第7話 実家のパパママは変な親ですが、なにか……

「玉の輿、GO!」

「食費が減るわね、やったね、パパ」


 珍しく家庭に四人揃った我が家。

 パパもママも共働きで居ないことが多い。

 とりあえず、両親に許可を貰いに帰った時の話だ。

 こう言われたので両方とも蹴り飛ばしといた。


「娘が反抗期、う、うれしい!」

「パパ、マゾだもんね」

「娘の前でそういうこと言わないで、ママ」

「どうせばれてるし、いいのよ、パパ」


 どこから突っ込もうか。

 尻の穴から突っ込んでやってもいいかもしれない。

 さておき、


「いいのか、それであんたらは!」

「だって、今更じゃん、ねー、パパ」

「そうだね、ママ」


 いや、まぁ、自由奔放で良いんだけど……。

 私がビッチやってても、とやかく言ってこない親だ。

 何も言ってこないというか、自主性に任せているというか、どちらかは怪しいところではある。


「別に娘の人生は娘のだから、好きにしたらいいのよ」

「そうそう」


 まぁ、こう言ってくれるので一応後者らしい。


「姉ぇ、またふしだらな事してんの?」


 声を掛けてくるのは年子の妹だ。

 私と違い、マジメなので、マジメに学校に行ってマジメに生徒会なんぞやってるらしい。

 なお、私と似ていて素材は良いので、ちゃんとしてあげたらモテると思うんだけどなぁ。

 化粧気もなく、それどころかシャンプーも親のを使っている。

 もったいない。


「あんたも男を誑かすことの快感に目覚めたらわかるから、うん。

 それにちゃんと私はあんたの志望校には受かったでしょ!」

「なんで受かってるのか、我が家最大の謎なんだけど……。

 私落ちたし」


 妹は別の高校だ。

 一ランク下がる高校に通っている。


「十か月分の知能発育の差じゃないの?

 五月生まれと三月生まれの差って残酷よねー」

「なんで、後一ヵ月遅く生んでくれなかったの……」

「仕方ないじゃない、パパがすぐにでも欲しいって言ったんだもん!

 ねー、パパ」

「そうだよ、ママ」


 妹が頭を抱える。


「いやー、ダメもとで受けてみるもんだねー。

 補欠合格できちゃうんだから」

「日々、努力してるのがバカみたいになるから、その話はやめて」

「とはいえ、ちゃんと勉強はしたから、うん。

 私はやるときゃやる女なのよ」

「そりゃ観てたし、放課後も一緒に勉強もしてたから知ってるけど……。

 すっごい釈然としない」

「そりゃ、土日に教わってた人が良かったわけですしー」


 うん、半年はマジメにがっつりやった。

 土日は塾講師のおじさんに勉強教えてもらったりしたのだ。

 ビッチなのに健全な期間であった。

 やることはやったが、基本的に男というのは頼られることにも意味を見出すもんだ。

 ちゃんとおだててやれば有効に使えるのだ。

 というかね、私の私見だが、先生なんか目指していた人は自分が必要だとされる承認欲求が強い気がするのよね。

 さておき、


「箸もなんもかんも使いようってことよ」

「内容は聞かないでおくよ、姉ぇ……この前聞いて、頭おかしくなったから」

「少しは見識を広げた方がいいわよー」

「くっ!」


 妹を振り回すのは楽しい。

 とはいえ、仲は悪くない。

 高校の件で歪むかなと思ったが、自分の責任だと飲み込んでいる。

 真面目なのだ。この妹。

 どっかのマジメガネみたいに。

 あぁ、だから私マジメガネを弄るのが楽しいのかもしれないと、一人納得した。

 

「で、娘よ」

「ナニよ、パパ」

「学校は楽しいかい?

 パパ、高校行かなかったからなー」

「ママもよー」


 中卒カップルである。

 色々あったらしいが、今も幸せそうなので気にしたことはない。


「学校行くお金は別にどうとでもするけど、楽しくしてくれてないと意味ないからねぇ」

「学校ねぇ」


 授業はギリギリついていけている。

 クラスのカーストは順調だ。

 私みたいなビッチは勉強だけの他の生徒に比べたら人生経験が違う。


「変なのが居るけど、楽しい」


 これは間違いない。

 変なのとは、

 1、最近付き合いが多いマジメガネ。

 2、クラスで暴力漫才してる野球部とそのマネージャー。

 3、とんでも行動をする委員長とその妹とその彼女のお嬢様から成るトリオ。

 よくもこんだけ色物を詰め込んだものであるあのクラス。

 クラス担任はやる気が無くて放任主義だし。


「そりゃ良かった、パパもママも頑張ってるかいがあるってものさ。

 それを気負って無理して学校いくとかはしてくれなくていいし、

 別に退学とかいつでもしていい。

 いつも言っている通り、悔いなくやれよ、娘とだけだ」

「そうよそうよー。

 でも折角入ったんだから、いい男見つけなきゃねー。

 パパみたいに!」

「ママ……」

「二人で妙な空間作るのやめてよ!

 もう、姉ぇもトリガー引くのも!」

「私は何もしてないわよー」


 こんなのが私の狭い家で行われている会話だ。


「とりあえず、嫌になったら逃げるんだぞ?

 最悪逃げ場にはなれるからな!」

「格好いいわパパ!」


 まぁ、こう言ってくれるから本当に良い親なのかもしれない。

 他の家族は知らないが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る