第149話 意地な妹同士だけど、どうしよう……小話。

 ――なぜ、こんなことになってしまったのだろう。


 私は苦しみを覚えながら、相手を観る。

 髪の毛から全身、真っ白な姿をしたロリ巨乳の少女。

 髪の毛を肩先まで伸ばし、不思議なヒスイ色をした眼をギラギラと燃やし、闘志を奮え立たせている。

 表情を観るに相手も苦しみ始めているのに止めない。

 なら、私も止めることが出来ない。

 だから、手にもった鋭利なナイフで肉を小さく切る。

 そして、赤いソースに切り分けだ肉をつけて、処理するために運ぶ。


「あむ」


 口の中に広がるのは、酸味の聞いたフルーティーな味わい。

 サクサクの衣に、鶏肉が包まれており、普通に美味しい。

 普通の時に食べたかった。


「あむあむあむあむ」


 食べきる。

 相手を観る、相手も皿が空になっている。

 次の料理が来る。

 今度はスープだ。

 赤い地獄のような見た目に、タケノコやシイタケなどが浮かんでいる。

 サンラータンだ。

 口に含みと酸味と絡みが口内を刺激し、今まで食べてきた満腹が収まってくる。

 正直、助かる。


「ごくごくごく」


 飲み切る。

 相手も飲み切る。


「燦ちゃん、そろそろ意地を張らなくても……」


 姉ぇが心配そうに見てくる。

 だが、負ける訳にはいかないのだ。

 女には負けられない時がある、今がその時だ。


 事の起こりはこうだ。

 打ち上げと称して、私たちは唯莉さん等のグループと横浜中華街で落ち合った。

 そして私は改めて、唯莉さんのと娘という少女、美怜さんと対面した。

 何というか、白い髪をした唯莉さん以上に全身が真っ白でまるで雪兎を思わせる可憐な少女だ。

 私が観ても、ヤバいぞ、この子……っと思うぐらいに、抱きしめたくなってしまったのは内緒だ。

 席はコミケでテンションが上がった委員長さんに決められ、以下となった。


       私

  唯莉さん    姉ぇ     

 

  美怜さん    リクちゃん

      ソラさん          黒服の女性(柱の陰で観ている)


 一つ突っ込み所があるが、まぁ、リクちゃんお嬢様だし、仕方ない。

 手にカメラを持ってなければだが。


「……あの人、いつもああなんですか?」

「ですの」


 いつものことらしい。

 さて、女性が丸テーブルで固まり、男性は男性で四角い固まっている形だ。

 観れば、委員長さんの隣に初老の男性が座っている。

 誠一さんも普通に話していることから知っている男性なのだろう。

 九条という名前が漏れたので、もしかしたら、あの九条さんなのかもしれない。

 さておき、事の起こりはこうだ。


「美怜ちゃんは自慢の娘なんや。

 最近は、特にそう思うわ」

「そうなんですか……」


 唯莉さんに美怜さんの話をされ、嫉妬を覚えた私がムシャムシャと食べることに集中し始めてしまう。


「燦ちゃんもエエ子やな。

 弟子入り予定やで?」

「そうなんだ」


 相手も同じように私の話をされて嫉妬を覚えたらしい。


「二人とも、仲良くやって欲しいわ」

「「そうですね」」


 その言葉がゴングに聞こえた。

 お互いに先ずは食べ放題の料理の注文が被ったのも良くなかった。

 意地の張り合いに発展し、気づけば一ページ目まるまるの注文になっている。

 ゴンゴンゴン! と置いていかれる料理。

 食べ放題なので量こそ少ないし、一ページ目は前菜が多いので、食べ終えると、ふふんと余裕そうな顔でこちらをみてくる美怜さんが居て、


「負けるか……」


 と二ページ目に突入した。

 おすすめページだ。

 油モノ、焼き物、スープと緩急をつけられるが、


「「……っ!」」


 テーブルに叩きつけられた大盛りのチャーハンにお互いを観合ってしまう。

 だが、意地で食べきる。

 そして、ドン!

 今度はそれの海鮮版が来る!

 同じ味はキツイ。

 ウーロン茶で喉を潤しながら、飲み込んでいく。

 そして、またドン!

 今度はそれのあんかけ版だ。


「「……ぇえ」」


 流石に顔を再度見合わせてしまう。

 食べるのはまだ大丈夫なのだが、流石に飽きてきてしまう。


『『どうしよう』』


 お互いに見合ったまま、スプーンが動かない。

 食べ始めること自体は余裕だ。

 しかし、脳が飽きたと信号を発して動けないのだ。


「燦、そろそろ意地を張るのはやめとけ。

 油断すると太るぞ?」

「うう……」


 誠一さんに窘められる。

 観れば、美怜さんもその後ろに白い毛の男性に、


「美怜もだ。

 どうせそこでニシシと笑っている唯莉さんに競争に誘導されたのだろう?」

「まぁ、そうだけど……判っては居たけど、意地があってね?」


 頭をポンポンと叩かれ合う。


「ごめんなさい」

「ううん、こちらこそごめんなさい」


 頭をゴンゴンとテーブルにぶつけあう。

 何というか行動属性が被っている気がすると、お互いに笑いあうのであった。



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