第99話 報告と結果ですが、なにか?
「やっほー、しどー君。
おまたせー」
っと、その左腕に絡みつく私。
「初音、凄い恰好だな、今日は……」
フフフ、今日のファッションは白Yシャツコーデ、下はジーパン。
シャツの中に見せブラ……今回のは黒のレースタイプを入れて、胸元を緩めている。
当然に豊満な谷間を強調しているわけでして、人目を集める。
その自慢を押し付けている彼に私は上目遣いを向けて、
「ふふん、どう?
しどー君しか楽しめない体だぞ?」
「……エロくて良いと思う。
ただ、あまり他人に見せたくない」
うん、言ってくれると思った。
嬉しくなって更に押し付けてしまう。
私の胸も好きな彼が嬉しそうに顔を綻ばしてくれる。
さて、今回はデート……それが目的の半分だ。
ノノちゃん達とはその場で分かれ、家にいったん戻り、四条河原町で落ち合った形だ。
河原町は各地の夏休みが始まったためか人が非常に多く、眼鏡をしていないしどー君にも目線が向いてくる。
彼もシンプルにYシャツにジーパンのお揃いだ。
美男美女ですし、おすし、フフフ、などと考え緊張を誤魔化している。
「初音、らしくないぞ」
「……しどー君はよく見てるよね……」
彼の手を強く一握り。
「そりゃ観てるさ」
「ビッチ、よろこばしてどーすんのよ♡」
っと、握り返してくれる。
さすが、私の彼氏であるし、ちゃんと察してくれている。
「まあ、落ちてることはないだろ?」
そう、半分の目的は入塾の結果だ。
「何処のクラスかがね、気になって……。
少しでも上だと良いんだけど」
「燦より二つしたぐらいじゃないか?」
「燦ちゃんには先ず追いつきたいしなぁ。
でも、応用がなんともねー」
中学の基礎はほぼ抑えた。
受験の記憶を取り戻しながら、しどー君ノートに紐付けていったわけだが、効果は中間の時点で高校平均だ。
かなり学力が高い高校な訳で、一般レベルよりは出来たはずだ。
「後は単語力よね……」
「まあ、受験はマラソンだから、気負いすぎずだ」
「うん♪」
こうムリに気分をあげるような話をせず、現実的に気張らしてくれるのが何とも安定感がある。
「そういえば、小さい子って可愛いわね。
あのノノちゃんて子、背伸びしたりで……うん」
思い出し笑いをする。
「何というか、応援したくなる気持ちも理解できたわ」
「なら、行った甲斐があったな。
僕としても嬉しい」
なでなでと、右手で私の頭を撫でてくれる。
ふにゃっと感情が嬉しさで和む。
周りから観れば見事にバカップルであるが、まぁ、いいだろう。
見せつけていこう。
「誤解は悲劇を生むからな……色々と」
シミジミとしどー君が言う。
「オタク仲間内で、推しのスレ違いでとある二人が一週間、口を聞いてなかったこともある」
「あー、そういえばあったわね。
基本、仲が良いクラスなのに、そこだけ異様な状態だったわね。
珍しく委員長も仲介に入らなかったし」
「結局、話し合いをさせることが出来て、それで何とかかんとか」
しどー君が良く話しているグループは四人構成で、その内クラス外から二名、話に来ていることが多い。
「コミケ前までに仲直り出来て良かったよ」
「コミケ……?
ニュースで観るあの人だかりのイベント?」
三日でオタクが五十万人以上集まるとか見た気がする。
真面目に考えると臭そうである。
「僕も行ったこと無いからなぁ。
流石に中学生が関東まで行くことは出来なかったし。
今年は行こうかと、春先から話が出ててな?」
「ほほーん?」
「初音と付き合い始めたからって保留にしてたけど、ついでに関東へ旅行してみるか?」
「いいわねー。
関西から東は処女だし、悪くないわ」
実のところ、私は関西圏から出たことが数えるしか無いのだ。
というか、京都府からすらあまり出たことがない。
家が貧乏なので旅行に行けなかったと言うのもある。
オジサン達が旅行に誘ってくれることはあったが、さすがに行ったことは無い。
逃げれ無いのはヤバい。
「あれ、小学生とか中学生の旅行は何処だったんだ?
こっちは関東だったけど」
「小学は大阪、中学は九州……」
修学旅行先としての九州は関西圏から西だと割とメジャーである。
「あー、僕はそっちに行ったことが無いから羨ましいなぁ……」
「バスの時間が長くて、自由時間なんてほぼ無かったけどねー。
あっちは、博多を除けばそこまで交通網なかったし」
「なるほど」
都市部以外はそんなもんである。
京都府ですら、京都市内を抜ければ全然交通網が無い。
車社会という奴である。
「うーん、コスプレとかも興味あるけど、キャラを知らないからなー。
確かコスプレってなり切るのも重要とかなんとか」
「詳しいな」
「叔父さんに、そう言われてた」
「あぁ、鳳凰寺さん……」
そんなことを義妹の娘に教えてたとかママが知ったら、マジ切れしそうな案件である。
「同人誌だっけ?
本とか作るんでしょ?
エロい奴」
「エロい日は流石にいかないぞ?
高校生だし」
流石にマジメガネである。
「私たちのしてることの方がエロいと思うけど?」
挑発するように、自身の左人差し指をペロリと舐める。
ゴクリとしどー君の喉が鳴ったのを見逃さない。
ククク、興奮してくれている♪
「まぁ、そうだな?
とりあえず、漫研の連中が書いて持っていくから、それを冷やかしにはいくけど。
舞鶴グルメや地理を戦艦を模した少女で説明していくとか何とか」
「ほほーん」
そんな部活があることすら初めて知った。
本の内容としては興味がある。
「あと委員長が漫研の一部に働きかけてた。
また、妹さんの何かをやらかすらしい」
「あのシスコンは何処まで行くのやら……」
「多分、とまらないんじゃないか?」
割といつも通りである。
さておき、
「関東ねー。
行ってみたい所は幾つかあるわ」
「渋谷とか、池袋か?
そういうファッションとか若者系の街に興味ありそうな感じあるし」
「興味無いことは無いけどねー。
流行に踊らされてる感があるのはパスだし、いかんせんしどー君が楽しめるか微妙じゃない?
渋谷に新しくできたビルに行くのもアリだけど、展望台行くだけで二千円よ?
流石に流石に」
貧乏性な私としては高いと思ってしまう。
なお、京都タワーは七百七十円、五老スカイタワーに至っては二百円である。
「まぁ、初音が楽しんでくれればいいと思うが?」
「一緒に楽しめる方が良いわよ。
行くなら燦ちゃんも一緒だし、私だけ楽しむのは無し。
横浜とかの海辺とかいいかも、ムード抜群っぽい」
「あー……よさそうだな。
近くに中華街もあるし、色々面白そうだ」
「ランドマークタワーとかね?」
そんなこんなでしどー君が通う塾につく。
受付結果の入った封筒を貰う。
そして私たちは休憩所にて向かい合って腰を落ち着ける。
「あれ、最上位クラスのマジメガネが美少女連れてる」「ギャル……イメージと違う……てか、ブラ見えてる……」「胸大きい、うらやまけしからん……」「余裕なんだろ、あいつは……おちろおちろおちろ……」
っと、自習に来ていたらしい人にヒソヒソ言われている私達である。
とりあえず、無視しながら、
「さて、開けちゃうぞ、開けちゃうぞ!」
「はやく開けろよ」
「ぶー、こういうのは勿体ぶらせるのが鉄則でしょ?」
頬を膨らませると、しどー君が呆れ顔になる。
ふざけすぎたかもしれない、反省。
「では、バン!」
机の上に広げるが数字の羅列が並んでいて良く判らん。
結局どういうことだ?
「あぁ、初音、燦の一つ下だ。
よくやったじゃないか」
「どこどこ」
逆文字で読み込んで、その結果の部分を示してくるしどー君。
確かにそこを読めば、しどー君の言う通り読み込める。
そうすると、実感と嬉しさが込み上げてくる。
そんな私の頭を撫でてくれる。えへへ。
「ここからがスタートだから、頑張らないとな?」
「うん、頑張るんば」
「とりあえずは、何かお祝いするとしよう。
昼はまだだろ?」
コクリと首を縦に振って答えた。
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