第16話

「今日も思いっきり飲み食いしてくれ。

 ただし、自分の酒量に応じてだぞ。

 明日の集合時間に万全で来れないモノは、狩りにつれていかないし、罰金も徴収するからそのつもりでいろよ」


「「「「「おう!」」」」」


 私たちも日に日に冒険者らしくなってきました。

 私自身も団長らしくふるまえるようになってきました。

 内心は違いますが、少なくとも表面上はふるまえています。

 団員一人一人の性格と能力も分かってきました。

 それによる役割も決まりました。


 こうして飲み食いする時が一番危険です。

 スキができやすいです。

 私を女としてみているような男性団員を、近づけるわけにはいきません。

 今の私は、以前の私とは違うのです。

 分家して婿を迎える立場ではなく、団長として団員の生命を護る立場なのです。


 問題なのは、私が集めた男性団員は、婿候補だったという事です。

 彼らの中では、私は女だったのです。

 共に命からがらこの国まで逃げてきたとはいえ、早々気持ちは切り替えられないようで、今でも婿の座に収まろうと考えているる者がいるのです。

 だから、基本私の側は元戦闘侍女の女冒険者が占めています。

 私の横はアンゲリカの指定席です。

 唯一近づけるのは、大盾役のレオナルドくらいでしょう。


「レオナルド!

 お前ばっか狡いぞ!

 俺も団長と飲みたいんだよ!」


「そうか、だったらもっと行儀よくするんだな。

 団長は俺たちの柱石だ。

 軽々しく接していい方じゃない。

 団長に酒場の女のように接する者がいるから、盾役の俺がここにいなきゃならん。

 分かったらさっさと席に戻れ」


「なんだとこの野郎!

 ちょっと団長に可愛がられているからって調子に乗るなよ!」


  ジューリオが荒れていますね。

 みなの成長についていけないのが苦しいのかもしれません。

 適材適所で役割分担すればいいことなのですが、虚栄心が強いジューリオには、格下とみなされるパーティーへの配置換えが耐えられないのでしょう。

 ですが、みなのレベルについていけない者を同行させると、最悪パーティーの全滅につながることもあります。


 それに、格下とはいっても、この国に来てから新たに参加している者たちのパーティーに配置転換するわけではありません。

 一緒にこの国に逃げてきた者たちで編成されたセカンドパーティーです。

 それすら受け入れられないというのなら、厳正な対処が必要になってしまいます。


 ここでジューリオの好き勝手にさせると、団の統制がとれなくなってしまいます。

 だからといって中途半端な処分をしてしまうと、我々を裏切ってヘプバーン王国に情報を流す可能性があります。

 ヘプバーン王国にも面子がありますから、刺客を送ってくるでしょう。

 いっそ、ジューリオを殺してしまいましょうか?

 

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