第49話
「ガゥオオオオオオオ」
「ギャハアハハハ」
「ワオアオオオオオ」
「キャハアハハハアハ」
後宮に笑いが満ち溢れていた。
カチュアはもちろんマリアムとアンネも、慈愛に満ちた微笑を浮かべている。
ベン王子を中心に、幼い虎獣人族と人族の混血児が、レオに遊んでもらって幸せそうに笑っている。
だが最初はそうではなかった。
多くの混血児が怯え警戒し攻撃的だった。
多くの混血児が、不幸な状態で生きていた。
普通は虎獣人族と人族の混血児が生まれる事はない。
虎獣人族は純血にこだわるものが多いし、女性の虎獣人族が人族の男性を恋する事などないからだ。
それなのに混血児が生まれるという事は、虎獣人族の女性が抵抗出来ない状況で、無理矢理人族の男に犯される場合が一つ。
もう一つの状況は、盛りの時期に虎獣人族の男性が、嗜虐心から人族の女性を嬲り子供を孕ませた場合だ。
カチュアとアレサンドのように、愛し愛されて子供が授かるケースは、つがいが見つかるより珍しい。
当然生まれた子供は父親にも母親にも愛されないケースがほとんどだ。
だから、密かに闇から闇に葬られる事の方が多い。
ここにいる混血児達は、珍しく父親か母親から愛されたケース。
愛されてはいないが、子供を殺す決断を母親が取れず、育てられたケース。
愛されずに殺されはしなかったが、捨てられたケース。
両親のどちらかが、奴隷のように使役しようと飼っていたケースだ。
だから、最初は心を開いてくれなかったが、美味しく温かな食事が十分与えられ、凍える事も夜露に濡れる事もなく、誰も自分を虐待しない事が分かると、徐々に心を開くようになっていた。
特の大きかったのは、同じ混血児の存在だった。
多くの場合が、男性虎獣人族が女性人族を犯して混血児が生まれるケースだ。
だから子供は一人で、同じ混血児にあったことがなかった。
虎獣人族は孤独が好きだが、人族は群れを作る習性があった。
その人族の本能が、生れて初めて見る完全な同族に会って刺激された。
絶対的な強さを秘めているベン皇子に従えと本能がささやく。
だが五歳前後の年長の混血児には、ベン皇子に従わず支配しようとする者もいた。
だがそれも、後宮の戦闘侍女の指導を受けて大人しくなった。
なにより、いつの間にか絶大な強さを得ていたレオが、常にベン皇子の側を離れず、オイタをしそうな混血児の頭を叩いていた。
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