マリと茉莉。
第121話 兄と妹ですが、なにか?
「今日はデートだから早めに切り上げるわよ?」
「ノロケかーきさまー!」
憤る山姥ギャルと相対するのはいつものファミレスだ。
代り映えもしないが、マリちんと会うのはやはりここだ。
私がデニム生地のロングスカートに、ノースリーブのシャツで大人らしく纏めた気合いをいれたコーデに対し、マリちんは相変わらずの制服だ。
「って、私もなんだけどねー。
ノノっちも一緒で」
っと、笑顔になるマリちん。
何というか、相手も相手で上手くやってるみたいだ。
気になるので、
「実際、どうなのよ?」
「正直、妹が出来たみたいでたのしー。
兄はいるけど疎遠でねー……」
「妹キャラだったのか……」
頭の中に妹属性がヤバイ論が浮かぶ。
私はマトモなのに同じ血族の燦ちゃん、ママ、従姉妹のリクちゃんがヤバイのはその属性持ちだからだと納得出来るのだ。
「おねーちゃんってよんであげよーか?」
「勘弁、燦ちゃんだけで手一杯」
「ざんねーん、はつねんはなんというか、姉御よね」
「それ、日野兄に初音の姉御よばわりされそうになってるし、勘弁」
それにだ、
「私に色々と教えてくれたり、紹介された人を仲介するネットワークを維持してるあんたの方がよっぽど姉御よ」
「まあ、生き甲斐に近いしねー。
危険に会う子は少ない方がいいわけよねー」
マリちんが引き継いで管理しているネットワークは会員制だ。
つまり、信用できるオジサン達からの紹介がなければ、客になれないのだ。
客側も初見の女の子側に問題が無いかを確認されて、斡旋されるのでお互いにメリットがある。
なお、ごく稀に豹変する人も居るが……私の処女買おうとした人とか……。
「一緒に歩いている最中にノノちゃんが、あんたのグループに入った新人と間違われないかどうかだけが懸念だけど」
「流石に小学生みて欲情する人はいないよー?
変な人は多いけど」
コスプレ大好き叔父さんとかの話である。
「ちなみにお兄さんてどんな人?」
「……マジメな人だったかなー、日野っち……日野きゅんの兄みたいじゃないのは確かー」
「あれと比べたら誰だってマジメよ」
しどー君なんか大真面目になってしまう。
但し、性的な部分を除く。
しどー君、
「で、その弟君とはどうなのよ?」
「なんか日野きゅん、他の人にも目が行っててどうしようかと思ってて、ついに性的な意味で食べるべきか悩んだんだけどー。
昨日から私達に戻ってくれたので抑えたー」
「ほむほむ……何があったのやら」
妹が何かしたのだろう。
昨日はご機嫌だった。
基本、あの妹は
自分の事となると、狂犬になるけど。
「ちなみに何処までやったの?」
「やってないよー。
抱き着いたりしてるだけー。
まだ、通って無いみたいだし」
「通っても犯罪だからね?」
援助交際常習犯で今更感はあるが、友達が加害者になるのは避けたい。
とはいえ、逮捕されたら、こいつはやると思ってましたとコメントしようと心の中で決意と準備をしておく。
「別に通らなくても、快感は与えられるんだけどねー。
グヘヘヘ。
何かにナニをこすりつけるのは、出せるようになる前にも行うのはしってるしー」
「やめなさい。
小学生から性癖壊れたら大変よ?」
「冗談、冗談。
この前、ノノっちが性に目覚めた遠因がマリにあることが判ってから自重してるしー」
「ノノちゃんは早すぎだから……ちゃんと観といてあげてね……」
「大丈夫、大丈夫。
マリにお任せあれ、茉莉として言っとく」
と、世話焼きのマリちんが言ってくれるので一安心だ。
信頼はしているが、言葉にするか否かは重要だ。
お節介な私とは思うが、小さな女の子が欲望に負け、傷ついたり、将来を歪められるのは心情的に宜しくない。
私みたいに自ら援交しはじめたのならともかく。
「そう言えば、私の彼氏がソロソロここに来るけど、会ってく?」
スマホが鳴り、見て、提案する。
そう言えば、会わせたことがない。
「あー、いいねー。
噂の二股野郎の顔を観るのはー。
私のはつねんを奪いやがってー! と言ってやるのはありよねー。
援交時代は知ってるん?」
「知ってるから隠す必要なしよ」
というか、援交がきっかけで縁が繋がってるし……。
ストーカーまがいのことが切っ掛けとは言えないので、今までマリちんにはしどー君のことを余り触れないようにしていた訳でして?
あえて能動的に会わせようと考えて無かった私が居る。
「ちなみにどんな人だっけー?」
「くそマジメに二股する人」
「二股がマジメなのかは……いやまあ、日野きゃんにさせてる私も言えることではないかー」
メロンソーダを飲み干し、落ち着きながら自嘲するマリちん。
弟君は自分で選んだが、それを自分の責任に感じるマリちんもつくづく真面目だ。
「ちなみに彼氏さんの名前はー?」
「えっとね……あ、きたきた、しどーくん!」
入り口に眼鏡をしていない彼を確認したので会話を中断し、ブンブンと手を振って初音アピールだ。
すると、すぐ私を見つけてくれた彼が私の隣に座る。
「初音、すぐ見つかってよかった……って、この人は?」
「私の援助交際仲間のマリちん。
で、これが私の彼氏のしどー君、士道・誠一君よ」
「……えっと、始めまして」
マリちんが挨拶を行うが、いつも通りじゃないので違和感を覚える。
「なに、その反応。
いつも通り、『マリでーす、よろしくねー』でいいわよ。
私の彼氏だからって緊張してんの?」
「いや、そういうわけじゃなくてねー……?」
「じゃぁ、どういう訳よ。
オズオズモジモジと俯き、顔を伏せながらとか乙女仕草すぎてねぇ?
しどー君にも惚れたの?
弟君といい、マジメ系好きなの、もしかして?」
というか、いつも人に対して物怖じしないマリちんからは想像出来ない姿で笑いそうになりながら揶揄していく。
慌てるマリちんは珍しい。
「いや、そうじゃなくてね-?
この人が二股してるの?」
「うん、そうよ?」
「へー……」
って、視線をしどーくんに向けるマリちん。
しどーくんも挨拶せずに何かを考えていて、変だ。
「ちょっと待て、
その顔の化粧でも見間違える筈がない」
「ぇ、顔外した時の知り合い?」
しどー君がマリの姿と知り合いなのは想像出来ない。
ともなれば、顔を外した場合になる訳だが、しどー君の幼馴染である日野兄と顔を合わせた時にはお互いに何の反応も無かった。
どんな関係か好奇心が働いてしまう。
「いいえ、マリです。
はつねん、私の名前はマリだよねー?」
「そうよ、この子はマリ」
とはいえ、誤魔化したい意図が伝わってきたのでする。
何か、嫌な予感がしたのだ。
「下手な芝居はヤメロ。
年も数回しか会ってないとはいえ、判る。
最後に会った六月頃僕がメガネを外したのもみてるだろ……」
「しらないよー、あんたなんか、マリしらないよー」
確信をもって言うしどーくんだ。
基本、正しいことを言うので、逆にマリちんが誤魔化そうとするのが気になる。
もしかして、
「例の許嫁?」
「いや、おぞましいことを言わないでくれ」
しどーくんが心底げんなりする。
「なら結局なんなの?」
「こいつは士道・
「しどー……?
えっと、奥さん?
私というものがありながら!」
ボケると、二人に顔をしかめられる。
心底嫌そうだ。
「こほん……つまり、どういうことだってばよ?
従姉妹?
私とお嬢みたいに、あれは血はつながってないけど」
「……………………双子の妹だ」
「は?
つまり、将来私にとって義妹になるの?
笑える冗談よね。
……え、マジで?」
「僕が冗談をこんな時に言うと思うか?」
「……言わない」
私のターニングポイントとなった二人が兄妹であった。
運命とはこういうことをいうのだろうかと、止まったままの思考に浮かんだ。
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