第137話 妹の悩みですが、なにか?
「うーむ。
やっぱり、動く巨大ロボはロマンだ……」
山下ふ頭の奥。
氷川丸より行った所で、しどー君は満足そうな顔をしている。
ここは自立型の大型ロボのパフォーマンスを行う会場だ。
そこでイベントが終わった所だ。
「自立してないのは残念だが……」
しどー君の顔がちょっとだけ、陰る。
にわかな私でも判らなくはない。
なぜなら、
「後ろの塔に接続されて、前後してたもんね……」
言葉を選ばず例えれば、大きな壁掛け時計の仕組み。
その例えを言うのはファンやしどー君に聞かれたら、怒られそうなので流石にそれは言葉にしない。
私だって、あれが技術の結晶だと言うのも解るし、流石にその例は申し訳なく感じる。よくない。
「そう、そこだ。
最初の計画では、二足歩行をする予定だったらしいが……。
今のあれでも十分凄いし、将来に期待を持てるという意味ではいいんだが……やはり、そこまでは観たいと、思ってしまうのは贅沢なんだろうな」
「ファンとしては正しい感想だと思うけどね?
そういう希望や期待を伝えるからこそ、次の機会に繋がるんだろうし。
だからイベントに参加して需要があるわよ、っと示すべきよね」
「確かに」
しどー君が納得してくれる。
「とはいえ、使わないグッズとかは買わないようにね?
ね、燦ちゃん?」
「……むー」
グッズ売り場に入った私達だが、妹に釘を刺しておく。
しどー君が大丈夫なのは知っている。
彼は物欲に溢れまくりの買い漁るコレクションタイプのオタクではない。
お金持ち程、必要なモノや投資になるモノに注力すると言うのは彼を観てよく理解出来ている。
私達にお金を使いたがる節があるのは、私が抑えに回るのでセーフだ。
貢ぐ君になって欲しいわけではないし、しどー君の成長のために使って欲しい。
それに物欲の代わりに性欲はスゴイし、私としては大満足だ、フフフ。
よく考えると、毎日でも二人相手出来るのは、それもしどー君の才能なんだろうと思う。
何の話だっけ?
「お土産はダメ?」
っと、横浜銘菓とコラボしたグッズを手に持った妹にオズオズと言われて考えが戻される。
「それは必要だから良いわよ。
日野兄弟には要らないと思うけど」
「さすがにそれは……」
振った相手にお優しい妹である。
そんなんだから、いつまでも付きまとわれるのではないかと思う。
とはいえ、そういう部分も魅力なのかもしれないと、悩む。
うむ。
「ひたいよ!」
気づいたら会計が終わって外に出ており、手触りのイイ妹の頬っぺたを伸ばしていた。
餅みたいだ。
「メンゴメンゴ、燦ちゃんの魅力を考えていてね?」
「私の?」
キョトンとして、私を観てくる。
そして、私と全体を見比べるようにし、胸を最後に見比べて、
「……巨乳?」
「太っただけでしょ、それは……。
うりゃうりゃ」
とりあえず、ムカついたので、後ろから抱き着いて揉んでおく。
デカい。
私が自分自身のを揉むより手への圧力が増えておる。
「これは人をダメにする……!
修正してやる!」
「姉ぇ、人前……!
ん……♡」
「いいではないか、いいではないか……。
確かに魅力よね、これは……ぶっ」
しどー君に頭にチョップで軽く突っ込みを入れられる。
周りを見れば、公園を歩いている人の目線が向いている。
「ТPОを弁えろとだな……。
スキンシップ程度に抑えておけ」
「……はーい」
やりすぎた。反省。
とはいえ、意地悪い笑顔を浮かべ。
「じゃぁ、後で私の揉んでね?」
「何が、じゃぁなんだよ……」
いつも通りのやりとりで、いつも通りに呆れられてしまう。
「揉みたくない?
挟まれたくない?」
「……揉みたいし、挟まれたい」
「よろし♡」
正直なしどー君なので、嬉しくなり右腕に胸を強調するように抱き着いておく。
彼もそれを受け入れてくれる。
「ずるいよ……」
っと、妹も反対側に抱き着いて、
「私のも揉んでくださいね?
挟みますし」
「……判った」
その爆乳でしどー君を落としにかかる抜け目がない妹である。
こういう所はちゃんとしているのに、どうして所々、抜けるのだろうか。
抜けると言っても性的な意味では無く、間が抜けるという意味でだ。
性的な意味なら確かに抜けるのもあれだが、謎である。
「燦の魅力なぁ……」
話を聞いていたしどー君が悩み始める。
「色々あるが、他の人からの視点で見ればほっておけないと言うのはあるんじゃないかなと」
「なるほ。
確かにこの妹危なっかしいし、庇護欲は湧くわね。
危機感が足りないわよね、全体的に」
「そうかな……」
「「間違いない」」
私たち二人で言葉を被せて言っておく。
「私、結構しっかりしてるよ?
姉ぇが家出した後、全部自分でやってたし」
「しどー君、どうしよ、この子」
「うーん、努力は認めるレベルかな……」
「……ええ」
私達の言葉に妹が愕然とした表情を向けてくる。
私達が愕然とした表情を向けたい気分だ。
いい機会だ、言っておこう。
「体重の件も含めだけどね。
自分の事に対して隙があるわよね。
後先を考えないことも多いし。
今日の件も含めて」
「ぐ……」
「新幹線を降りるとかは流石にね……」
「確かにな……」
「ううう」
心配を掛けないで欲しい。
全く。
そう私としどー君がうんうん、お互いの認識を確認する。
「そういう隙が滲み出てるから、痴漢に狙われたり、日野兄に付きまとわれたりするんじゃないかなと、姉ぇは思うわけですよ」
「ううう」
日野兄は彼自身の罪の意識もあってフォローしてくれている感があるのではと、最近思わなくもないが。
それを私から言う義理はない。
「とはいえ、しっかりしようとするばかりに空回りはしないで欲しいな」
自分のことを思い返すようなしどー君からフォローが入る。
とはいえ、彼自身がマジメ顔になって思い詰めた表情に変わっていき、
「そうなろうと焦れば焦るほど、自分を追い詰めるからな……。
ミスも増えるし」
「よしよし」
あまり追い詰めないようにと、しどー君の頭を撫でておく。
「子供扱いはヤメロよ……」
むー、っと口を尖らせられてくる。
まるで昔のマジメガネみたいな反応で懐かしい。
だから言ってやる。
「私から見ればマジメガネ過ぎた時のしどー君は子供だし、今のそれもよ?
ほら、落ち着いて?」
「……ふう。
たしかに初音の言う通りだな、ありがとう」
「よろし。
素直なしどー君は大好きよ?
今は大丈夫だし、落ち着きなさいな。
下も大人以上だし」
「……最後にオチをつけるのはどうかと思うぞ?」
「落ち着くのと掛けたのよ」
しどー君に白い目でみられるので、ゾクゾクしてしまう。
妹を見れば、悩んでいるのが観てとれる。
体が大きくなるのではなく、女として鋭くなるでもなく、人間として少しは安心させて欲しいと願うのであった。
とはいえ、
「人のために動けるのはいいことだと思うけどね?
ノノちゃんに好かれたのも、木登りしたのを助けたからだったわよね?
そういうのは魅力だと思うわよ」
自分が降りれなくなったとか後で聞いたけど……、これは飲み込んでおく。
笑みを浮かべた妹だが、悩んだままなのが観てとれた。
なんともかんとも。
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