第5話 提案がありましたが、なにか?

「口封じはいいんだけど……」


 士道君、虐めるのも楽しいし、男性をたぶらかす欲求は解消されている。

 それはいい。


「問題はお金よね」


 現実的な問題だ。

 援助交際しないとお金がないというのは本当に世知が無い話である。

 倹約しろよと脳内のマジメガネが言う。


「友達関係とかあるし、無理なのよ」


 というわけで、処女はさておき、お金を稼ぎにオジサン達と遊ぶわけだ。

 キャバクラだって、レンタル彼女だって仕事な訳だ。

 これぐらいは許してほしいんだけど……


「待てぇ!」

「げ、マジメガネ!」


 今日も現れるマジメガネ。

 そして逃げてく金づる。

 何故だろう、場所も時間も変えているのにバレている気がする。

 そろそろ貯めてた友好費がヤバい。

 さすがに別の貯金には手を出したくない。


「……もしかして、ストーカー?

 裸みたからって、俺のモノ発言とかする気?

 流石にそれは引くわ」


 そしていつもの流れで、彼のマンションに転がり込んでいる。

 ソファーに転がりながら、奢らせたコーラを頂いている。

 今日はLチキ付だ。


「見過ごせないだろ、風紀委員として……」

「ふーん、ストーカーは認めるんだ」


 短い間だが、何度か話して判ったことだが、本当に嘘がつけないマジメガネ君なのである。

 何かしらの手段で私をマークしているらしい。

 どうしたものやら。


「実は私の事好きなんじゃないのー?

 ほれほれー」


 とはいえだ、欲求不満だけは解消しよう。

 自慢の胸を押し付けてやり、しどー君を虐めることにする。


「自分をもっと大切にしろとだな!」


 何度かやっているのだが、赤面してくれるのは初心うぶすぎておもちゃにし甲斐がある。

 ともあれ、この関係は学校では内緒だ。

 お互いにただのクラスメートだ。

 言えるわけもない。


「いいじゃんべつにー。

 女の子慣れさせたげるーって、しどーくんも了承したじゃん?」

「あれは君がだな……」

「なにかー?」


 携帯をチラリと見せる。


「ちなみにデータはPCにも転送してあるからねー、

 寝込みを襲っても駄目よー?

 おっぱい揉むぐらいはいいけど」


 抜かりなし。


「誰が襲うか!」

「根性無し」


 とはいえ、このマジメガネ君はそういうことすらやらないのは判った。

 本当に真面目なのだ。


「しどーくんが私にお金をくれたら、別にやらなくてもいいんだけどねー」


 冗談交じりに言う。


「その手があるか……」

「ぇ、何、マジ顔になってんの?」


 メガネが光ったような気がした。


「流石に、楽して稼げればとは思うけど、そこまで落ちちゃないわよ?

 私、男の人をもてあそぶの楽しいし」


 ビッチだってそれぐらいのプライドはある。

 同級生をパパにするとか、カツアゲするのは何がどうでも流石にまずい。


「体で稼げばいいんだよ」

「それ、今と変わらなくない?

 しどー君が私を買うってこと?

 処女をお買い上げ?」

「ちがああああう!」


 と突っ込むと、しどー君の顔が赤くなる。

 流石に違う意味だったらしい。


「冗談よ、冗談。

 マジメガネがそんなことを言えるわけないじゃない。

 そんなのは判ってるわよ」


 コホンと間を入れて、私は真面目な視線をしどー君に向ける。


「いっとくけど、ふつーにアルバイトする気はないからねー。

 時給一万、土曜日だけで日三万~五万ぐらいの稼ぎがあるから」

「三万~五万か、週割りすると……四千円~七千円……流石に五日して六千円~一万円。

 いけるな」

「いや、マジで何を考えてるか教えてもらっていい?」


 なんか鬼気迫る勢いで考えていて怖かったんだけど?

 眼鏡光ってるし、実はちょっと聞くのも怖い。


「週五で働かないか?

 ここに住み込みで」

「は?

 どういうこと?」


 ちょっと何を言ってるんだろうか、このマジメガネは。

 と思いながら彼の提案を聞いた。


「つまり、一人暮らしはいいが、掃除、洗濯、料理に手間を取られる。

 その分、勉強効率が下がるからやってほしいというわけね?

 掃除こそハウスキーパーが週一で入るけど、他はと」


 とりあえず、聞いたことを訳してみたた。


「そういうことになる。

 ちなみに腕が不安なのだが……」


 イラッと来た。

 ビッチ舐めてる気がする。


「ぜんぶできますー。

 ママもパパも働いてるから全部自分でやってましたー。

 妹が最近は出来るようになったから任せてるけどー。

 ボンボンのマジメガネとはちがうんですー」


 事実だ。


「凄いな。

 僕は何もできない」


 感心されたのは意外だった。


「え、マジで何もできないの?

「あぁ」

「これぐらいはできなさいよ……」


 どうしてやろうか、悩む。


「というか、女子高生囲うのはヤバくない?

 風紀委員さん」

「ちゃんと許可を得るつもりだから大丈夫だ。

 事情は説明すれば大丈夫だろう」

「ぇえ……」


 そういうモノだろうか。

 ちょっと頭おかしくないかな、このマジメガネ。

 

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