第50話
「レオ、いつもありがとうね。
おかげでベンが伸び伸びとしています。
他の子達も心を開いてくれました。
全部レオの力よ。
本当にありがとう」
「わん!」
カチュアは本当にうれしそうだった。
レオも誇らしそうだった。
何がどう作用したのか分からないが、レオは魔力で身体強化されていた。
魔獣を斃したわけではないので、神々から加護を受けたのだろうが、なぜどの神から加護が授けられたのかは分からなかった。
だがそんな事は些細な事だった。
ベンを安心して預けることができる、それで十分だった。
虎獣人族の侍女達、特にマリアムはとても親切で愛情も示してくれる。
アレサンドの側室に選ばれたアンネもよくしてくれる。
でも、それでも、不幸な生い立ちのカチュアが最も信じられるのは、彼らでもアレサンドでもなく、レオだった。
「ねえ、レオ。
レオもお嫁さんが欲しくはない?
お嫁さんが欲しいなら探してあげるわよ」
「わん、わんわんわん!」
「そう、分かったわ。
お嫁さんを探してあげるわね。
どんな子がいいかしら?
この手の話はマリアムに教えてもらわないといけないわね」
カチュアは本気だった。
本気でレオのお嫁さん探しをした。
レオの事を想って探そうとしたのは間違いない。
レオが一頭なのが寂しいのではないかと、思いやっての事なのが一番だ。
だが、打算が全くなかったわけではない。
カチュアの中にも、思いというか欲というか願いというか、こうなればいいなという計算が少しはあった。
それは次に生まれてくる子を護ってくれる、レオのような賢い守護犬の存在だ。
人族と虎獣人族の混血であるカチュアの子には、本当に心から忠誠を尽くしてくれる、側近が得られるかどうか疑問だった。
新たに探し出した、同じ混血児の子供達はいる。
だが彼らはアレサンランド皇国での基盤が全くない。
ベンを護るというよりは、ベンやカチュアが護ってあげなければいけない存在だ。
それに、同じ混血児だからといって、心から仕えてくれるとは限らない。
そんな心配があるからこそ、カチュアはレオのような存在を渇望していた。
レオのお嫁さん探しは、アレサンランド皇国の皇妃陛下、セントウィン大王国の大王妃殿下、サヴィル王国の女王陛下として命令が下された。
カチュアが初めて権力を使って行ったのが、レオのお嫁さん探しだった。
虎獣人族の多くが複雑な心境だった。
これが皇帝陛下のつがいが行う悪政の始まりだと警戒すべきなのか、それとも児戯のようなお遊びで、目くじら立てるほどの事もないのか、迷っていた。
カチュアも自分が警戒されるかもしれない事は分かっていた。
だから今までは極力目立たないように、何もしないようにしていた。
だが今回だけは動かなければいけないと決断した。
レオが神の加護を受けて身体強化されているのを知ったことが、その思いを強くしていた。
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