第7話

「ギャァァァァ!」


 絶叫をあげて側近貴族の一人が倒れる。

 痛みにのたうち回り四肢を動かす姿が面白いのか、フィオナ嬢が眼にも止まらぬ速さでパンチを連打する。

 その度に会場に絶叫がこだまし、血飛沫をあげながら側近貴族がのたうち回る。

 地獄絵図である。


「「「「「ヒィィィィ!」」」」」

「たすけてぇぇぇぇ!」

「ギャァァァァ!」

「どけこの野郎!」


 会場中に悲鳴と怒声が響き渡る。

 皆がパニックとなり、硬直していた身体が動きだした者から我先に逃げ出し、出入り口に殺到した。

 弱い者が殴られ跳ね飛ばされ、強い者が先に逃げようと争う。

 

 いつの間にか、フィオナ嬢がパンチしていた側近貴族が動かなくなっていた。

 頭が無残に粉砕され、床に脳漿が撒き散らされていた。

 動かなくなった側近貴族の興味をなくしたのだろう、フィオナ嬢はキョロキョロと周りの様子を見た。


 幸か不幸か、いや、不幸以外の何物でもない自業自得なのだが、金ぴかの派手な衣装を着た貴族がフィオナ嬢の目に入った。

 ようやく出入り口までたどり着いた金ぴか宮廷貴族だったが、出入り口まで一気に跳ね飛んできたフィオナ嬢に逃げ道を防がれてしまった。


「ヒィィィィ!」


 いきなり眼の前にフィオナ嬢が現れた金ぴか貴族は、悲鳴をあげて背中を見せて逃げ出した。

 その動きが金ぴか貴族の衣装にシャンデリアの光を反射してしまった。

 キラキラと光り輝く衣装、しかもその姿で無様に四肢を動かすから、非常に目を引く事になってしまった。


 またしても目にも止まらぬ早さで移動したフィオナ嬢は、特に目を引いた両腕にパンチを繰り出した。

 結果は王太子の時と同じだった。

 両前腕が二つに引き裂かれ、右手はプラプラと皮でつながっている状態だった。

 左手首は、遠くの床に転がっていた。


 両腕の動きが緩慢になり、興味をなくしたフィオナ嬢は、今度は激しく動く両足に興味を持った。

 よく動く両足首辺りに視線が釘付けになっていたフィオナ嬢が、興味のままにパンチを繰り出し、両足首を引き千切ったかとおもうと、今度は両ふくらはぎにパンチを繰り出し、徐々にそこの肉を引き裂きえぐり取っていった。


 ようやく狼狽から立ち直った近衛騎士が、自分達が追い込まれている状況に思い至った。

 いくら王太子の命令だったとはいえ、明らかな失態で王太子を傷つけられ、その愛妾を殺されてしまった。

 愛妾の実家は恐ろしいほどの権力を持っている。

 せめてフィオナ嬢を捕えなければ、間違いなく死罪をとなる。

 そう考えた近衛騎士達がフィオナ嬢に殺到した。

 

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