新しい日常へと進みつつ。

第91話 姉妹が進めている感じですが、なにか?

「誠一さん、誠一さん。

 首輪とかどうですか?」


 とりあえず、前以上に倒錯した発言が妹から飛び出す。 

 ただ妹が初めてを経験してから、変わったことがある。

 燦ちゃんの暴走が緩和してきている感じだ。

 元々、減少傾向にあったわけだが、あの日を境に妄想はするし、言葉にはするけど、自分の性欲を満たそうとしている感じではない。

 あと、ちゃんと片付いてたので成長している。


「家の中だけにしとけよ?」

「はい、してみますね」


 と、こんな感じでしどー君を楽しませたり、新しいことを一緒に育もうとすることに生き甲斐を覚えているようだ。

 方向性はあれだが、悪いことかと言われると微妙なラインだ。


「マジメガネ依存症に仕立てあげてない?」


 私は姉として心配しながら、眼鏡しどー君に問い詰めるディナータイム。

 今日は野菜たっぷり餡掛けチャーハンだ。

 簡単で、なおかつバランスのとれた食事だ。


「僕としては初音依存性だから、初音がいなくなったらイヤだけど」

「……そりゃ、私も、当然に燦ちゃんもそうよ」


 相変わらずのマジメガネはさらっと恥ずかしいことを平気で言いよる。

 いい彼氏なのは確かだ。


「そういう話じゃなくて、誰かのためにと自分の思考を捨ててしまう状況……つまり、洗脳してないかってこと」

「してないぞ?

 委員長じゃあるまいし」

「いや、確かにあれはお嬢を苛めにおとしめる時、クラス全員に洗脳まがいをしたけど」


 さておき、


「燦ちゃん、しどー君に合わせるだけじゃダメよ?

 進路とか、色々、これから自分で自分のために決めていくことあるでしょ?」

「姉ぇ、大丈夫だよ。

 確かに進路は決めてないし、私は誠一さんのモノだし、喜ぶ姿が好き。

 でも誠一さんは、私の意思を尊重してくれるし、そういった素の私の方が好きですよね?」

「そうだな。

 あんまり気を使われ過ぎたり、ベッタリするような関係は確かに何か違う。

 僕が初音や燦に求めているのは、好きになったままの姿だし」


 確かにしどー君はそういう人だ。

 ならば、 


「……口うるさい姉になっているのは私の気が立っているかもしれないわね。

 少し嫉妬も覚えてたし、ごめん」

「入塾テストの結果待ちしてるのも知ってるし、別に平気だよ、姉ぇ。

 私が入学試験の後にしたことを思えば特に」


 そう私は燦ちゃん達のデートの翌日、つまり今日に受けた、しどー君たちの通う塾の結果待ちをしている。

 従姉妹の家に泊まって(本来は実家行く予定だった)、そのまま受けにいった形だ。

 妹は最近の試験で一つ上がったそうで、しどー君の居る最高位まで後二つと迫っているらしい。


「初音、こっちへ」


 と、手招きされるので、しどー君の側へ。

 すると彼は妹にするように頭を撫でてくれるので、


「……ありがとう。

 らしくなかったわ。

 いつもなら逆の立場で、気楽にと言ってるのに」

「いいさ。

 困ったり、気が落ち込んだら、支えあうべきだろうし」

「……だったら、ちょっと甘やかして?

 私がするように」

「判った」


 抱きつくと、抱き返してくれる。

 するとしどー君の温もりが私を落ち着けてくれて、隠れていた苛立ちを消してくれる。


「よし、ありがとう、しどー君」

「いいさ、初音のためだ」


 うん、しどー君が彼氏で良かった。


「そういえば、初体験どうだった?」


 離れ、自分の席に座りながら、話題を変えようと猥談へ。


「すごかった……よ?」


 なんか歯切れが悪い。

 失敗したのかと思い、しどー君に眼を向けると、


「燦、初めてで中イキしたぞ……」

「……燦ちゃん?」


 さすがにそこまでとは、姉妹とはいえ見ぬけなんだ。


「うう……ドスケベなビッチでした……」

「いやまあ、気持ち良かったならいいけど。

 優しくしてくれたんでしょ?」

「……」

「しどー君?」


 妹が答えづらそうにするので、浮気彼氏に詰め寄る。


「玄関で前技したり、初音にするように独占欲を満たすこと言わせたり、獣のように後ろから犯しただけだが?」

「……」


 んー、私が育てた結果がこれなので怒るに怒れない。

 私とする内容に比べれば確かに抑えているし……。


「私としては、えへへ……誠一さんのモノになれた感が覚えられてよかったよ?」

「なら、良いけど」


 妹が満足しているなら、よし。


「デートはどうだった?」

「えっと、先ず朝御飯がお粥屋で美味しかった」

「……?」


 いきなり普通じゃないデートコースを言われた気がする。

 確かにしどー君とのデートは朝御飯から始まることがままあるのだが、珈琲店が多い。特にイノダ。


「誠一さんが、私の食べてる姿が好きだって言ってくれてえへへ……それに、周りの人や店の雰囲気に気負いする私を慰めてくれたり……」

「粥……気負い……ゆで卵美味しい店?」

「そうだよ?」


 あ、判った。


「よく予約取れたわね?

 いきなり必殺技だすような感じのルートだけど」

「普通の朝御飯だぞ?」

「普通と言われてたまるかい。

 私だって叔父さんに連れていって貰ってなきゃ縁が無い店よ」


 相手が相手ならデートがプレッシャーに押し潰されるヤツだ。

 しかし、燦ちゃんは味を思いだしているのか、嬉しそうな顔をしている。

 ならいいわけで、


「その後、動物園行ったり」

「いきなり、王道ね」

「河原町のゲーセンでヌイグルミをとって貰ったり」

「あの燦ちゃんに似た犬のヤツ」

「えへへ……」


 犬と呼ばれて嬉しがってない? と言う突っ込みを飲み込んで促す。


「偶然出会った日野の弟君を振って」


 何してんだ、この妹。


「最後に京都タワースゴかった」

「京都……タワー……?」


 私はしどー君を信じられない目で観る。


「京都タワーって、京都駅前の赤いあれよね?

 灯台モチーフの」

「そうだよ?

 姉ぇ、スゴいね、モチーフ知ってたんだ」

「そりゃ、豆知識話せると援助交際はかどったからなんだけど」


 さておき、


「言ったら悪いけど、がっかり観光スポットのイメージが強いし、普通は行かないわよ……?

 あそこに行こうとか、言い始める男子はダサいと評判よ?

 タワーのキャラも間抜けだし……」

「ふふ、姉ぇ、甘いよ……」


 うっとりとした女の顔をして言ってくるので、イラッと来た。


「初音、今度行こうか。

 僕らしいスペシャリティの場所に成ったから。

 委員長が紹介した五老スカイタワーに負けないし、その評判との対比、皮肉が効いてて乙だしな」


 自信満々のしどー君に不安になる私が居る。朝御飯の件もしかり、普通がズレているしどー君だ。


「もし、がっかりさせたら……そうだなあ、メイドプレイ多いし、執事プレイしてみようか?

 お嬢様扱いだな?」

「方向性はともかくスゴい自信ね……」


 とはいえこの前、悔しいと言っていたしどー君だ、興味はある。

 執事姿の彼にも。

 とはいえ、相手に出させるだけなのは何かイヤだ。


「なら、勝負。

 私がスゴいと認めたら……メイドプレイはしたことあるから「姉ぇ?」」


 呆れながらの妹がジト眼で突っ込んでくるので、


「……そうね、ペットプレイ、首輪付きでご奉仕しようかな?」

「よし、決まりだな。

 ……初音はバニー着せて、燦は犬系で……」


 もう勝ったつもりとか倒錯してないかな、このマジメガネ。

 そう考えている私も、しどー君にどんなのを着せるか思い浮かべてはいたので五十歩百歩であった。

 なお、後日、敗けを認めた私はしどー君にペット姉妹なご奉仕プレイをすることになるが、それはまた別の機会に。

 マジメガネには勝てなかったよ……。

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