第51話

「まあ、まあ、まあ、まあ。

 そんなたくさんのお嫁さんをもらうの?

 レオはとてももてるのね」


「わん、わんわんわん!」


 レオは八頭ものお嫁さんを選んでいた。

 自分とは違う色々な犬種の奥さんだった。

 生れてくる子供はミックスと呼ばれる子になる。

 

「レオは、私やベンに気を使ってくれているの?

 人族の私と、虎獣人族のアレサンドの間に生まれたベンのために、ミックスの子供が生まれるように気を使ってくれたの?」


「わん、わんわんわん!」


 カチュアの想像していた通りだった。

 レオはカチュアとベンのために、ミックスの子供が生まれるように考えた。

 だが条件だけで選んだわけではなかった。

 自分が気に入った雌を選んでいた。

 雌の方には何の異論もない。

 そもそも雌は、レオの圧倒的な強さに無条件に強く惹かれていたのだ。


「おぎゃあ、オンギャア、おぎゃあ、オンギャア」


「カチュア様、元気な男の子ですよ。

 さあ、お乳をあげてください」


「ええ、ありがとう、マリアム」


 カチュアとアレサンドとの間に二人目の子供が生まれた。

 また男の子だった。

 カチュアにはどちらでもよかったのだが、アレサンドは心からよろこんでいた。

 だが問題はアレサンドの心だった。

 子供を生んだカチュアが普通の状態に戻ったとたん、今まで後継者作りに励んでいたアレサンドの態度が一変した。


 新たに側室愛妾に迎えた女達を放り出し、政務以外の時間をカチュアべったりに過ごす状態に戻ってしまった。

 だがカチュアは次男のリドル皇子に夢中だった。

 当然アレサンドの誘いなど、けんもほろろにはねつける。

 せめてもう少しだけ我慢して、カチュアの体調が回復するのを待ってから誘えばいいものを、つがいのフェロモンが戻ったカチュアに夢中で、遮二無二に誘うのだ。


 だからこそ、カチュアに拒否されたアレサンドの姿はとても滑稽で、普段の厳格で雄々しい姿とは全く違った。

 ただ普段が立派なので、アレサンドが蔑まれるとか馬鹿にされるとかはなく、少し笑われる程度ですんでいた。

 それが余計に侍女をはじめとした女官達に愛される事につながった。


 だが問題は側室愛妾達だった。

 これでは全く子供を生ませるだけの道具だった。

 最初から分かっていたことだし、覚悟していた事ではあったのだが、それでもやはり女なので、愛されたいと思うようになっていた。

 そのため、最初は何があってもカチュア恨まないと思っていたのに、どうしても嫉妬してしまったのだ。

 

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