第83話 オジサンが叔父さんで、ママの素性が判ったり、なにか? とか言ってられない。

「お久しぶりです、オジサン……」


 しばらくの騒動の後、オジサンと対面。

 パパとオジサンが、拳でダブルノックアウトして各カップルごとに肩を支えられている。

 自分で起こしたとはいえ、なんだこの状況。


「やー、初音ちゃんじゃ。

 久しぶりじゃの。

 今日もワシが買ってあげたのを着てくれたのじゃな、嬉しいのぅ……」


 っと、懐かしい声で嬉しがってくれる。

 金髪や肌の色が前より生き生きしている気がするので、私が会わなかった間、何かあったのかもしれない。

 悪い気はしない。

 尚、しどー君が複雑な表情を浮かべているのであとでからかう。


「そっちは妹さんじゃな?

 似ておるな、君とも妻や……あと、雰囲気か何かがリクにも」


 どういう意味だろうと思いつつも、聞きたいことがある。


「……もしかして抜きとかしなかったのって、私を知ってたりとか?」

「そうじゃよ?

 最近まで妻と疎遠だったり、実権とられたりしてたから暇にかまけて若い子で遊んでたわけじゃが、何か見た覚えの子を見つけてのう、調べたんじゃ。

 結論、義弟の娘じゃと。

 それで衣装を着せて遊んだり、買い与えたりしていたわけじゃな?

 十分、楽しめたから、対価として十分じゃろな」


 援助交際というよりは、私とこの人に限っては叔父が甥っ子とかにお小遣いを与えるような関係な気がしてきた。

 つまりオジサンは真面目に叔父さんだったわけだ。

 何というか、世の中狭い。


「という訳じゃから、許せ。

 三塚の妹」

「……ならいいわ。

 善意じゃなかったら、流石に吊し上げるつもりだったわ。

 私が家に復帰する覚悟を決めてね?」


 っと、ママが今まで聞いたこと無いような真面目な口調になってる。


「三塚……?」


 あれ、最近聞いたような覚えがある。

 そうだ、委員長妹から聞いた苗字だ。


「ママの捨てた苗字よ。

 お姉ちゃんも捨てて今じゃ法隆寺だし?

 跡取りの無い寂しい家なのよ?」


 ママの旧姓を初めて聞いたような気がする。

 っとママがおどけた口調に戻りながら、ママ姉に向けば、


「鳳凰寺!」

「お姉ちゃんこまかーい」

「細かくないわ、全く……!

 結婚前から、いえ幼稚園の頃から彼の為に尽くすつもりだったわよ!

 結婚して十六年、ようやく旦那とイチャイチャ出来るようになって、本当にうれしいんだから!」

「ずっと鳳凰寺さんのストーカーしてたもんねー。

 でも政略結婚しても子供産んだだけの関係で、ひえひえー、やーいやーい。

 妹に愚痴ばかり零して!

 ラブラブマウントでグヌヌしてたのはどこのお姉ちゃんかなー?」

「くっ!

 今はちゃんと観て貰ってるわよ!

 今だって……」

「外でやると色々、たいへんよー?

 娘達にバレないようにいたしかたなくやってたけど」

「それより、いい加減、父様に会いに行きなさいよ!

 心配しすぎてこの前、あんたに会いたいって泣かれたわよ!

 本来あんたが跡目なんだから!」

「いや☆」


 やいのやいのと、ママとママ姉が言いあいを続けている。

 何というか、本気でやりあっていない感じがあり、仲のイイ姉妹なのだろうことは判るのだが、


「鳳凰寺……?」


 私は何だかこれもよく聞く苗字だと反芻していた。


「鳳凰寺・ソラ?」


 気づいたようにしどー君がお嬢の名前を出すと、ママ姉が顔をしかめた。

 そうか、この人達があのお嬢の両親……って、ヤの付く稼業の親玉では……。


「その名前は出さないであげて?

 そこの義妹の娘に援助交際させる腐れ外道が他の女を孕ませて作った血が繋がってない娘なのよー?」


 聞く限り外道の極みである。


「えっと、血の繋がっているのは……」

「リクよ。

 最近、反抗期で手を焼いてるけど、姉コンプレックスが治ったと思ったら……はぁ……」


 何と言うか、ママ姉は教育ママな感じで真面目っぽい感じだ。よく見れば目元の印象がママより鋭い。

 ママは基本ほんわか糸目だ。


「つまり、鳳凰寺家と初音家は」

「親戚なのよ?

 そしてママは名家の跡取り娘だったのだ!

 驚いたかー!」


 うん、驚いた。

 世間ずれしてる理由や料理出来ないのや、時おりやたら鋭いのもそれが理由なんだろう。


「……もしかしてパパがママのお父さんに会えないのって……」


 パパが目をそらす。

 名家の跡取りを中学生で孕ませたら、そうなる。


「好き同士だったけど、見合いして別れさせられるって言われてね?

 孕んでやって婿入りさせようと、計画して襲ったのよね。

 で孕んだら、パパの事殺そうとするから、絶縁してやったのよ!」

「うわ、逆レ……」


 現実はもっと酷かった。

 さておき、納得できたことがある。

 確かに、ママ姉はママに似ている。

 そして私たちも違う感じでママに似ており、彼女から観れば私達を観たことがあるとリクちゃんが思うのも道理が通る。

 ママとママ姉のじゃれあいがヒートアップしていくのを横目にみつつ納得する。


「……それとリクちゃんが燦ちゃんに似てるのもありそうね」

「ふえ?

 私、姉ぇより巨乳だけど金髪じゃないよ?」

「胸はデブなだけでしょ。

 今の話は内面よ、内面。

 姉へのコンプレックス持ち。

 姉と同じ人を好きになって、その人を自分のモノにしようとする泥棒犬な所。

 巨乳因子。

 多分、淫乱もじゃないかな……」


 今日、性暴走したとも聞いている。

 成る程、あとは、


「ママも妹属性なのよね……」

「私とママを生暖かい眼で見比べて……私はまともだよ?」

「寝言は寝てからね?」

「誠一さんのモノにして欲しいから、自分から孕みになんていかないよ?

 孕みたいけど、誠一さんからがいいなぁ……」

「既にマトモな奴が言う台詞じゃないのよね……。

 しどー君、この妹とやるときはちゃんとしてね?」

「初音を先には当然だしな」


 ……そういう台詞を両親の目の前で言えるしどー君もヤバイ奴よね♥️

 パパママが叔父さん達との会話に集中してて良かった。


「妹属性はヤバイ奴しかいない、これは結論かなあ……」


 今地点での妹属性コレクションは、ママ、燦ちゃん、リクちゃん、委員長妹だ。

 その内、三人が引く三塚という血筋が呪われてるだけかもしらんが私も呪われてる話に成りかねないから、否定したい。


「そういえば、しどー君も妹居たわよね」


 聞くと眼をそらすしどー君の反応は珍しい。

 ……会う時は覚悟しておこう、うん。


「さてさて、久しぶりの姉妹喧嘩も終わりにしとこか、お姉ちゃん。

 夜も遅いし」


 気づけば、バスも電車もない時間だ。


「そうね。

 泊まる?

 ソラは京都だし、リクも外泊だろうし……あああ、あの虫けらがああ!」

「落ち着け、落ち着け。

 そのお陰でワシとの関係が構築できたんじゃろ?」

「そうね……ポジティブポジティブ」

「お姉ちゃん、情緒不安定?

 とはいえ、うーん。

 明日も仕事お休みにしてるけどー」


 しどー君に眼がいくママ。

 確かに彼だけが現状、外様だ。

 とはいえ、ママとしては悩んでいるというか、面白い選択肢を選ぼうとしている気がする。


「そういえば、彼は何者?」

「娘二人をかどわかした士道・誠一君よ。

 三塚家、滅亡の鍵よ?

 他はまだ聞いてないので、ふめー。

 後日、改めて奪いに来るって家に殴り込んでくる予定」

「ふーん。

 まあ、私としてはあんたの娘のどっちかを三塚に戻して、婿入りが理想だけど。

 九条が復活してるから、バランス取りたい」


 しどー君を不審者を観る眼で観て、次に道具を観る眼で観るママ姉。

 何か言い返してやろうかと思うが、


「ほほう、二股とな。

 いいじゃないか!

 ワシも若い頃は女をヒイヒイいわせたものじゃ」


 と、叔父さんが面白げに反応してうやむやにしてくれる。


「お姉ちゃん。

 これ、六の家で査問にかけて?

 懲りてないわ、これ」

「無理よ。

 実権奪い返されて、今は夫の犬よ?

 それで幸せだもの」


 あ、この人もヤバイ奴だ。

 妹属性ではなく、血を呪う可能性が出てきてちょっと目眩がした。


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