン挑戦を始めていくことだろう。そして、学園を12歳で出た頃には、世界を旅することになる。それがサモナーを強くするために必要なことだからだ」


 そうなのか? アシェからも聞いてはいたが、あと3年でアシェは旅に出るのか。

 そして、その前に学園が所持しているダンジョンを全て攻略することになる。


「ピリカよ。どうかアシェを守り、お前自身も強くなってくれ。今でも強いが、まだまだお前は強くなれる。なぜか俺のサモナーとしての勘がそういっているんだ」


 親父さんのゴツゴツした手で撫でられながら、それは新たなアシェとの旅路に覚悟を決めることになる。


「ピヨピヨ!」


 任せろ、親父さん。俺が必ずアシェを守ってやる。


「おう! 頼もしいな」


 言葉が通じているわけではないが、どこかで通じ合えているような気がする。

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