第33話 攻め気な妹だけど、どうしよう……

「……あ、誠一さん、こんばんわ」


 スラリとしたカッコいい彼を見つけ、走り寄る。

 少し待たせてしてしまったようだ。


「お待たせしました?」

「いや。

 僕の方こそ、少し授業が延長して遅刻してまたせてしまい、愛想をつかされたかと。

 すまない」


 と、頭を軽く下げてくれる。

 彼は何も悪い事をしていないのに、生真面目であるなと思う。

 同時に慌てて、


「いえ!

 頭下げるのはこっちのほうですから。

 遅れてすみません!」


 と私も下げる。

 結果、変な奴らだと、周りに見られてしまう。


「とりあえず、場所移しましょうか」

「そうだね」


 二人で慌てて動いて、近くのチェーンのコーヒー店へ。


「この前はありがとうございました」


 先ずはお礼だ。

 その代わりと言っては何だが、コーヒー代は私が出した。

 というより、先にコーヒー権を買っといた。

 これも戦略だ。

 姉ぇ曰く、「基本、先に気遣いを見せると相手からの譲歩を引き出しやすい! 後、チケットとかお金で無いなら相手はそれならと気遣いを拒否しない!」らしい。

 それで男から一回何万円も稼いでいた姉ぇだ、真実だろう。

 彼も一旦拒否をみせたが、というのは予想内で「お礼ですから」というと、それならと受け取ってくれた。


「ふぅ」


 アツアツのコーヒーを飲み、一息いれ、思考をクリアにしていく。

 浮かれてばかりはいられない、ここからが勝負だ。

 そう話題だ。わ・だ・い。

 沈黙は避けろとは、百戦錬磨な姉ぇの言葉だ。その点では信頼している。


「ああいう、対処慣れているんですか?

 凄く男らしくて」

「君のお姉さんに慣らされたという感じだね。

 何度か、あいつの援助交際場面に遭遇してね。

 危ない場面もあって、それでね?」

「あはは……」


 何というか、想像がつく気がする。


「だが、男らしいと言われるとちょっとね……そう言われると嬉しくはなるが。

 クラス内の虐めを止めれなかったどころか気づきもしなかった、情けない男だから」

「そんなことないです!

 少なくとも、私にとってはヒーローです!」


 叫んで店内中の眼を集めてしまう。

 ただ、この事実だけは伝えたかった。

 うつむいた彼の表情が曇ったのを晴らしたかったからだ。


「ありがとう。

 気が晴れたよ」


 そしてそれは成った。

 彼の整った顔が私を観て、微笑んでくれたのだ。

 心がキューっとしまり、そして体の奥底が熱くなる感じを覚える。

 鼓動が速くなる。


 あぁ、やっぱり、私、この人に恋をしているんだ。

 ……この人としたい。


「……誠一さん。

 明日、デートしてくださいませんか?」


 その言葉はすんなり出てきた。

 彼がちょっと驚いたように見えた。

 いきなりこんなことを言う女子なんて、と思うが、伝えなければ伝わらない。

 相手に察してもらうなんて、都合のいいことを信じるな。

 進め。

 という姉ぇの言葉が脳裏に響く。

 それでも、審判を待つかのような沈黙はツライ。

 だから、


「誠一さん、私、あなたに一目惚れしたんです!

 私は初恋です。

 これが間違いとは思いたくないですが、それが確かなのか、見定めたいんで一日付き合ってください!

 彼女がいるかはしりませんが、我儘わがままに付き合ってください!」


 攻めた。

 最後は椅子から立ち上がり、本気度を示す。

 再び衆目を集めるが知ったことか。


「あー、うん。

 そう言われると断りづらい」


 彼はポリポリと頬をかき、そして、


「判った。

 ただ、君の思うような僕じゃないかもしれない。

 それで幻滅してしまうかもしれないけど、いいかな?」

「構いません。

 逆が怖いぐらいです。

 というより、こんな私に付き合って頂き、ありがとうございます!」

「まぁ、こんなとは言わない方がいい。

 君の様に可愛い女子相手だからなら光栄に思えるよ」


 頬が熱くなる。

 こういったことを言われたことが無かったこともある。

 けれども、何より、そう私の事を言ってくれる彼はとても好きな存在なのだと惚れ直した。

 だからだろうか、


「ちなみに何ですが……エッチな女の子は好きですか?」


 話題の中、抑えきれずこう言ってしまった。

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