第64話 遊びな妹ですが、どうしよう?
と言うわけで、金曜日の放課後になった。
結局集まったのは、男女三、三で六名だ。
「近日すぎてあんまり集まらなかったけど、今回の合コン(仮)に参加ありがとう!
私も初めて幹事なるものをやっとりますが、よろしく。
かんぺーい!」
っと、河原町の青い看板のカラオケ店。
クラスメイトがサイダーの入ったグラスを掲げると、皆も一斉に、
「「「「かんぺーい!」」」」
「か、かんぺーい」
とジュースの入ったグラスを鳴らせ始めるので、オズオズと合わせる。
私はダイエットのこともあり、水だ。
なお、現状はコの字型の狭い密室で、以下のように座っている。
男子1 私
=======
| 男子2
|
| いつものクラスメイト
=======
女子1 日野さん
「では、自己紹介してこうか!
日野君から!」
「トップを任された日野だ。
知らない人は居ないと思うがサッカー部の次のエース!
応援よろしく!
あと、今回は初音さんを遊びに連れ出そうという事で参加を決定しました」
あけすけも無く言い放つと、周りから拍手が起きる。
少しは遠慮して欲しいモノだが、そう公言できる胆力が羨ましくもある。
とはいえ、クラスメイトの誘導のまま、マイクがまわされていく。
「初音・
何というか、こういうのは初めてなんで。
ただ、校則は破らないようにしてください。
後、日野君のことは全く好きじゃ無いので、他の人が構ってあげてください」
「そんなー」
っと真向いの席の日野君が返してくれると、周りが笑いに包まれる。
「はいはい、そこ固定メンツで喋らない。
日野君は一旦、そっち側と喋ってねー。
初音さんも隣と」
で、私が言われた男子生徒を観ると、クラスで見たことがある人だ。
何から話そうかと最初は悩んだものだが、あっちもそんな感じだと気付き、
「……緊張してます?」
っと同意から始めてたら、コクリと頷いてくれた。
少し気が楽になった。
「この前、誘ってくれたの有難うございました」
礼から始めると、パッと嬉しそうに笑んでくれる。
そこからは普通の会話が出来た。
「何で誘ってくれたんですか?」
と聞くのを皮切りにすると、私に興味があることが判った。
昔見たいに言動が固くないし、奇麗になってきて、何というか凛々しくていいなと思ってくれたらしい。
そんな話がつっかえながら言ってくれたので、純朴な人で、悪い人では無さそうだ。
好意を向けられるというのは決して悪い事ではないと思えるし、男性に対しての認識が少しずつ
「日野さんとはどういう関係か?
弟さんがボランティア先に居て、その子と親しいんです。
日野さん自身とはほぼほぼ他人です」
聞かれたのでそう素直に答える私。
すると彼は安堵した様相をみせて、ため息が零れた。
これがモテるという感覚なのかと、人から好意を向けられるのがうれしくなっている。
思えば、誠一さんへと向けるばかりの私である。
「次、逆側~!」
反対側の男子生徒もクラスの人だ。
こちらは好意を私に向けているわけではなく、普通の会話が出来た。
言われた通り、他人の目線を決め付けて、怖がっていたのは私が作り出した虚像なのかもしれない。
「さて、歌ってこうか!
日野君、日野君、一番に歌ってよ」
「ぉ、良い所を見せるチャンスだな?」
そんな形で歌い始める日野君。
最近、よく聞く音楽で普通に上手だった。
私は私でよくある童謡の歌で、どうなのか、っと思ったが普通に拍手してくれた。
素直に楽しいと思えて、こういう遊びもあるんだなと初めて知り、姉ぇが友達とよく遊びに行っていた理由も良く判った気がした。
そんなこんなで、カラオケは無事に終わった。
そこで気が抜けていたのかもしれない。
トラブルはそこで起きた。
「なによー、ぶつかってきたくせにー」
褐色な厚化粧の肌、ラメの入ったネイルの指先、ギャルという奴だろう。
私達の一人、女生徒が男子生徒と会話に夢中になったせいか、私は見ていなかったがぶつかったらしい。
女子の胸元を握り掴んでいる。
気の強い感じがするのもあり、皆が少し尻込みしてしまっている。
「ちょっと、待ってください」
っと割り込み、手を離させる。
暴力沙汰はいけない、っと至極真っ当な正義感からだった。
「あ?
あんたかんけーな……って、あれ、はつねんじゃん」
ふと、言われなれていない単語だ。
初音でも初音さんでも、
勘違いかと思って相手を観れば、私に対して笑顔を向けてきている。
しかし、私には見覚えが無い。
「なに、狐につままれたような顔してんのよー。
一緒に色んな男を物色した仲じゃないー。
あんた、五月ごろから付き合い悪くて心配してたんよー?
悪い男につかまったのかとー」
間延びした声に聞き覚えがない、やはり知らない人だ。
『~♪ ~♪』
またも聞き覚えの無い音色。
「ちょい、はつねん、待っててなー。
って、はつねんから電話?
ん?」
っと怪訝そうな声をあげながら、電話に出る。
そして私を観、グルグルと周りを見渡す。
「あー、めんごめんごー。
人違いだはー。
あんたそっくしねー」
言われ思いつくのは姉のことで、
「ごめんねー。
そしたらはつねんに免じて許してあげるけどー。
気を付けなよー?
ここは人多いし、怖い人も、観光客も多いから」
っと、手を振って去っていく。
「ぇっと、というわけで気をつけて歩いてください」
「……あ、はい」
ぶつかった女子生徒は私を怖いモノを観るような目だ。
距離も遠く感じる。
いつもの風紀委員での活動している以上に遠い。
周りを観れば、皆が私を観る目と距離が遠い。
ポツンとした孤独を覚える。
先ほどまで皆で騒いでいたので一押しだ。
私ももし、知っている人があんな価値観が違う女性に友達扱いされたら、そりゃ恐怖するだろう、そう割り切ろうとすると、
「ぇっと、初音さん、今のはもしかしてお姉さんの友達か何か?」
日野君がオズオズと私に質問しながら、一歩踏み込んでくれた。
「みたいですね……。
私も知らない人でしたので」
「あ、なんだなんだ、そうだったのか」「いやー、マジメな初音さんがあんな人と付き合いがあるなんてと思っちゃったわ」「僕も」
答えると、周りの皆が安堵。
そして私に向けた恐怖を誤魔化すように口にしながら、私に話題を振ってくれた。
最後にはそれそのものが無かったようになり、解散となった。
「日野さん、ありがとうございます。
言ってくれなければ、誤解が生まれてしまったかもしれません」
帰り際にそう声を掛ける。
烏丸からの南北に行く地下鉄への入口だ。
「いや、俺や男子が本来は矢面に出るべきだった。
すまない」
「日野さんはサッカーもありますし、しょうがないですよ」
とはいえ、誠一さんならやはり私と同じ行動をしたと思う私は否定できない。
やはり誠一さんは皆と違うのだという思いが強くなる。
そして早く会いたいという気持ちが出てくる。
「帰る方向一緒だから、送るけど?」
「いえ、ちょっと姉と用事が有るので。
ここで失礼いたします」
そう言い、私は日野君が地下鉄に下っていくのを見送った。
そして、私はスマホを取り出して、
「その必要は無いぞ、燦」
振り向けばメガネ姿の誠一さんが居てくれたので嬉しくなって抱き着いてしまった。
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