第6話

 ダッーン!


 屋敷の門が破壊されました!

 それ以外考えられない破壊音です。

 兄上が迎撃してくださって、護りきれないなんて!

 信じられないです。


 ギャァァァァ!


「お逃げください、お嬢様!

 刺客が多すぎます。

 これ以上は持ちません!」


 信じられません。

 いえ、信じたくありません。

 王都の屋敷には五十人の家臣がいるのです。

 それが全く役に立たないなんて、誰が信じるのです。


 ギャァァァァ!


「私はこの国の王太子ジャスパーだ!

 これ以上は進めんぞ!

 私に剣を向けると言う事は、王家王国に剣を向けると言う事だ。

 今引けば見逃してやる。

 だがこれ以上やるなら、一族一門皆殺しにするぞ!」


 王太子殿下です!

 ジャスパー王太子殿下が助けに来てくださいました!

 兄上を友と呼んでくださっているとはいえ、一国の王太子が、死を賭して助けに来てくださいました。

 ありがたい事です!


 王太子殿下の情けに逆らって、刺客は殿下を襲いました。

 しかしそれは、殿下の率いられた近衛騎士団が殲滅しました。

 兄上は殿下に助けられた後で、単騎でコータウン伯爵邸とターナー子爵邸に乗り込まれ、当主と一族一門を皆殺しにしてしまわれました。


 普通なら問題になりますし、正邪を厳しく調べられるのですが、日頃の来ないと前後の関係で、兄上が正しくコータウン伯爵とターナー子爵が悪と断じられました。

 刺客がジャスパー王太子殿下を襲った事も大きかったです。

 殿下の強い推薦で、兄上が一代辺境伯に任命され、コータウン伯爵領とターナー子爵領が領地に加えられ、国境線の防衛に着くことになりました。


 普通なら元々の領地を併せても伯爵相当なのですが、大金鉱山を領有する事で、辺境伯相当となりました。

 しかし反対も多かったのです。

 コータウン伯爵領と大金鉱山は王家が接収し、兄上にはターナー子爵領の加増で十分だと言う意見が多かったですし、私もそれが普通だと思います。


 しかし王太子殿下が強硬に自説を通されました。

 お陰で私は子爵令嬢ではなく、辺境伯令妹となれました。

 そんな私に、殿下はプロポーズをされたのです。

 青天の霹靂で、何も考えられなくなりました。


「ジュリア嬢。

 ずっと君の事を愛していた。

 片想いしていた。

 だがどれほど想っていても、身分差を覆す事はできなかった。

 持参金と台所領がなければ、王妃にはなれない。

 だから私も諦めていた。

 だが今なら、大金鉱山がサヴィル辺境伯家のモノになった今なら、ジュリア嬢を私の正室に迎える事ができる」


 全ては殿下の策略だったようです。

 

 

 

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