第68話 久しぶりのパパママですが、なにか?
日曜日。
「お久しぶり、ママ。
これお土産」
「なんだろなー。
これは……551のぶたまん!
いえい!」
しどー君も居ないので妹と実家だ。
ママにお昼用にと、551セットの袋を渡す。中身は豚まん、餃子、海老シュウマイ、肉シュウマイだ。
なお、昨日、しどー君に家に帰るって言ったら、そうかと言いつつ悲観そうな顔をしてくれたので、晩御飯には帰ると言っておいた。
離婚寸前の夫婦の台詞と勘違いしたのだろうことは明白で、しどー君は頭を抱えてくれた。
さてさて、
「パパもお久しぶりね」
「娘よ、大きくなって……!」
「胸はたしかに揉まれて大きくなったけど、娘に言う台詞じゃないし、引くわよ?」
「定型文でボケたら、彼氏との性生活の暴露と引かれてダブルダメージを喰らった件……助けてママ……」
「よしよし、ダメなパパですねー」
パパママが話題を出汁(だし)にイチャツキ始める。
いつも通りである。
私と妹の部屋を掃除したら、昼御飯になったので狭い六畳間で丸テーブルを囲む。
メニューは豚まん、餃子、ご飯に簡単なモヤシスープだ。
「でだ、娘よ。
帰宅した理由は?
彼氏に愛想がついたのか?!」
「それはないから安心して。
パパママに負けず劣らずラブラブしてるから」
「なん、だと……」
パパが項垂れて餃子を箸から落とし、ご飯茶碗の上に落とす。
「最近、ママとメイドプレイしたり、執事プレイしたりしているのに、それと同等だと……?!」
「私もメイドプレイは最近の流行りよ!
執事プレイ……うーん、私はちょっとやだなあ……」
奉仕したい側だし、という言葉は飲み込んでおく。
「姉ぇもパパも張り合わない!
食事中!
それに私が気づかないウチに何てプレイしてんの、パパ!」
妹がバン! とテーブルを叩く。
「最近、燦も夜遊びしてるからその時にねー、パパ?」
「ねー、ママ?」
「なるほど、妹がウチに通う日なら気兼ねなくできるわ」
塾で帰りが遅くなるのは負担だと言う名目で、妹はしどー君の家に泊まっている。私の状況観察もあるらしいが。
パパママも流石に私たち、姉妹の前ではやらないようにしてくれているわけでして、ちょうど良かったのだろう。
まあ、私が前、見てしまった件があるからだろうが。
さておき、
「パパもママももう歳なんだからほどほどに……ひえ」
その台詞を吐いた妹の頭を笑みを浮かべたママが掴む。
「まだ、ママは30前半ですー、ピチピチですー。
中卒後すぐ、お姉ちゃん産んでますー。
あなた達の今ごろには燦を孕んでましたー」
「「うわ、生々しい……」」
流石の私も妹もその台詞に子供を産めるのだと実感してしまう。
「ふふ、まだまだ娘達に負けないナイスバディよ!
そして出産適齢期!」
そして海老反りで巨乳を張るママ。こればかりは遺伝が仕事している。
確かにママの熟れた体は大人の色気があるし、メリハリもついていて抱き心地が良さそうだと娘ながら思う。
ちなみに天然茶髪はパパ譲りでママは茶髪に染めているが元々は黒だ。
「これは弟か妹増えてもおかしくないわね……」
そう感想を述べながら、脳内を纏めていき、決意を固める。
「パパママ」
真剣な表情で二人を観る。
「私、医学部行く。
塾は今の給与や貯金から出して通う」
「「……」」
流石のパパママも私のそれを聞き、顔を見合わせてから、
「判った」
と、パパはそう端的に言った。
「え、っと。
反対は無いにしても、質問を聞かれたりする想定をしていたんだけど?
お金の話とか」
逆に私が戸惑いながら聞く。
想定外だ。
「その顔はいつもやり遂げる顔だ。
陸上は確かに事故で辞めたが、ちゃんと目標を達成した。
高校も受かった。
援交は流石に止めようとしたが、ちゃんと言い付けは守れた。
今までやると言ったら成し遂げてきたんだから、ちゃんと出来るだろ?
お金?
学費は何とかするから、気張れ」
パパがそこまで一気に言って、スープを飲み干す。
ママを観ると、
「ママもパパに同意よ」
ニコニコと返してくる。
何と言うか、心の中が熱くなる。
良い親なんだなと染々思う。
放任主義かと、自由にやらせて貰っていたが、ここに来てこの言葉は卑怯だと思う。
やば、泣きそう。
「えっと、ありがとう」
抑え、そう俯きながら言う。
「娘がデレたー!」
「やったね、パパ、明日はホームランだ!」
よく判らないネタではしゃぐパパママ。
「燦ちゃん、交代……、ちょっと落ち着きたい」
「姉ぇが泣くなんて珍しい……」
「泣いてなんか無いわよ!」
「はいはい……、でパパママ、私からも」
妹が一呼吸。
なんだろうとパパママが目線を向ける。
「私、姉ぇと同じ人が好きになりました」
「「……」」
パパママはやはり顔を見合わせる。
「……えっと、それで?」
ママがそう問いかける。
今の状況ではただの報告で、目的が不明だ。
「もし、彼が、誠一さんが受け入れてくれるなら、私は内縁でも一緒になりたいと思ってるから覚悟しといてください!」
流石のパパママも、どうしていいものかと固まって言葉が出てこない。
「えっと、お姉ちゃんは?」
「私は二人が決めたのなら賛成って言ってる」
「ふむ……」
ママが私の返答で悩む。
「パパとしては、回答したくない。
燦がママと同じなら、反対しても実行するからだ。
ママの父みたいに疎遠になって後悔したくは無い……とはいえ、親としての感情が……二股……二股なあ……。
一途になって不幸の連鎖した人の話も聞いているし、どうなんだろなあ」
苦しみを見せるパパ。
そりゃそうだ。
娘が足を普通の幸せから外れようとして、それを黙っているのも難しいだろう。
とはいえ、私のビッチは受け入れていたわけでして、自主性を重んじるのがパパだ。
「……まずそいつ連れてこい。
そこからだ」
「はいはい。
しどー君のことだから、決めたら自分から行こうって言うと思うけど」
「度胸はあるんだな……?」
「度胸はあるけど、度胸というか……」
あれは何だろうか?
昨日も驚かせられた。
「うん、パパ、驚かないでね?」
「を、をう?」
私の言葉にパパが、若干、引き気味になる。
「そんなにスゴい奴なのか……?」
「一、私の援交を探偵雇ってまで止めた。
二、妹の為に妹のプライバシーを投げ捨てた。
三、私にプロポーズしつつ、ちゃんと考えると言った手前、妹のことをどうするか、二股含め真剣に悩むマジメガネ。
……こんなとこ?」
言ってて、自分の彼氏ながらヤバイ奴だと思う。
「私から観ると……真面目で、正義感が強くて、本気で考えてくれて、結果のためなら手段を選ばない人……?」
妹も付け加えるが、やはりヤバイ奴のイメージを加速させているだけだろう。
パパママが無言で顔を見合せている。
「と、とりあえず実物みてから判断しようか、ママ」
「そういう考えすぎないところも素敵ね、パパ!」
と、いつものパパママに戻る。
「ちなみに初対面でいきなりスーツとか過度なお土産は止めるから、その点はヨロ。
絶対、過度になるのは判ってるから」
「わ、わかった」
とりあえず、しどー君を止めるための布石を打っておいた。
しかし、これでも油断がならないと、不安が残る私だった。
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