変わる日常。

第113話 いつものファミレスですが、なにか?

「で、惚気に来たのー?」


 っと、いつも通りの四条河原町のイタリアンファミレス。

 ジト目で見てくるはいつものマリちん。


「そうよ?」

「うーん、焼かれたいのー?」


 っと、にこやかに顔を向けてくるが、眼が笑っていない。

 友達に幸せを報告しに来たのだから、幸せを分かち合って祝福して欲しいモノだ。

 焼くとか物騒なことは言わないで欲しい。

 えへへへ。


「親もOKなのねー……、はつねんの親も大概なのよー……。

 援助交際認めてる時点であれだけどねー……」


 そして呆れだ。

 まぁ、私も実のパパママが普通の人間だとは思っていない。

 というか、親戚筋ですら普通の人間が居ない気がする。

 コスプレ叔父さんといい、牝犬叔母さんといい……複雑な心境だ。

 リクちゃんとかも普通では無いし……私が一番普通なのは間違いない。

 さておき、


「とはいえ、マリも進展は有りましたともー」

「ほほん?」


 Vサインをしてくるので、なんだろうと聞きたくなる。


「仮で付き合うことになったのー」

「おめでとう……。

 だから、この子もいるのね?」


 っと、その隣に抱きつくので観る。

 日野弟君が顔を赤らめながらだが、満更ではなさそうに笑みを浮かべている。


「この前、プールで言われまして……真面目すぎたり潔癖すぎたりすると、視野を狭めると」


 その言葉はしどー君がアドバイスしたと聞いているが、改めて言われると彼氏の成長ぶりが見えて、ニヤニヤしてしまう。

 なんというか、デカイ男としてちゃんと成長できている気がする。

 下は元々大きいが。

 さておき、気になるのは腹黒幼女のことだ。 


「ノノちゃんは?」

「……も、仮で付き合います」


 退廃的である。

 よくもまあ、小学生がそんな決意をしたもんだ。


「結局、初姉はつねーさんへまだ未練が断ち切れないので……。

 それを断ち切る為の建設的な方向性として利用させて貰おうかと」


 凄く打算的だ。

 まぁ、それも有りで在ろう。

 一人の女に執着するのは兄の方だけで手一杯だ。


「あの子のどこにそんな魅力があるのか……。

 まだ、昔みたいに話せなくて悲しいとは言ってたけど」


 姉からの視点だとよく判らない。

 先日、姉妹レズプレイした時には確かに可愛いと感じたし、もっと攻め立てたいという情欲が沸く魅力があったのは確かだが。


「一生懸命なんですけど、眼を離せないのとかありますが、初姉はつねーさんといると何か癒されるじゃないですか?」

「あー、分かる気がする。

 このマリちんも、ノノちゃんにも無い感覚だわ」


 アニマルセラピーな感覚はある。

 犬っぽい所なんか特にそうだ。


「癒し系だよー?」


 と、日野弟君に再び抱きつくマリちん。

 嫌な顔一つせず、というか、アハハと空笑いしながら甘受する弟君は大物かもしれない。


「いやらしい系の間違いでしょ……」

「むー☆」


 頬を膨らませるところなんかは確かに癒し系かもしれない。

 猫科……豹っぽい感じがある。

 山姥にしてるので、その印象は半減だが。


「まあ……プレイボーイね、悪いことではないわよ。

 結局、好きだから付き合うなんてのは難しい話でね?

 お試し期間を作ってお互いを知るのはありよね」


 うちの妹としどー君みたいに、という言葉は飲み込んでおく。

 余り弟君を刺激したくないのだ。


「まあ、二股は難しいことは念頭にね?」

「はつねんの彼氏してるけどー?」

「彼氏というより、女性側同士の問題があんのよ」


 コーラを飲み干し、続ける。


「女なんか、自尊心と独占欲の塊なのは知っての通り。

 自分が一番だし、色々醜いでしょ……。

 パパ取り合い事件とかもあったじゃん?」

「あー……」


 弟君は何のことかキョトンとしているが、女性が刺された事件だ。

 太い顧客から乗り換えられた際、新しい女へ怨恨を募らせたらしい。

 生活かかる人もいたり、求められる自分に価値を見いだしたり、欲望が根幹な援助交際界隈である分、人間の本性が出やすい気がする。


「私達なんかは姉妹同士で、今はお互いに好きで、良好。

 それに序列は私が上だと決めてるし、争いの火種は潰してあるわけよ」

「なるほどのー」


 レズプレイするぐらい、仲を深めていることは言わない。

 少年の性癖をこれ以上歪めるのはマズいぐらいの良識はある。

 

「どこぞのハーレム容認国家みたいに、男が全部を賄うからこそということも無いとは思うのよね。

 結局は、三人でどう仲良く生きていくか、これに尽きると思うわ。

 その要はやっぱり女同士の仲よね?」

「はつねん、ちゃんと考えてるのー。

 そもそもがマリ的にも茉莉的には認めづらいけど……」

「まぁ、普通はそうよ」


 まぁ、私はこの件に関しては普通では無いと思っている。

 その自覚ぐらいはあるのだ。

 何故ならば、 


「私が幸せになるにはこれしかなかったからね?

 彼氏に捨てられる恐怖で打算的に決めた訳じゃないことは理解してね?

 友達に理解されない茨の道ぐらいは覚悟の上よ」


 結局は私の選択肢だ。

 しどー君に二股を認めなければ別れると言われてるとか、そんな話でもないのだ。


「弟君には難しかったかな?」


 っと、意地の悪い視線を向けて問う。

 当然、戸惑いを覚えて視線をうつむける訳でしてね、


「……流石に、ちょっとそこまでは割り切れないです……」


 素直なのはよろしい。


「今は深く考える必要は無いわ。

 選択肢の一つとして、ハーレムもあるけど、難しいぞと覚えてくれてたらいいわ。

 先達のアドバイスよ」

「はい、有難うございます」


 ペコリと意地悪な私にも礼をしてくれる。

 良い子だ。

 もし本当に私たちが二股しなければ、燦ちゃんを任せてるのは彼だったかもしれない。

 燦ちゃんには勿体ないぐらい良い子だ。

 兄とは大違いだ。

 とはいえ、結果は変わらない。


「で、マリちんはノノちゃんとどうなのよ?」

「……冷戦状態」


 前途多難そうではある。


「マリも彼女もねー、自分を選んで欲しいって気持ちが強いのよー。

 ノノちゃん自体は可愛いと思うけどね?」

「確かに」


 ノノちゃんは小二ながら、女の魅力が開花し始めている美少女だ。

 クルリとした眼や顔立ちから将来間違いなく私みたいな美人になることは確定だ。


「弟君は?」

「ノノ自体は可愛いと思いますけど、妹としてが強すぎるので……ちゃんと観てあげようかとは思っているんですが……」


 言い淀む。


「最近、コミュニケーションが激しくて……。

 胸揉んできたり、揉ませようとしてきたり……」

「……凄い小学生ね」


 私だって性への目覚めは中学生だ。


「異常なのは判ってるんですけど、そういった仕草も嫌えないので」


 乾いた笑みを浮かべる彼。

 普通と相反した状況に対して、どうしたら良いのか判らないのだろう。

 感情と理性のせめぎ合いという奴が見て取れる。

 小学生のする悩みではない気もするが、仕方ないね。


「マリさんに、くすぐられるのも嫌いじゃないですし」

「日野きゅん……♡」


 マリチンの眼にハートが浮かんだ気がする。

 案外、弟君はジゴロの才能があるかもしれんね?

 とはいえ、一つ気付いたので確認しておく。


「マリちん、マリちん、ちょっと耳かして?」

「ん?」

「弟君、性知識はあるの?」

「少しだけかなー。

 マリからはそこまで踏み込まないつもりだし。

 流石にね?」


 はぁ、っと私が一息零してしまう。


「とりあえず、弟君はノノちゃんをどうにかする必要がある気がするわよ?

 マリちんは何だかんだ、大人だし」

「それは大丈夫かなと。

 ちょっと有りまして、抑えてくれるようになったので。

 何か悩んでいるようですけど」

「なら大丈夫かな……」


 思春期という奴だろう。

 自分の性に悩むことをすっ飛ばすと、燦ちゃんになる。

 暴走するのは妹だけで良いのだ。


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