第23話王太子ジルベスタ視点
「さて、ほぼ意見も出し尽くしたと思うが、これまでの話で彼らの扱いは二つに大別できると思う。
一つはジルベスタの提唱する王族に迎えて表で利用する方法。
一つはランハルトの提唱するダンジョン奴隷として裏で利用する方法。
細かな待遇まで、皆の意見を一致させる必要はない。
だがこの大別だけは今決めておきたい。
王族はそれぞれの役目に忙しい。
国境の警備防衛や魔境の監視、魔境やダンジョンでの狩りを考えれば、何度も王宮に全員を集めるのは難しい。
これまでの話をよく検討したうえで、最終投票に入る」
「お待ちください父上。
投票の前に、彼女達と一緒にダンジョンに潜った者たちの意見を聞いてください。
ともにダンジョンに潜った者たちこそ、彼女らの本性をよく知っています。
その話を聞いてください」
「ほう、今からもう一度話を聞けと言うのか?
ダンジョンから戻った直後に、詳細な意見を提出してもらっている。
時間が経ってから考えが変わったというのか?」
ランハルト、愚かな奴だ。
自分の事を賢いと思っている常人ほど、始末に悪い者はいない。
並の能力しかなく、先を見通す力もないのに、賢者の意見をバカにして、凡百の考えの一つでしかない自分の考えを、至高の考えだと思い込む。
最悪なのは、己の無能狭量を理解できず、国のためだと間違った大義を振りかざし、先の見えている賢者忠臣を排斥する。
いや、陥れさえするのだ。
今日のように。
「それは……そう、熟考したのでしょう。
彼らも国を憂う王族ですから、常に己を顧みているのです。
だから今回も考えを変えたのです」
わずかに眼が泳いだ人間が三人ですか。
ランハルトの愚行と、国王陛下の誘いに気がついたのですね。
問題はランハルトの陰謀を知っていて表情一つ動かさないモノです。
今回の、私を追い落とす陰謀に加わっていた者の中で、最も胆力のある者を潰しておきたいのですが。
後は国王陛下の描かれた謀略通りに進みました。
ランハルトから賄賂をもらって意見をひるがえした者の発言から始まり、国王陛下の命でスパイとなっていた者の発言で、賄賂を贈って神聖な王族会議を貶めたランハルトと、賄賂を受け取って神聖な王族会議を貶めた者たちが逮捕監禁される。
続いてランハルトを擁立して私を陥れ、王家の実権を手に入れようとした者たちも逮捕監禁される。
これから寿命が尽きるまで、魔力を供給するモノ扱いとなります。
「さて、王家を混乱される謀叛人どもの始末はこれで終わった。
何か意見のある者はいるか?
なければジルベスタの提案通りに、彼女たちを王族に迎える事とする。
いいな!」
国王陛下の怒りが伝わったのだろう。
誰一人反対するモノはいなくなった。
愚かな連中だ。
王太子の俺が親子の情を一切見せず、唯々諾々と従っている理由くらい理解しろ!
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