第148話 コミケ終幕ですが、なにか?

「モデルやりませんか?」

「やりません」


 コスプレ後半戦はこんな感じで終わった。

 さてさて、同人誌即売会の醍醐味である本を観なければ、何の意味があるのだろうかという話になり、再び会場へ。

 時間も二時をすぎ、会場も一部を除けば落ち着きを取り戻している。


「ホモ本観たい」


 と言い出したのは私だ。


「「え」」


 っと、二人に言われたが、強く要望した訳だ。

 何というかね、そういうの好きなのよね?

 腐っている訳では無く、男の友情って美しいからという話でね?

 さておき、


「ほほー」


 色んな有名どころなアニメや漫画だけかと思いきや、色々ある。

 リアル有名人のカップリングとかはどうかと思うが。


「初音……僕に向けられる周りの目線が怖い」

「まぁ、男性の多いエリアじゃないみたいだしね」

「いや、そうじゃなくて、×《かける》とかいわれてる」


 自分の彼氏を観ると、複雑な表情のマジメガネ。

 確かに、ネタにしやすそうな感じはある。

 うちの委員長とは私も考えたことがある。

 捻くれモノとキマジメガネの友情シチュ。


「うぇへへ」


 タギル。

 そんな私をジト目で見てくる二人。

 理解して欲しいとは言わないが、悲しい。

 さておき、


「買わなくても良いのか?」

「まぁ、本を買っても、観なくなっちゃうし」


 それに、私はこっそり確保してる一冊が既にある。

 学校の漫画研究会が、別サークル名義で出していた奴だ。

 美怜ちゃんから渡される予定のモノで中身は委員長×マジメガネ。

 ククク。

 後の楽しみで妹ちゃんやソラと一緒に見る予定である。


「姉ぇ?

 悪い笑顔してるよ?」

「ソンナコトナイヨー」


 極力誤魔化しながら、次の目的地へ。

 そして、色々回るうちに、一日目終了の合図が鳴る。

 一日だけの私たちにとっては、最初のコミケが終わったことになる。

 

「終わったぁ……」


 同時に疲労感が襲ってきている。

 何だかんだよく歩いた気がすると、スマホを観れば歩数が三万を超えている。

 この炎天下、よくもこんだけ歩けたモノである。


「着替えて来よ、姉ぇ」

「そうだね。

 しどー君、駅前で待ち合わせで良い?」

「あぁ、行ってこい」


 そして妹を伴い、着替え室へ。

 少し列が出来ていたが、すぐ入れる。


「姉ぇ、楽しかったね」

「そうね。

 何だかんだ、私たちの知らない世界だったし……。

 コスプレも何だかんだ好きみたいだし、私自身」


 撮られるという快感、コスプレに嵌る人たちが居るのも判る気がする。

 私自身、撮られることによって自尊心が高まっているのを感じていた。

 それにエスカレートする欲求にも答えてあげたくなる理由も何だかわかる気がする。

 人にそれだけ求められている事実は甘い果実で、脳裏を焼く。

 とはいえ、自制心が働く私は流石である、うん。


「燦ちゃんはどうだった?」

「なりたいものを見つけたよ」

「ほう?」


 観れば真剣な眼差し。

 決めた女の顔だ。

 私自身、鏡でよく見るが、似た顔つきの燦ちゃんからは珍しい。


「私、唯莉さんみたいになるんだ」

「……あの幼女もどき?」


 意外な所を目標にするものだ。

 燦ちゃん、結構、見た目から判断することが多かったので意外だ。

 しどー君と付き合う前は特にそうだ。

 しかしながら、確かにあの人はあの委員長や美怜ちゃんの親である。

 幼女姿とは思えぬホンモノの迫力がある。


「弟子入りかな。

 約束してくれたんだ、私は舞高に受かったらって」

「ほほー?

 何だかんだ、暴力好きな燦ちゃんにはお似合いかもね?

 昨日、助けられたってのもあるんでしょ?」

「うん。

 カッコよかった」


 コクリと頷く。


「それにあの人みたいに快活、女傑みたいな生き方、一人立ちした生き方は憧れるんだよ」

「ほー」


 何があったかは知らないが随分入れ込んだモノだ。

 悪いことにならないように私の方では注意しておくとしよう。

 とはいえ、しどー君も知っている人らしいので、大丈夫っぽいけど。


「……唯莉さんの話?」


 っと、声を掛けてくるのは従妹のソラだ。

 会場では見かけなかったが、彼女もコスプレをしていたらしい。

 隣で着替えていたことにようやく気付けた。

 お互いそれだけ、疲れていたらしい。


「初音さんに、燦さん、こんにちは」


 リクちゃんも一緒だ。


「……二人もコスプレしてたの?」

「えぇ。

 望君が望まれたので、美怜さんと交代してブースに居たんです」

「あー、スレ違ってるのかな。

 観てみたかった。

 褐色肌を活かしたコスプレとか、目立ちまくるだろうし」

「ははは……。

 ソラとしては葬りたい過去ですわ」


 乾いた笑いで返してくれる。

 何をしたんだ、このお嬢様は。


「リクちゃんは何をしたのかな?」


 こちらも天然金髪少女だ、栄えるだろう。


「魔法少女のをやりましたの。

 アニメの流行りの」

「それは凄く似合いそうね」

「これ写真ですの」


 と見せてくれるのは、日曜朝やっている魔法少女モノだ。

 やはり金髪が良く似合うし、大きくなり始めた胸の膨らみも含めて、滅茶苦茶可愛くて、


「ソラ、この子持ち帰っていい?」

「ウチに誘拐を仕掛ける気とか正気ですか?」


 冗談を言い合うことになる。

 少し残念であるが、舞鶴湾される気は無い。


「この後はどうするの?

 委員長とコスプレエッチ?

 私達はするつもりだけど」

「それは出来たらいいんですけどね?

 ……体力が持ちそうにありませんが、かなり消耗しましたし」

「確かに、私も実は疲れが出てて今日はムリっぽい」


 相変わらず据え膳らしい。

 あの委員長、童貞ではないことは雰囲気で分かっているのだが、何をためらっているのだろうか。

 白い妹、褐色金髪お嬢、金髪少女、より取り見取りだ。

 女性関係でやらかして、ホントにホモになった疑惑がある。

 あれの男関係を鑑みれば、ウチのマジメガネ、野球部のあれ、体育会系と文科オタク系とこちらもより取り見取りじゃないか!

 しどー君とは最近仲いいみたいだし、注意しておこう。

 好きと性欲が別の奴は稀にいる。


「ちゃんと、委員長捕まえといてね?

 ソラ、リクちゃん」

「「?」」


 美少女従妹姉妹に言っておく。

 男に彼氏NTRされるとか洒落にもならない。

 ビッチとしては末代までの恥になってしまう。


「後の予定は、打ち上げと聞いております。

 中華街で。

 多分、マジメガネさんも呼ばれてますから、一緒になるかと」

「ほほー、それは楽しみね」


 そんな感じでコミケ日和は終わったのであった。

 なんだかんだ得たモノが多く、実りのあるイベントであった。

 







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