夫に売られた伯爵夫人は復讐鬼となる。

第1話オリビア視点

「止めてください!

 これ以上近づいたら、タダではすませませんよ!」


「くっくつくっ。

 女の細腕で何ができるというのだ。

 男六人から逃げられると思っているのか?」


「死にます。

 恥をかくくらいなら、自害します」


「くっくつくっ。

 私が何も調べていないとでも思っているのか?

 オリビアの信じる神は自殺を禁じているのであろう?

 諦めてオリビアも楽しむのだな」


「だったら訴えます!

 夫に真実を話します。

 恥を忍んで国王陛下に訴えます。

 貴男たちにも、それ相応の罰を受けてもらいます!

 その覚悟があるのですか!?」


「アッハッハッハ!

 夫に知らせるだと?

 何の冗談だ?

 オリビアを私に売ったのは夫のオリバーだぞ?

 女遊びのために借りた金が返せなくて、私にお前を売ったんだよ。

 そんなオリバーが、陛下に訴えるのを許すはずがないだろうが!」


「嘘です!

 そんな話は嘘です!」


「嘘など話しても何の得にもならんわ。

 この契約書を見るがいい」


 私はロッキンガム侯爵に投げつけられた契約書をむさぼるように読んだ。

 ロッキンガム侯爵の話は本当だった。

 契約書は私を性奴隷に提供する代償に、夫の借金を相殺すると書かれていました。

 私の心は砕け散りました。


 私はロッキンガム侯爵に一晩中嬲り者にされました。

 必死で抗いました。

 身体中傷だらけになっても抗いました。

 ですが男の力には勝てませんでした。

 穢される前に死ぬことができたら、誇りを護ることができたでしょう。

 ですが神様の教えで、自殺する事もできません。

 私は身体中を穢されてしまいました。

 夫にさえ許さなかった所まで、穢されてしまいました。

 裂傷で血塗れになってしまいました。


 ロッキンガム侯爵が満足したら、次は侯爵の取り巻きの一人、伯爵のフレディ卿が私を襲いました。

 今度も必死で抗いました。

 身体中傷だらけになっても抗いました。

 結局、男の力には勝てませんでした。

 神に助けを求めて祈り続けましたが、何の救いも与えられませんでした。

 狂気に堕ちることができたら、まだ救いもあったでしょう。

 神は私に狂気さえ与えてくださらなかった!


 私はロッキンガム侯爵の取り巻きたちに嬲られ続けました。

 子爵のハリーとノア。

 男爵のジャックとレオ。

 全員私を貶める事を目的に嬲り続けました。

 私は、神を捨てました。

 神は善良な人間を救ってくれません。

 神は悪党がのさばるための道具でしかないのです!

 私は全ての存在に願い祈りました。

 復讐する力を与えてくださいと。

 力を与えてくださるのなら、何でもやると。

 ですが、何者も現れず、力も与えられませんでした。

 私は死を選ぶことにしました。

 このままでは、侯爵が接待相手に私を与えると耳にしたからです。

 神を捨てた私に自殺を止めるモノなどありませんでした。

 こんな事なら、侯爵に汚される前に自殺すればよかった……

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る