第16話 京都市内の夏は暑すぎですが、なにか……
「暑い……」
いつもはクーラーの効いたしどー君の家。
今は全然そんなことはない。
壊れてしまったのだクーラーが。
テレビでは今日は特に猛暑日だと言っていたのにだ。
「……明日に来るってさ、業者」
「倒れるわよ、それ」
家の中ではメガネをかけることがあるしどー君のマジメ顔も汗だくだ。
京都市内の夏は暑い。
盆地気候であり、こんがりと焼かれてしまう。
観光には最も適さないシーズンでもあり、この季節に京都に来る人はマゾだと思う。
さておき、
「水着来て、水張ったお風呂に浸かり続けるのもなぁ……」
ふやけてしまう。
あまり長時間入ると体にも美容に悪い。
とはいえ、汗だくだくで水着プレイする気にもなれない。
それぐらいに京都の夏はつらいのだ。
頭の中がボーっとする。
「ほら、ちゃんと水分とるんだ」
「ありがと」
っと、しどー君がヒンヤリとしたポカリスエットを渡してくる。
一気に飲むと少し、思考がシャキッとする。
いつもはコーラだが、こういう時はポカリでもいいかもしれないと思えた。
「しどー君、流石に今日ここに居たら死ぬわよ」
「心頭滅却すれば」
「汗ビショビショで言われても笑えない冗談にしか聞こえないわ」
「僕も正直、ムリだと思ってたとこだ」
バタッと二人でリビングテーブルに突っ伏す。
テーブルのガラスが冷たく感じるぐらいには暑い。
「両親の家に行くのもありかなぁ」
「やだ」
却下だ。
彼氏の家に行くならちゃんとした形で行きたい。
何というか、ビッチな過去があるので、初対面ぐらいはいいイメージにしたいのだ。
後悔はないが、しどー君の彼女としての見栄である。
「私の家に来るのは?」
「スーツで行くが?」
「マジメガネすぎる……」
却下だ。
パパママはどうにかするが、しどー君、責任とるとか言い出しそうだ。
確かに好き会う同士で、恋人で、彼氏彼女で、そういったこともやっているわけだが、しどー君の重みにしかならない。
まだ、少し彼自身には身軽でいてほしい。
「別にちゃんと挨拶ぐらいしないとはなと思ってて」
「はいはい」
予想通りだった。
「そしたらラブホいかない?
昼は図書館とか、カフェとか涼しい場所に居てさー」
「ラブホって……!」
真っ赤になって立ち上がるしどー君。
全く童貞捨ててもこれだから、可愛いもんだ。
とはいえ、説得だ。
夏の暑さで倒れたくないし、しどー君に倒れられても困る。
「別に、ここでやっていることをやるだけってわけじゃないのよ?
最近のはゲームやシアター完備してたり、結構すごいわけよ。
勉強よ、勉強、社会勉強」
とはいえ、やることはやるつもりだが。
「とりあえず、出掛けようよ。
あつい、死ぬ」
「賛成」
そしてお互いに外行の格好に整え、何度目かになるデートへと。
最終的にラブホに連れ込む予定だが、まだ日が高い。どうしたものやら。
しかし、夏の日差しがとんでもなく熱い。
部屋の中は耐えれる程度だったが、ムリ。
すぐさま二人でマンション前のバス停で飛び乗る。
「あついわね……」
「あついなぁ……。
僕なんかは京都育ちだが、最近は特に暑い気がする
地球温暖化の影響かもしれない」
バスの中はまだ空調が効いていて楽だ。
このまま、いつもの四条河原町まで行ってくれる。
「生き返る……」
「だなぁ……」
シミジミと文明の利器のありがたみを感じる。
バスの中に観光客は少ない。
特にここは生活路線であり、観光の名所も少ないのだ。
二人で立ちながらのバスは、下り、西院駅をしり目に左に曲がる。
しばらくすると四条河原町のバス停がミストを撒いているのが見える。
少しでも過ごしやすくするという配慮で行われているモノだ。
「暑い……」
とはいえ、暑い。
猛暑日を舐めてはいけない。
バスを降りるとムアッとした熱気が来る。
「しかし、こんな日も観光客おおいわね」
「日程が限定されるから、ムリをする人も多いそうだ」
とはいえ、鴨川のカップルは少ない。
日の当たるウチからいたら危ないのは明白だ。
「川床はこんでるな……」
逆に名物であるそれは盛況のようだ。
川にせり出すように作られたテラス席、夏季だけに現れるもので観光名物の一つだ。
「高雄か貴船へ、北へ上がるべきだったか」
「川床行くつもりだったの?」
「せっかくだし、風流を楽しみながらを考えていたんだが。
学生でもお手頃な場所はあるし」
「高雄、貴船のお値段は万行く気がするんですが?
無理しないのー」
親の金であるからにして、学生が使うぐらいにと最近たしなめることがある。
とはいえ、私、しどー君の家からアルバイト代出てるわけだが……。
ジレンマである。
今度、お給金減らして貰うように交渉しようかなぁ……。
食費も出して貰ってるし。
「ムリして処女失おうとしてた私に言われてもあれだとは思うけどねー」
下ネタジョークだ。
しどー君が渋い顔をする。
とはいえ、どうしたものか。
ラブホか? ラブホ行ってしまうか? 最初からクライマックスしちゃうか?
と、そんな私にカラオケの看板が目につく。
「カラオケいこ、カラオケ」
「なんだ、それは?」
おっと、予想外の回答が来た。
とりあえず、しどー君の手を引き、青い看板のカラオケボックスへ。
密室に二人きりになるが、クーラーがガンガン効いていて涼しい。
とりあえず、私の分をコーラ、しどー君の分のウーロン茶で頼む。
「ここは、歌を歌う場所よ。
基本的には」
なお、密室であることをいいことに如何わしいことも行われる空間でもある。
ただし、ガラス戸になっているので、注意が必要な訳だが、いま犯るきはない。
「この機械に番号を入れるとねー。
こんな感じで曲が流れるのよ」
最近、しどー君とらぶらぶしたいため、京都市内の友達とは会うことは減っており、カラオケも久しぶりである。
声の調子を合わせながら流行りの曲を歌っていく。
「そして、点数が出るわけ『九十二点』、まぁまぁね」
「なるほど」
っと、彼が悪戦苦闘しながら番号を入れる。
流れてきたのは君が代で
「ドン引きするわよ、私以外はきっと……」
九十八点というのもドン引き要素である。
全くもってマジメガネである。
今はメガネしてないが。
「流行りの曲知ってるの無いの?
この際、昔懐かしいアニソンでもいいわけだけど……」
「民謡とか童謡しか知らないわけだが……」
予想を超えてきたマジメガネ具合である。
「仕方ないわね、私がいくつか流行りの曲を歌うから、それを真似してね?」
「判った」
しどー君、歌は上手いが何ともなれない様子で何度も繰り返し歌詞を覚えさせることになった。
途中、真剣なしどー君を見て、ムラっと来てしまった。
「(ペロリ)」
「~っ! ~っっ♪ ~ぁつ~♪」
歌うときに下半身にお邪魔してやったのだ。
悶えながら真剣に歌おうとするしどー君の姿と言ったら……病みつきになりそうであった。
なお、後でしどー君に怒られたわけだが。
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