第79話 妹属性の恐怖と後ろの開発具合ですが、なにか?
「凄かったね、小牧さん。
ちなみに姉ぇの学校、変人しかいない?」
否定できないのが悔しい。
さておき、内容としては、瓦割りだったり、武術の型を見せたりだが、一挙一動が気合の入ったモノだった。
一番すごかったのは、小牧さんの瓦、百枚割りだ。
「そうね……クラスでも手加減してたのがよく判ったわ……」
最初は彼女と瓦が現れた時に動揺が皆に走ったが、気合一閃、小指一本で叩き割ってしまった。
ついでに地面のアスファルトも凹んでいたから恐ろしい話だ。
実際大盛況みたいで、中心であった小牧さんは色んな人に挨拶を求められている。
「それは置いといて」
電話の後、演舞前に戻ってきた小牧さんは委員長妹といつもの野球部の彼を連れていた。
小牧さんは赤い顔をし、野球部の彼はいつも通り何も考えていないようで、委員長妹は複雑な顔をしていた。
この三人、幼馴染と聞いてるが、痴情のもつれではなさそうである。
とはいえ、面白そうな匂いがしたのだ。
「妹ちゃん、妹ちゃん。
何かあったの?」
「あ、初音さん、こんにちは」
野次馬精神丸出しで声を掛けてみると、一人で悩んでいた白い姿がピョコリと頭を下げてくれる。
百五十センチも無いロリに私より大きい巨乳、そして常人離れした白い髪・肌を携えたアルビノ――委員長妹だ。
いつもの長袖制服姿なのに目立ち、視線を集めている。
可愛い系だとこれを超えれる気がしないし、モデル系だと貧乳褐色のお嬢が居る。
第三極の美人系とは私のことで、世の中、勝負の土台選びと努力次第でなんとかなるし、素材も二人に負けないと自負しているのでママに感謝である。
実際、私たち姉妹の合計で向けられる視線は男性からなら委員長妹より多い。
戦いは数だよ。
……なんの話だっけ?
「……こっちの似た人は、妹さんかな?
体つきがちょっと初音さんより若いよね?」
「言い回しがなんか変だけど、正解よ」
「初音・燦です。
よろしくお願いします」
そんな感じでお互い挨拶を終えるが、妹の方が若いって発言、初めて聞いた気がする。
「えっと、ちょっと身内が……トラブル起こしまして」
「まーた委員長?」
「それはあるんですが、今回はあれですあれ」
っと、ずっとぶら下がっている幼女に指を向ける。
「私の……お母さんなんです、あれ」
「あ、成程、だから苗字に見覚えが」
言い淀みながら紹介してくれる。
それだけ何か恥じたことがあったのだろう。
「いたいけな少女に性教育してくれてしまいまして……。
その子が暴走しちゃったんです」
何処かで聞いたような話だ。
そんなことを考えていたら直観めいたモノが働き、
「学校のブースに居た、お嬢の妹さん?
リクちゃんだっけ?
確か委員長が好きだとか臆面もなく言ってたけど」
根拠は無い。
しかし、委員長妹はコクリと頭を縦に振った。
「丸く収まったのは良いんですが、その……そういった知識が無かった子だったんで、色々とあってですね?」
「あー、何となくわかったから大丈夫よ。
結局、リクちゃんに委員長が振り回されたのかな?」
「そんな感じです」
「私も、そこの妹に散々、性のことで振り回されたから、判る判る」
内心、ざまぁみろ委員長っと思いつつ、目線を燦ちゃんに。
美人だからと貰った焼き鳥を嬉しそうに食べており、クエッションマークを浮かべてくるのが腹立たしい。
とりあえず、一本を奪い取りながら、
「大抵、そう言うのに免疫無いのが触れるとろくなことにならないわよね……」
「あはは、そうですね……」
っと、何というか穏やかな会話である。
「で、その二人は?」
「ちょっと思うところあって二人にしてあげています。
私はリクちゃんにもちゃんと恋を叶えて欲しいので」
「……ブラコンだから、てっきりお兄さんを独占する!
って感じで修羅場するのかと」
「あはは。
私が一番なのは当然なので、それは無いですよ」
その言葉に私は焼き鳥の串をポロっと落としてしまう。
観ると、
「どうかしました?」
キョトンと開いた青紫色の眼で私を観てくる。
それはまるで光を飲み込むように見え、うっすらとした怖さを私に与えてくる。
……妹属性という奴は曲者しかいないのだろうか?
今度から気を付けよう……と心に留めつつ、
「いや委員長も大変だなぁって」
「そうですね。
まぁ、大抵は因果応報なんですけど」
今度は少女らしく頬を紅く膨らませる。
「そういえば、初音さん。
三塚って苗字を知ってますか?」
「何それ」
初耳だとばかしに瞬時の反応をしてしまう。
私の知り合いにも居ない苗字だ。
援助交際したオジサンたちの中にも居なかった筈だ。
「いえ、燦さんを観ていたら、良く知っている子に似てたんで。
変な事聞いてすみません」
「全然いいわよ。
というか、性的な事を教えてあげて委員長を困らせたいから仲良くしたいんだけど」
正直に言っておく。
委員長妹には嘘がバレるとクラス内でも有名だ。
しどー君のよく見ているや、日野弟君の洞察力とはまた別種で、鏡のように映してくる。
見通されているというか、何というか。
「あはは。
……結構、私、ディープですよ?」
「ほほう。
もしかしていける口?」
「実体験は無いですけどね」
ちょっと、ディープと聞いて興味が湧いてくる。
学校で猥談が出来る人と言うのは割とレアなのだ。
大抵は私が教える側だ。
「一つ試させてね?
下の口の付き方は上、下?」
「私は上ですね。
小さい体なんで、もしするなら上に乗りやすい下付きの方が良かったかもしれませんが」
戸惑い一つなく答えてくるので本物だと確信する。
逆に燦ちゃんが何の話? っと、疑問を浮かべてくる。
「あんたは下付よ。
後ろから犬みたいにズブリされるのが具合的に良いわよ」
「犬みたいに……えへへ……」
うちの妹も大概オカシイ。
「初音さんも苦労してるんですね」
「こんな妹だからね……さっき言った通り、私としどー君も振り回された訳よ」
「あはは。
でも、仲が良い姉妹みたいですね?」
「私がシスコンだからね。
こんな妹でも可愛いわけよ。
さっきも委員長とどっちの妹が可愛いか張り合ったし」
「成程。
やっぱり妹が可愛いですよね」
うんうんと、委員長妹が頷く。
話題の中、ちょっと入学時の挨拶を振り返り、
「確か、離れ離れに預けられてたんだっけ。
高校から兄妹に復帰したとか」
「……そんな感じです。
あっちは色々あったみたいで、根は純情で真面目なんです。
結構、自分で自分を縛ってるんで」
なんだろう、いつもクラス巻き込んでトンデモする委員長に当てはまらない評価だ。
今日だって、シスコンブースしてた。
百戦錬磨の私をして何か底にあるぐらいしか読めない訳だが、それでも意外だった。
「お風呂も寝るときも一緒なので判るんですが、何と言うか興奮はしてくれてるんです。
私に魅力を感じてくれているんです。
けれど、そこら辺にある家族と同じであろうとする余りに、一線は絶対に越えないんです。
私は性の対象として観てますし、覚悟もしてるんですけどね?」
「なるほど……?」
本格的に倒錯しているのは委員長では無く、青紫色の眼が赤色に変わっている目の前の少女な気がしてきた。
突っ込むと鬼か何かが出てくるような気がしてくるので方向転換する。
「うちのマジメガネと真反対ね。
いつも真面目だけど、根っこはハッチャケで、いきなり覚悟完了したり、想定外をしてくるから」
「そうなんですか」
「例えば、後ろも試したいって言ってきてね?
少しずつ慣らしてるのよ。
今、指三本」
「それは結構、倒錯してますね……。
実際どうです?」
興味津々と前のめりに聞いてくれるので楽しくなってくる。
「うーん、こればかりは私も気を使ってるからねぇ。
まだまだ準備段階で楽しむ余裕までは行ってないのよね。
結局あれって、出来てから楽しめるみたいね。
奥で楽しむ感じとか聞いてる」
「なるほどぉ……」
こればかりはムリをすると、裂けてしまい日常生活に支障をきたすので慎重さが必要なのだ。
「姉ぇ、後ろって?」
っと、純粋な目で燦ちゃんに聞かれる。
これ以上、自分の妹が倒錯されるのは危険だ。
だから、
「燦ちゃんは絶対しちゃいけないことよ。
勢い余って大変なことになるの目に見えてるんだから……。
しどー君にも止めとくから安心なさい」
っと答えておいた。
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