第20話 好きな所は一杯ですが、なにか?

「姉ぇの何処が好きになったんですか?」


 と妹に問われるしどー君の戸惑いを観ながら、冷茶を置く。

 私を一目見てくるしどー君には、ニヤニヤしておく。


「ぇっとだね。

 奔放で、でも優しくて、行動力もあって、素敵な女性だからだ」

「えっちが旨いからじゃなかったのね」

「冗談でもそれを言うなよ、自分で……」


 呆れられてしまう。

 からかいすぎたかもしれない。


「話しやすかったのもあるかな。

 実のところ、最初はとっつきづらい感じは覚えてたから」

「そりゃそうね。

 しどー君、オタクグループだし、私はカースト上位だし」


 そもそもに同じクラスでも接点がないのだ。

 それに舐められないように振舞っていたから、男子からみたらそんなもんだろう。

 委員長ともやりあったし……負けたが。

 さておき、


「美人だし、可愛いし、愛嬌あるし。

 僕には勿体ないぐらいいい彼女だよ?」

「そんなにビッチ褒めてどうするきだー!

 はッ!」


 おっと、いつも通り、しどー君を押し倒してしまう所だった。


「それに話していると楽しいんだ。

 気が合うというか、遠慮が無いというか。

 ずっと隣にいてくれたらいいなと」


 頬が熱くなる。

 ヤバい。

 妹、明日帰ったら襲う。

 絶対に襲う。

 安全日だ。

 ゴムもなしで襲う。

 えへへへへ。


「姉ぇ、顔から欲望が漏れてる……」

「いつもこんな感じだから、僕は慣れた。

 それに僕だけがこんな彼女を独占できるのは素直にうれしいと思う」

「ごちそうさまです。

 末永くこのビッチ姉ぇとお付き合いください。

 姉ぇ、こんなに思ってくれる人、普通に探してもいないんだからね!」

「そりゃそうよ……。

 私が惚れたしどーくんだもーん、だもーん」


 妹の目線が冷たい。

 妹も恋をすれば判る筈だ。

 まぁ、先ずは見た目から直さないとダメな気がするが。


「で、姉ぇはそんなしどー君の何処が好きになったの」


 言われたので目線を下へ。


「デカいところ」


 妹が赤面して、バンとガラス机を叩く。

 まったく、この妹も真面目過ぎる。

 少しは慣れないとダメだと思う。

 とはいえ、


「冗談よ、冗談。

 大きいのは確かだけど」


 しどー君、真っ赤にならなくていいぞい。

 男としては誇っていいことだから。

 さておき、


「真面目でね、努力家でね、責任感が強くてね、私のヒーローでね、

 ときには常識ズレてたりするけど、優しい人でね……」


 言い続けることが出来る自信がある。

 それでも、結論的にはこうだ。


「しどー君だから好きなんだよ?

 話してると楽しいのもあるし、何だかんだ気が合うし、金持ちだしとか色々あるけど」


 溜める。


「しどー君だけに体許したいとそう思えたんだ」


 ビッチとしてはどうかと思うが、しどー君専属ビッチとしては正しい回答だろう。

 えへへへ。


「しどー君、こんな女の子はイヤですか?」

「いや、大好きです」


 こういう時に赤面しながらもハッキリ答えてくれるのはしどー君の良いとこだと思う。

 言葉にしなくても伝わるが、やっぱりしてくれた方がもっと伝わる。

 顔がにやけてしまう。


「こんな風に私としどー君はラブラブな毎日を過ごしている訳よ。

 妹もこんな素敵な彼氏が出来たらいいわね?」


 上から目線で言ってやる。

 姉より優れた妹なぞいないのだ。


「お熱い事で……。

 私はイケメンがいいんだけど」


 暗にしどー君がイケメンじゃないと言われた気がした。

 ムッと来る。

 しどー君、メガネ外せばイケメンなんだぞー! って言ってやろうかと思ったがやめた。

 万が一、惚れられたら困る、うん。

 それぐらい私は自身の彼氏に自信を持っている。

 それに私はなんだかんだ、妹には甘いので、譲歩してしまう可能性がある。

 そもそも今の高校受けた理由が、妹の第一志望で一緒に通いたかったからで、私は妹好きなのだ。

 妹には照れくさいし、受からなかった今、言えないのだが。


「イケメンなんて飽きるわよ」


 これは実体験だ。

 基本的にマッサージ相手がオジサンだった理由は、経済力もあるが、優しかったからだ。

 若い男や、イケメンだと、大抵は自信家で惚れたろとか言ってきたので、二回目は無かった。

 私は男が悶える姿が好きなビッチ様なのだ。

 頑張って私を落とそうとあれやこれや自己アピールもウザかった。

 俺様なんざお呼びではないのである。


「しどー君弄ってて楽しいし」


 思考が漏れた。

 そんな私を何言っているんだこいつとみてくる妹も、きっと恋をすれば変わるだろう。

 それぐらいに恋の力はすごいのだ。

 私が変われたぐらいだ。


「あ、お風呂沸いたから、妹よ、先入れ」

「後で良いんだけど、流石に家主の前は入りづらいんだけど」

「キスとちょっとボディタッチで欲求不満解消したいって言ってんのよ。

 察しろ、妹」


 顔を真っ赤にする妹としどー君。

 全く初心やな、うふふふ。

 それと言ってなかったことがある。

 しどー君を見ていると妹を思い浮かべるというのも、私の中では高得点だったりする。

 真面目だし、初心だし。


「ほらいけ、ほらいけ。

 しっしっ」

「あがってきた時にやってるのだけは勘弁なんだけど」

「盛りのついた猿じゃないんだから、安心しなさいな」


 まぁ、歯止めが利かなくなったら、ホテル行こう。

 そうしよう。

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