第138話 金髪従姉妹とお茶会ですが、なにか?
「「あ」」
中華街。
変なところで出会いお互いに声をあげてしまう私たち。
後から来るとは聞いていたので想定出来る範囲ではあったが、まさかである。
「やっほ、お嬢、リクちゃん。
この前ぶり」
「……お嬢はやめてください。
親戚なんですから。
初音さん」
「血は繋がってないし、遠慮しちゃうんだけど。
それに私のそれも名字よ」
「あ……」
と言うわけで、金髪従姉妹二人に遭遇したのだ。
姉はミルクコーヒーのような褐色肌、妹は色は黄色人種のモノだがシルクのようなきめ細かいきれいな肌をしている。
パッと見た目だけは外国人に見える鳳凰寺姉妹だ。
リクちゃんは血縁だけに、燦ちゃんと何処か似ている雰囲気がある。たぶん、胸あたりのプレッシャーかもしらん。
「
「……むず痒いからヤメテ」
さて、名前は言われなさすぎる。
ようやく、マツリに許した私だが、しどー君にも言わせていない。
「なら、せめてこちらだけでもソラとお呼びくださいな」
ズズイと物理的にも詰め寄られる。
うーん、この人、相変わらず
胸はかなり薄いが。
「……しゃーないにゃー、ソラでいい?
ちゃんも、さんも、なんかしっくり来ない。
私も初音でいいから」
「はい、初音♪」
とはいえ、最近で言えばお互いの好感度は悪くない筈だ。
いかんせん、私は彼女のエロ師匠だ。
つまり私から見たマリみたいなものだ。
「お久しぶりです、リクちゃん」
「お久しぶりですの、燦お姉ちゃん」
隣では妹同士で挨拶をしている。
なお、リクちゃんの執事さんの姿も電柱の影に確認できる。
暑いのに全身黒スーツでご苦労様である。
「流石に立ち話も何だからお茶しない?」
「なら、良いところが」
と、案内されたのは屋上庭園に併設されたカフェだ。
スナックラーメン直売り店舗の上の階で、緑が溢れている。足湯や銅鑼があるのは謎にみち溢れているが。
タピオカティーを机の上に四つ並べて足を落ち着ける。
さてさて、
「そういえば、リクちゃん。
そっちの学校、高等部に志道・茉莉っていると思うんだけど」
「堅物で有名な風紀委員さんですの?」
既知のようだ、話が早くて助かる。
「新学期始まったら、ちょっとフォローしてあげてほしいんだわ」
「詳しくお聞きしてもいいですか?」
リクちゃんのあどけなさ、幼さが一切消えて、委員長とやりあった時に近い
伊達に、やのつく稼業(実の本業は違うらしいが)の跡取りではない。
怖いと、本能がひりついた感じがあるが、無視する。
最近の年下はどうかしている。
「なるほど、判りましたの。
任せてください。
初音お姉ちゃんの妹なら、私も無縁じゃありませんし」
事情を話すと頷いてにこやかな笑顔を浮かべて、納得してくれる。
一安心だ。
「それに御父様は絞めないとですの。
間違いなく絡んでいると思いますので」
なお、被害は別のところに広がったが気にしないでおこう。
……叔父さんにコスプレ写真ぐらいは送ってあげよう。
どうせ今回も叔父さんから衣装貰ってるんだろうし……。
「で、何してたの?」
「望お兄様とお姉ちゃんとの待ち合わせまで暇潰しですの」
「お姉ちゃん……ああ、委員長妹……平沼ちゃんか……」
少し考え、合致する。
リクちゃんは実の姉のことはソラ姉様と呼んだり、ソラと呼び捨てにしたりする。
逆に委員長妹、平沼・美怜の方をお姉ちゃんと親しみを籠めている。
「……ソラ、何したの?」
前から気になっていたので聞いてみる。
「姉妹喧嘩ですかね、産まれた時からの。
後継者の件とか、色々。
最近、望君のお陰で姉妹仲良くできるようになって嬉しくて嬉しくて」
「姉妹喧嘩なら仕方ないわね。
私も妹とは打ち解けてなかったし。
しどー君のお陰で解消したけど」
「頼れる彼氏の存在は姉妹円満には必要なのかも知れませんわね」
「それは激しく同意」
うんうんと、私たちは頷きあう。
良い彼氏をお互いにもったモノだ。
「委員長は今、しどー君と打ち合わせ中よ?
何話してるかは聞いてないけど」
予定通りだと仕事に出掛けていったしどー君である。
中華街で会合とか、映画とかだと丸テーブルで、マフィアが何やら取引について話している感覚がある。
委員長なら、薬や銃なら取引してても違和感ないが、人の彼氏を巻き込まないでだけは欲しい。
「美怜さんのアバター本で出品する件でとお聞きしております。
同人というのはあまり馴染みが御座いませんが、望君ですから心配ないかと」
夏祭りの学校ブースでだした、委員長妹をベースにした白猫耳Vチューバーアバターの件だろう。
「あのシスコンめ……。
美人の許嫁、ほっておいて……」
ついでに人の彼氏を……! と恨みがましさを込めておく。
「良いんですわ。
美怜さんを優先してくれた方がいつも通りの望君ですし。
それにソラと美怜さんで、望君を支え「リクもですの」ついでにリクもで支えられればと常々ですから」
何と言うか、ガンぎまりしている所には常々親近感を覚えるわけだが。
私だってしどー君には常々ガンぎまりだ。
「そういう所がリクちゃんからの好感度があがらない理由じゃないかな……」
「正妻の座を狙うのを止めるまでは、仕方ないかと。
美怜さんならともかく、リクには……」
「ぶー!
ソラ姉様、ケチ臭いですの!
今に見てろですの!
許嫁の座を奪いますの!」
「あはは、仲良いのね」
なんだかんだ、姉妹、上手く回っているようである。
ふと、私の姉妹を探して目線を泳がすが、
「……あれ、燦ちゃんが遅いわね……?」
ふと、足を押し付ける前にトイレに行くと言っていた妹の帰りが遅いことに気付く。
私たちのはあらかた終わったタピオカティーだが、妹の分は口もつけられていない。
スマホに電話しても出ない。
「またか……」
さすがに日に二度も起きるとは思わないが、しどー君がさっき入れてた追跡アプリを起動。
備えあれば嬉しいなとはこのことだ。
「……なんか、走ってるわね……」
「アメリカ山公園方向ですかね、そっちだと」
移動速度がマラソンで店から遠い位置に移動している。
方向的には南だ。
地理感がないし、嫌な予感がしてきた。
人助けならスマホに反応しない理由がない。
事件に巻き込まれた可能性が高い。
「ちょっと行くわ、妹が何かやらかした臭い……」
足を伸ばして走る準備をしながら言う。
「お手伝いしますわよ?
暇ですし。
リクも良いわよね?」
「問題なしですの。
星川、用意して」
リクちゃんが声を掛けられた執事さんがコクリと頷くと姿を消す。
「助かるわ」
「いえいえ、貴重な話の解る親戚ですから、大切にしないとですの」
「あはは……」
話の解らない親戚が暗に多いと言われた気がするが、気にしないでおこう。
私はなにかありそうな
それに今は燦ちゃんが優先だ。
「無事だといいけど」
嫌な予感が膨れ上がってきた私は焦りを覚え始めた。
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